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『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開

ファミ通.com 8月17日(水)23時2分配信

文・取材:編集部 杉原貴宏、撮影:カメラマン 小森大輔

●唯一無二の『NieR』音楽の秘密に(それなりに)迫る!
 スクウェア・エニックスから2017年初頭に発売予定のプレイステーション4用ソフト『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。その音楽制作を担当するのは、前作に引き続き、岡部啓一氏率いるMONACA。今回は、そのMONACA(モナカ)のスタジオに潜入。『NieR:Automata』の音楽が生み出された現場を公開するとともに、楽曲制作を担当した岡部啓一氏と帆足圭吾氏、そして齊藤陽介プロデューサーへのインタビューをお届けしよう。

【MONACAとは】
ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に所属していた岡部啓一氏によって、2004年に設立された音楽制作を行うクリエイティブスタジオ。テレビゲームだけではなく、テレビアニメ(『アイドルマスター』、『アイカツ!』、『Wake Up, Girls!』)やテレビドラマ(『真夜中のパン屋さん』ほか)などのBGMを手掛けている。




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■MONACAスタジオで生み出される『NieR:Automata』の音楽
 『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の楽曲は、いまや主流になったDTM(デスクトップミュージックの略。PCで音楽を作成すること)で作られている。
 
 DTMでは、PCにインストールされたソフトを使って、ギターやマイクやキーボードなど外部ハードウェア機器で演奏した音のレコーディングやミックスダウン、マスタリング作業など、音楽制作のほぼすべてを行うことができる。

 MONACAでは、ストリングスなど一部の演奏の収録、ミックスダウンなど専門のエンジニアが必要とされる工程以外は、ほぼ社内のスタジオで制作を行っているという。

■作曲の手法

岡部 「(メロディーなどが)降りてくる」という作家さんはいっぱいいますが、私はぜんぜん降りてこないですね(笑)。

齊藤 降りてこないんですか?

岡部 降りてこないですねぇ。

齊藤 どちらかというと岡部さんが降りる派で、帆足くんのほうがスコアを書いては消し書いては消しというイメージだった。

帆足 全体像がいきなり降りてくることはありますね。

岡部 私は、メロディがというより、こういう組み合わせをしたらおもしろくなるかなというのはありますね。あとは音場感というか……。たとえば、すごく閉鎖的なところから開放的なところに出たときの気持ちが動く感じのイメージが、日常でパッと浮かぶことはありますね。ですので、それ以外のメロディの作成などは、基本的に鍵盤を使い、鼻歌を歌いながらトライアンドエラーをして詰めていくタイプですね。


●岡部啓一氏と帆足圭吾氏、齊藤陽介プロデューサーにインタビュー
 ここからは、岡部啓一氏と帆足圭吾氏、そして齊藤陽介プロデューサーへのインタビューをお届け。

――4月にお話をうかがったときは、楽曲作りの真っ最中だったと思うのですが、現在の制作状況はいかがですか?

岡部 曲作りはほぼ終わって、これから収録という感じで、あとはイベントシーンなどに合わせて、調整をしたりといったところでしょうか。音楽として聴く分には問題ないんだけれど、想定したイベントシーンにハマるかどうかというのは、実際にゲームに入れてみないとわからないところがありますので。

齊藤 どのタイミングで曲を鳴らすとか、このタイミングから楽器を増やそう、ここで声が入るようにしようなど、ゲームに入れてみてから、いろいろと調整が必要な部分があるんです。

岡部 そういった調整はこれからしばらくかかるかな、といったところです。

――そういった作業に移ったということは、楽曲の作り手としては、ひとヤマ超えたという感じですか?

