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スマホとVRビジネスはどうなる? HTC NIPPONの玉野社長に聞く

ITmedia ビジネスオンライン 8月18日(木)6時25分配信

 日本初のAndroidスマートフォンはサムスン製でもソニー製でもない。2009年7月に登場した台湾・HTC製(docomo PRO series HT-03A)が最初となる。実はHTCは世界的にも最初にAndroidスマートフォンを開発し市場に投入したメーカーでもある。

【日本市場に登場したVR「HTC Vive」】

 そんなパイオニア的存在のHTCが今再び、日本市場で存在感をみせている。HTC北アジア法人のJack Tong社長によると、2016年第2四半期(7月1日~9月30日)の販売実績は前期よりも期待ができ、最新モデルHTC 10の売り上げをみると、44%を日本向けが占めているという。

 今回はそのHTCの日本法人、HTC NIPPONの玉野浩社長を取材し「HTCのこれまでとこれから」を聞くことができた。玉野社長が見る今のスマートフォン市場とSIMフリースマートフォンの現状、同社のVR製品・HTC Viveに賭ける思い」を語っていただいた。

●まだ認知度が低いがAndroidのパイオニア

――最初に失礼なご質問かもしれません。スマートフォン・携帯電話好きには「Androidスマートフォンのパイオニア」的な存在、「ハイスペック機種の雄」として名高いHTCですが、一般のユーザーには、まだ認知度が低いようです。この点についていかがでしょうか。

玉野社長(以下、玉野): HTCは日本市場においてハイスペックなスマートフォンを販売してきました。ただ、一般の方からは「HTC? 日立?」といった感じに誤解されてしまうこともまだあるようですね(正式にはHTCはハイテクコンピュータの略とされている)。テレビCMなどで乃木坂46を使って認知度向上を狙った時期もありましたが、彼女たちのほうが有名になってしまいましたね。

 多くの人は「日本のスマートフォンはiPhone3Gから始まった」と思われているようですが、実は日本初のAndroidスマートフォンだけでなく、日本初のスマートフォンもHTC製なのです(当時はWindows CEベース)。

●グローバルモデルをそのまま投入したかったHTC 10

――最新のハイスペックスマートフォン「HTC 10」(※)が売れているようですが、玉野社長から見てHTC 10はいかがでしょうか?

※HTC 10(HTV32):現在、auで発売されているHTC製の最新のハイスペックスマートフォン。パフォーマンスもさることながら、同社史上最強のカメラ(約1,200万画素の背面カメラとレーザーオートフォーカスを搭載)、ウーファー&ツイーター実装、イヤホンによるハイレゾ音源対応などを実現している。一方で、おサイフケータイやワンセグ/フルセグ、赤外線通信といった、国内向けの機能追加は行なわれておらず、グローバルで発売されているモデルを最小限に日本国内向けにした同社のモデルと言われている。

玉野: いろいろなサイトをチェックしていますが、今回のHTC 10はユーザー満足度の評価が高いですね。日本市場はiPhoneの存在が大きく、その次にGalaxy(サムスン製)とXPERIA(ソニー製)があります。そしてその次に……を考えたときに、当たり前の製品ではなく、「尖った製品」であることが重要だと思うのです。

 日本市場では尖った製品を出しにくいのですが、HTC 10は日本固有の付加価値を落としてでもグローバルモデルそのままに尖らせてみたという製品なんです(ワンセグなどの日本固有の機能を付加すると、そうした機能を搭載していない海外モデルに比べ本体価格が高くなるだけでなく、バッテリー消費の増加やパフォーマンスの低下、Android OS採用スマートフォンとしての親和性の低下などにつながっている原因の1つと言われている)。その潔さがユーザー満足度の結果につながったのではないでしょうか。

●格安スマホ市場はポケモンGOで変化を始めた

――今の日本のSIMフリースマートフォン市場について、どのように考えていますか?

玉野: 日本のSIMフリースマートフォン市場は、ある程度予想していた通りの展開になってきていると思います。価格帯で言うと2万円以下の機種が「SIMフリースマートフォン」だと思われている一般ユーザーがほとんどではないかなと。理由は簡単で「格安スマホ」という名前で販売や報道がされているから。本当は「格安回線(格安MVNO)」なのですが、いつのまにやらそういうカタチで浸透しています。ですから、中国メーカーの価格競争力の高い製品がよく売れています。

 当社の製品もMVNOで扱っていただいていますが、MVNOのほうで価格を下げて販売されるケースも。そうなると同じ製品を扱う量販店での店頭販売が厳しくなる。ですから、今後は「MVNO向け」「量販店向け」といった形で、製品を分けないといけないのかなと思っています。

――今後も日本のSIMフリースマートフォン市場は、「格安スマホ」という流れで拡大していくと思いますか?

