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クラウドサービス市場の覇者は? 最新勢力図を検証する

ITmedia エンタープライズ 8月17日(水)13時6分配信

 米Gartnerが先頃、パブリッククラウドのIaaS(Infrastructure as a Service)市場における上位10社を取り上げた「マジック・クアドラント 2016年版」を発表した。クラウドサービス市場におけるベンダーの勢力図を一目で分かるように示したものとして注目されていた発表である。

【画像】世界のクラウドサービス市場におけるベンダー上位20社の市場シェア(2015年)(出典:平成28年度版 情報通信白書)

 図1が、IaaS市場を対象にしたマジック・クアドラントの調査結果である。マジック・クアドラントはGartner独自のリサーチ手法で、リーダー、チャレンジャー、ニッチプレーヤー(特定市場指向型)、ビジョナリー(概念先行型)の4象限からなる図に、対象となる市場で競合するベンダーの相対的な位置付けを示したものである。ちなみに、図表の縦軸は「実行能力」、横軸は「ビジョンの完全性」を表しており、右上に位置付けられるほど評価が高いことを意味している。

 図1の通り、米Amazon Web Services(AWS)と米Microsoftがリーダーの位置にあり、他の競合をリードしている。AWSとMicrosoftの間も実行能力においてまだまだ差があるが、2015年版と比べると少し差が縮まったようだ。2015年版については2015年6月1日掲載の本コラムの図2を参照いただきたい。

 比較した結論からいうと、4位以下では変動があるものの、リーダー2社の強さがますます際立ってきた形だ。

 米IDCが先頃発表したパブリッククラウドによるIaaS市場の規模は、2015年で126億ドルだったが、2020年にはその3倍強の436億ドルに達するとしている。年間平均成長率(CAGR)は28%となる計算だ。同社のリポートで興味深かったのは、6000社を超える企業を対象とした調査で「3分の2がIaaSを既に採用、または採用予定がある」ことが分かった点だ。

 一方で、「80%は2018年までにハイブリッドモデルを採用する」とも予測しており、つまりはパブリッククラウドをハイブリッドモデルとして利用する形態が主流になりつつあるといえそうだ。

 ただ、企業向けクラウドサービスはIaaSだけではない。同じパブリッククラウドでもPaaS(Platform as a Service)もあればSaaS(Software as a Service)もある。その割合はざっくりIaaSが4割、PaaSが1割、SaaSが5割というのが現状だ。また、パブリッククラウド環境内にプライベートクラウド環境を構築してサブスクリプションモデルで提供する「ホステッドプライベートクラウドサービス」も増えてきている。となると、企業向けクラウドサービス市場の覇者は一体誰なのか。

●サービス全体ではIBMがAWSを抑えてシェアトップ

 企業向けクラウドサービスベンダーの勢力図の前に、まず市場の推移を見ておこう。図2は、総務省が先頃公表した「平成28年度版 情報通信白書」に記されていた米調査会社IHS Technologyによる「世界のクラウドサービス市場の売上高推移」である。IHSによると、2015年で931億ドルだったのが、2019年には2420億ドルに拡大すると予測。その内訳であるIaaS、PaaS、CaaS(Cloud as a Service)、SaaSとも大きくなると見ている。

 この中でCaaSはあまり耳慣れない言葉だが、情報通信白書によると「クラウドの上で他のクラウドのサービスを提供するハイブリッド型のサービス」のことだという。また、IaaSだけを見ると、先述したIDCの数値と違いがあるが、これは恐らく、IHSの調査データにはホステッドプライベートクラウドサービスなども含まれているからだろう。いずれにしてもIHSでも2019年には2015年の2.6倍に市場が大きく膨れ上がると予測している。

 そして、図3が図2と同じく情報通信白書に記されていたIHSによる「世界のクラウドサービス市場におけるベンダー上位20社の市場シェア(2015年)」である。これがつまりは、現時点での企業向けクラウドサービスベンダーの勢力図といえるだろう。

 ちなみにIHSのリポートでSaaS市場だけのシェアを見ると、米IBMが19%で他を大きくリードし、米Salesforce.comが8%、Microsoftが6%、米Oracleが3%、独SAPが2%で続いている。一方、IaaS市場だけのシェアでは、AWSが17%、Microsoftが9%、米Googleが5%となっている。ただ、先述したようにSaaSがクラウドサービス市場の5割を占めていることから、全体では図3のような結果となっている。

 この勢力図に今後大きな変化があるとすれば、既にオンプレミスで確固たる実績を持つOracleとSAPがPaaSやSaaSのシェアを伸ばし、上位に食い込んでくる可能性が高いことだ。ただ、現状を見て最も印象強いのは、やはり「IBMはしたたか」ということだ。

 もう1つ現状を見て印象強いのは、IBMをはじめとして米国ベンダーの市場独占ぶりである。IHSによると、2015年では上位5位までに位置する米国ベンダーで市場の約35%を占めており、市場全体で見てもおおよそ半分が米国勢で、「今後も引き続き米国ベンダーが主導するだろう」としている。

 なんとか日本のベンダーにも奮起してもらいたいところである。とりわけ図1に名を連ねている富士通とNTTコミュニケーションズには、両社とも自ら世界市場に積極的に打って出ることを明言しているだけに、図3で上位に食い込むためのチャレンジを果敢に行ってもらいたい。

最終更新:8月17日(水)13時6分

ITmedia エンタープライズ