岡部 そうですね。作曲作業はほとんど終えたことになるので、プレッシャーからは開放されたというか。あとはブラッシュアップしたり、演出としていろいろ調整していく段階になるわけですから。

斎藤 ドイツ(※ドイツ・ケルンで行われる、欧州最大級のゲームイベント“gamescom”に岡部氏も参加する)に行く前までに終わらせてください。

岡部 絶対に仕上げます(笑)。ですので、今週と来週(このインタビューは8月上旬に実施しました)はレコーディング地獄ということになっています(笑)。

――『NieR:Automata』の曲作りに関して、岡部さんと帆足さんはどういった役割分担で進められたのですか?

岡部 まず厳密に言うと、我々ふたりは全体の8割くらいで、残り2割はほかのスタッフにも手伝ってもらっています。その8割の中で言うと、私と帆足の作業割合は半分ずつくらいでしょうか。



――岡部さんと帆足さんで曲の特徴など違いがあると思うのですが、互いにどう感じていますか?

岡部 私は、アカデミックな音楽教育を受けてきたわけではなく(※)、「この曲のこの部分がスゴくいい!」と感じる部分を吸収して、自分の曲作りに活かしてきたタイプなんです。

※岡部氏の略歴については→こちらのインタビューを参照。

――論理的に作っていくタイプではないと。

岡部 はい。それに対して、帆足は幼少のころからクラシックのピアノ教育をずっと受けてきているので、いまこうして同じ仕事をしていますけれど、進んで来た道は両極端なんですね。『NieR:Automata』では、クラシックっぽい要素であったり、オーケストラっぽい要素も入れていて、技術的な積み重ねがいい形に出そうな曲は、「このシーンは自分がやりたいな」と思うものでも、帆足が作ったほうがよくなるだろうという部分は、帆足にやってもらいました。基本的には相談しながらではあるんですけど、「ここは帆足にやってもらいたいんだよね」ってお願いしている部分もけっこう多かったですね。

――前作『NieR』ではどれくらいの割合だったのですか? 当時、帆足さんはMONACAに入ったばかりでしたよね?

岡部 そうですね。前作『NieR』のときは、今回は参加していないんですけど、石濱翔もいて、作業量でいうと帆足は比較的少なかったかもしれないですね。


帆足 どちらかと言うと、曲の手伝いという形が多かったので、イチから作った曲は少なかったです。

岡部 そのころの帆足は、まだゲーム音楽をやるというところの経験があまりなかったので、私が大雑把な楽曲を作って、それをベースに「こういう方向性で、こういう風に膨らませていってほしい」という形で帆足に頼んでいました。ですので、あまりゲーム演出やディレクション的な視点は考慮せず、楽曲を作ってもらったという感じですね。本人も演出の部分などはあまり意識してなかったと思います。

帆足 そうですね。まったく意識してなかったですね(笑)。

岡部 ですので、「音楽的にはいいけど、ここはこういう使いかたをするだろうから、音楽的なことはさておき、ここは省いてほしい」といった指摘はけっこう多かったと記憶しています。よくも悪くも若い勢いでまずは作ってもらって、後から私がバランスを取る、といった感じで。それから7年が経ち、帆足もいろいろと経験を積み、僕が持ってない、いいところもたくさん持っていますので、今回はそのよさをぜひ活かしてもらいたいなと思い、帆足に委ねた曲は多くなりました。ただ、イメージが食い違うとよくないので、最初にしっかりと話し合いはしました。


■『NieR』らしさとは
――どういったことを話し合ったのですか?

岡部 まず、『NieR』らしさって何だっけ、というところから始め、「こうかな?」みたいな。

帆足 世間一般で言われている『NieR』っぽいって一体なんだろう、というのは改めて考えました。前作のファンの方々の期待に応えるためにも、ある程度、そこは押さえておく必要があるだろうなと。

――おふたりが考える音楽的な『NieR』らしさとは?
 
岡部 歌が入っていて、その歌のカラーがほかのゲームとは大きく違うところだと思います。もう少し作り手側の意識でいうと、和音とかメロディーの構成などといった要素もあるのですが。さらにもうひとつ大きいのが、隙間の残響音。

――隙間の残響音?

岡部 今回、作っているとき、「『NieR』とは違うかな」と思った楽曲でも、音場感を作ってエコーをかけたら『NieR』っぽくなるね、みたいなことがあって。これは作っている過程で自分も気づかされた部分といいますか、改めて確認した部分でもあるんですが。『NieR』の音楽はすごくエコーが独特。そういう部分は『NieR』っぽさとしてあると思います。

帆足 バトル曲など激しい曲はダイナミックなんですけれど、イベント曲はメロディが効いててすごくキレイ。且つ、ただキレイなだけではなくて味があるというか。日本っぽくないけれど外国のものでもない。「これはどこの音楽だろう?」みたいなことを感じさせる雰囲気が、『NieR』っぽいかなと思っています。

岡部 たしかに『NieR』って、無国籍感みたいなところがあって。音色なども含めて、日本人にはグッとくるけれど、外国の方にはさほど響かない音楽も世の中にはあると思うんです。『NieR』の音楽には日本の音楽ならではの部分もあるけれど、日本っぽくない隙間を埋める旋律みたいなものが結構あるかなとは思いますね。また、『NieR』はすごく切ない情感……ウェットさというか、悪い言いかただとちょっと“クサい感じ”と言いますか。そういった要素も大切だと思っています。ただ、それをやり過ぎると台無しになるのですが、帆足とはそのあたりのバランス感覚が似ているので、僕と帆足の組み合わせは『NieR』にはマッチしているのかなと思っています。



――なるほど。同じようなバランス感覚のふたりが、共通認識をすり合わせて、それぞれ楽曲作りに励んでいったと。

帆足 はい。岡部さんには、ラフに作った段階のものから聴いてもらって、岡部さんが作っている楽曲とアイデアがカブっていないかなどを確認してもらい、さらに全体のバランスも見てもらいながら進めていきました。

岡部 帆足が作ってきたものの中には、「そうそう、これだね」っていうのもあれば、「これはちょっと違うんじゃない?」っていうものもありました。そんなときは……。

齊藤 殴り合いをする。

岡部 そう、体で覚えてもらう(笑)。というのは、冗談ですが、私はヨコオさんと帆足の両方の考えがわかる立ち位置にいるので、帆足からあがってきたものに対して、ヨコオさんの意図とはぜんぜん食い違っているっていると感じたものは再度すり合わせをして、「自分は違うと思うけれど、ヨコオさんはどう思うだろう」と悩む楽曲については、一度ヨコオさんに聴いてもらったり。結果、ヨコオさんからすんなりオーケーが出ることもあって「あ、これはいいんだ」ってことがあったり(笑)。

――岡部さんから見た帆足さんの強みや魅力ってどこでしょうか。

岡部 先ほども言いましたけれど、まずひとつはクラシック畑を歩んできたところですね。私のように、もともとポップス寄りから来てる人間が作るオーケストラと、帆足のようにクラシック畑から来た人のオーケストラというのは、根本的にいろいろ違うんです。

帆足 聴くと一発でわかりますからね。

岡部 どっちがいい悪いではなくて、同じバイオリンでも違う役割を担っているとか、金管楽器と弦楽器の組み合わせかたなど、どうしても違いが出ちゃうんです。ですので、私が作るオーケストラの曲と、帆足が作るオーケストラの曲は根本的に違う。帆足が作ってきたものを聴くと「ちゃんとクラシックをベースに教育されてきた人なんだな」というのを感じるんですね。そこは私が真似できない良さとして、いちばん顕著な部分だと思います。

――一方、帆足さんから見て岡部さんのスゴいと感じるところは?

帆足 自分が歩んできた環境からいうと、音楽を作る=譜面を作る、といった感覚があったのですが、MONACAに入社したてのころ、それを岡部さんに見せたら「これは曲じゃなくて音符だよね」って言われて。たしかに、音符で作った音楽だと、実際に音の響きみたいなところまではイマイチ伝わらない。音色や聴いた感じで最終的に曲ができたかどうかを判断する、ということを教えてもらいました。

岡部 音楽理論やクラシック的な視点で見た時には正しいかもしれないけれど、「ぜんぜんおもしろくない曲だよね」みたいなものもあって。「これ、皆が聴きたいって思うかな?」みたいな。

――わーお、割と辛辣(笑)。

帆足 割とじゃなくてものすごく、キツさ100%で言われました(笑)。

一同 (笑)

岡部 そういう言いかたをして耐性をつけてもらったほうが、後々コミュニケーションや意思疎通は取りやすいなと思って(笑)。相手のことを気にし過ぎて「相手はこう思ってやったんだろうな。だから全部は否定できないな……」と思っちゃうと、何も言えなくなってしますので、そこは「悪いけれど僕の感覚で言わせてもらう」という感じで、意図的にそうした部分もありました。

帆足 クラシック畑も、褒められない、ダメ出しされるばかりの世界なので、私も少しは耐性はありましたので、何とか耐えられました(笑)。

――いま、おふたりのやり取りを見ていると、いい師弟関係が築けているのかなと感じます(笑)。

岡部 言葉はキツかったかもしれないですけど、最初からいい関係でしたよ?(笑)

■ヨコオ氏もベタ褒め!? 『NieR:Automata』楽曲の手応え
――曲作りは終わったとのことですが、齊藤プロデューサーは今回の楽曲については、どのような感想を?

齊藤 仮音を実装した実機ベースで聴いただけなのですが、すばらしいと思いましたね。ヨコオさんは、よく口グセで「前にやったことはやりたくない。新しいことをやるんだ」と言っていたので、どんなものになってしまうんだろう、という不安はあったんですけど、『NieR』が好きだったお客さんも、初めて『NieR』に触れるお客さんも納得していただけるんじゃないかなと思います。少し前の話になりますが、4月のコンサートの時にお披露目した新曲2曲も、アンケートでは『イニシエノウタ/運命』と『カイネ/救済』の次にくるくらい好評で、すごく安心しました。ゲーム発売前にお客さんの生の声が聞けたのはありがたかったですね。

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――コンサート、よかったですよね。

岡部 コンサートをやろうという話になったときは、まだ『NieR:Automata』の曲を作っている真っ最中で、しかも、順調に進んでるとは言い難い状況でした。ですので、コンサート前日までは気持ちが集中できてない部分もあったのですが、『NieR:Automata』を楽しみにしてくれている、ということを改めて感じられるいい機会だったなと思いますし、斎藤さんが仰ったとおり、新曲を受け入れてもらえたという手応えは、その後の制作にも力になりました。やってよかったなと思います。

帆足 私は久しぶりのピアノ演奏もあったので、大丈夫かなという心配がありました。あと、コンサート用にアレンジする必要もあり、けっこうガッツリ変えた曲もあったりして、新しく曲を作るくらいの労力もかかってしまって(苦笑)。コンサートが始まってからは、最初の静寂……というか、咳払いもなく無音すぎて、ものすごく緊張しましたね(笑)。

齊藤 ちょっとザワザワしてくれるくらいがちょうどいいよね(笑)。マナーとしてはよくないだろうけど。

岡部 たしかに、最初はすごく静かで、いままでやった中でもダントツに緊張感がスゴかったです。「この雰囲気のなか、何を話したらいいかわからない!」みたいな(笑)。

帆足 スゴく真面目に聴いてくださって、ありがたい限りでした。スゴくいい経験になりましたし、楽しかったです。

――では、また『NieR:Automata』の楽曲に戻りますが、できた楽曲について、ヨコオさんから、何か感想を言われたりは?

岡部 ヨコオさんは意外と……

齊藤 褒めまくりですよ(笑)。

――おお! 岡部さんに対しては、素直に褒めないと思っていましたので、ちょっと意外(笑)。

岡部 ヨコオさんとは長い付き合いなので、「岡部の機嫌を損ねると面倒くさい」とわかってくれていて、制作中は大げさなくらい褒めてくれるので、それはありがたく受け取ってます。ヨコオさんは、演出において音楽をすごく大事って思ってくれていて、すごくこだわりがある。そこは作り手としてはうれしいですね。ただ、音楽自体にはあまり興味ないと感じる部分もありますが(笑)。

――ん? どういうことです?

岡部 演出の道具としての音楽をすごく大事に思っているんです。そういう視点はすごくディレクターらしいなと思います。我々は、音楽としていいか悪いかをどうしても意識しがちなんですが、極端に言うと、音楽として破綻していても、演出に使えるなら、そっちを取る、という。ヨコオさんからそうした修正の要望がきたときに、どう折り合いをつけるか、というのは難しいところでした。結果、音楽として微妙になっちゃったときでも、演出としては正解だったなと感じることはすごくあるんです。音楽的な魅力を損なわずに、ヨコオさんが望む演出を具現化する、というのは、曲を作るうえですごく意識したポイントですね。

――そういった作りかたはゲーム音楽ならでは、といったところなんでしょうか?

岡部 そうですね。いわゆるアーティストとして音楽を作ることと、演出音楽を作るのは根本的に違うと思っています。アーティストならではの、個性の純度がどんどん高くなっていく感じというのはもちろん魅力的なんですけど、ゲームに合わせた曲作りは、自分の音楽作りの幅を広げてくれますし、いままで気づけなかったことにも気づけることが多いので、違う成長のしかたができると思っています。

齊藤 ヨコオさんの音楽のディレクションの話をもう少しすると、ヨコオさんは、こだわらないところはぜんぜんこだわらないですよね。

岡部 それはありますね(笑)。

齊藤 前作『NieR』で、ヨコオさんが「釣りをするシーンの曲は『魔王』でいきましょう」と言ったとき、ビックリしましたから(苦笑)。

岡部 「あのシーンと釣りのシーンでは整合性が取れないけど本当にいいの? そこはどうでもいいんだ!」みたいな(笑)。ですので、ヨコオさんがどうでもいいと思っているところに、どれだけ我々の自己満足というか、音楽的なこだわりを入れられるかにやり甲斐を感じたりもしています(笑)。

帆足 どうでもいいところは、ある意味、委ねてもらえますもんね(笑)。


■新しく挑戦したところ
――今回、新しく挑戦したことがあると思うんですが、それはどこでしょうか?

岡部 いちばんわかりやすいのは、歌い手にジュニーク・ニコールさんを新しく迎え入れたというところでしょうか。前作『NieR』はエミ・エヴァンスさん歌声のイメージが強かったと思いますし、エミさんには今回も歌っていただいて、「これぞ『NieR』だよね」という曲もたくさんありますが、パワーのあるジュニーク・ニコールさんの歌は、新鮮に聴いていただけると思います。

※gamescom 2016に合わせてジュニーク・ニコールさんとエミ・エヴァンスさん、2バージョンのテーマ曲が公開

岡部 また、前作はのどかなオーガニックっぽいテイストの村や草原があり、そのイメージに合わせた音楽を作ったつもりですが、今回はメインキャラクターがアンドロイドで、冒頭から殺伐としているというか、メカニカルな感じが出ていますので、それに合わせて音楽も前作とは違うテイストになっていますね。あとは、プラットフォームが変わったこともあり、画の密度もぜんぜん違いますから、音ももう少しリッチな方向に寄せています。前作の音楽は隙間が多かったのに対して、今回はもう少し“埋まっている感覚”があると言いますか。ただ、ひとつの曲でもバリエーションがすごくあるので、音が少ないバージョンもあります。

帆足 “埋まり感”って言葉で伝えるのが難しいですね(笑)。

岡部 簡単に言うと、たくさん音が入っているということですね。

――『NieR:Automata』は、オープンワ―ルドのゲームデザインになっていますが、音楽的に何か気をつけたポイントはありましたか?

岡部 バトルエリアに入ったら曲が変わる、という作りではなくなり、同じテンポで激しい曲や穏やかな曲も作らないといけなくて、なかなかの足かせ感、というのは正直感じました(笑)。もう少しテンポを遅くできたら、もっと穏やかな印象が出せるのにとか、逆にもう少しテンポを早くできたら、より激しい感じやスピード感が出せるのに、と思うところもありましたし。ただ、テンポを変えずに、ほかの要素でその感じをどう出すか、みたいなところは新しい挑戦でしたし、自分の引き出しも増えたような気がします。

齊藤 『ドラゴンクエスト』では、1曲をループさせることによってフィールドだったり街だったり、その情景を印象付ける形になっています。『NieR:Automata』はその対局にあると思っていて、1曲にいろいろ詰まっていて、やり切っている感がスゴイ。そういう違いはおもしろな、と思いながら聴いてます。

岡部 前作の『NieR』もフィールド曲はわかりやすくて、曲を聴くとあのフィールドを連想できると思うのですが、じつは制作段階ではもっと変化させる仕様にしていたんですけど、「実際やってみたら合わなかったわぁ~」みたいなことをヨコオさんにサラッと言われて(笑)。曲がリニアに変わっていく演出にすると、印象としては散漫になりやすい反面、次に訪れたとき「こうなるのか」という変化が楽しめるメリットがあります。プレイしたとき、その変化を楽しんでもらいたいですね。


――そのほか、システム面で音楽的に工夫しているところはありますか?

岡部 ゲームはどうしてもプレイ時間が長くなるので、曲が少ないと飽きられる恐れがあるので、作り手としては違う曲をどんどん入れたくなるんです。ただ、たくさん情報を与えられ続けても、あまり印象に残らない。前作『NieR』は、モチーフとしてはたくさん作り過ぎず、『NieR』といえばこのモチーフ、というものがいくつかある中で、そこを広げていくという作りかたをしました。たとえば、ひとつの曲でも、リズムトラックや歌のトラックなどを、プログラム的に足し引きができるようにしてもらいました。さらに今回の『NieR:Automata』では、足し引きだけではなく、別のラインを用意して、曲が派生していくようにしたりしています。プラチナゲームズさんのサウンド担当の方といろいろお話させていただき、こちらの要望に対して、労を惜しまず技術的な提案もいろいろしてくださって、「いい物になるんだったらがんばります」という姿勢でやっていただけるので、すごくやり甲斐はありましたね。

――では最後に、『NieR:Automata』の音楽でこだわった部分、ここを聴いてほしい、といったところは?

岡部 『NieR』らしい“残響音”やメロディーの流れでしょうか。帆足の曲であっても、こういう要素は絶対に入れたいから、帆足の楽曲データを引き継いで手を入れたり。

――岡部節のチューニングが全曲に入っていると。

帆足 あと今回は哀愁感の度合いのさじ加減ですよね。哀愁漂う曲も行き過ぎるとお葬式みたいな感じになってしまうし。

岡部 悲しさを音楽的に演出するにもいろいろ種類があると思っているのですが、行き過ぎるとメロドラマっぽくなって、安っぽい感じになってしまうので、「もう少しドライにしようか」というさじ加減のすり合わせは、かなり密にやりましたね。

帆足 そこのさじ加減はかなり微妙で、限界まで泥臭くなる一歩手前ぐらいで、浮世感みたいなのを残しつつ。

――ひと言では言えない部妙なさじ加減が『NieR』の音楽の肝になっているというところなんでしょうか。

岡部 そうですね。正直、『NieR』と似た楽曲を作るは簡単だと思うんですね。とりあえず声を入れて、マイナー調のコード進行で歌を入れておけば『NieR』っぽくなる。ですが、そういうものと『NieR』はやっぱり違うと思ってもらえる差は重要だと思っていて。そこはブレないように注意したつもりですね。プレイヤーさんにはわかりづらい部分かもしれませんが、そこを感じ取ってもらえるとうれしいですね。

最終更新:8月17日(水)23時2分

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