玉野: 今後は「多少、品質や性能が悪くても安ければいい」というユーザー側の認識が「これではマズい」という方向にシフトしていくのではないかと思っています。なぜならスマートフォンゲーム「ポケモンGO」の登場で変化の兆しが現れたのではないかなと。

――確かに格安スマートフォンの一部で「ポケモンGOができない」「動作が遅い」「ダウンロードができない」という話題はよく出ます。

玉野: ポケモンGOのためだけではないのですが、当社もHTC 10で好評を博しているハイスペックな技術を「中級価格帯に落とし込んで、SIMフリー市場に製品を投入できないか」と考えています。

●ViveでVR市場を牽引しはじめたHTC

――HTCはVR機器「HTC Vive」(※)を日本市場に投入しました。玉野社長から見て、日本市場でのVR、HTC Viveの可能性についてお話を聞かせてください。

※HTC Vive:HTC製のPC向けのVRヘッドマウントディスプレイ。ルームスケールVR(簡単に言うと仮想空間の中で歩き回れる)を実現したハイエンドVR機器で、現在販売されている一般向けVR機器の中では最高峰と言われている。先行して販売されたサムスン社製のGear VRとの違いは、Gear VRが同社のスマートフォン「Galaxy」を利用するのに対し、ViveはPCに接続し、またルームスケールの概念があり、付属の専用コントローラーも利用できるところである。高度なVRを再現するため、接続するPCもかなりのハイスペックが必要とされる。今、IT業界では注目される製品の1つとなっている。

玉野: 初めて世の中にViveを発表したのは2015年のバルセロナ(MWC、携帯電話関連の世界最大の国際見本市)なのですが、その前年にPC向けゲーム配信サービス・バブル社と共同開発しました。その後、約5000社以上のゲームデベロッパーに開発キットを提供し、1年間フィードバックをいただきました。そして今年正式に製品として発表したわけですが、なぜHTCがVRを手がけたのかといいますと、答えは1つしかありません。「HTCだから」なんです(笑)。

――どういう意味でしょうか?

玉野: 「最高のVR製品にしたい」という想いがありました。なぜ最高のモノにしなければいけなかったというと、「早く飽きられてしまう恐れがある」から。例えば、3Dテレビが一時期市場に投入されましたが、ハードの中途半端さ、コンテンツ不足などから一般化する前にフェイドアウトしました。

 そのようなことにならないためにコンテンツとそれを支えるハード(VR機器、それを接続するPC)をそろえることで、「ビジネスとして盛り上がる」と考えました。パートナー各社とは1年ほど仕込んできまして、結果、15万円ほどでViveに対応できるPCが登場し、Vive本体価格(9万9800円・税抜)を合わせて、25万円ほどで最高のVRを体験できる環境を整えることができました。コンテンツも400タイトルを超えています。

――Viveの普及の環境は整ったということですね。ソニーもPlaystation VRを市場に投入します。

玉野: PlayStation VRが出ることによって、VR市場に注目が集まるのではないでしょうか。ただ、PlayStation VRとViveのVR体験は全く違うものです。それがルームスケールVRです。Viveでは縦横3m×4m、対角5mの部屋の範囲にいるプレイヤーの頭部の向き、位置までをリアルタイムに検出することができます。この範囲であれば自由に歩き回ることができ、仮想空間の中を移動することが可能なのです。このルームスケールVRがViveの大きなポイントです。

 その違いを多くの人に知ってもらえるように、全国各地に体験できるスポットを増やしていこうと思っています。VRは体験してもらわないと、その没入感(対象に意識が注がれ他の事が気にならなくなる様子や、その度合い)や世界観は伝わらないので。

●HTCのVR事業の方向性

――HTCのVR事業の方向性はやはりViveが中心になっていくのでしょうか?

玉野: 今後の展開として2つのことを考えています。ハイスペックのViveを今後もブラッシュアップしていく方向性と、もう1つはお手頃なモバイル化という方向性です。モバイルの分野は当社が得意としている分野ですし、両方から普及していきたいと考えています。

 また一般向けだけではなく、さまざまな業界でも利用できる可能性を見せ始めています。例えば自動車産業。ディーラーが自動車のオプションを設定する際、店頭でViveを使って立体的に見せています。また不動産業界でも活用され始めています。家の図面をViveで立体化することで、紙では確認できなかったことを確認しています。このほかにも医療関係でも導入が始まっていて、手術前のシミュレーションにも利用されています。

 「VR」といえば「エンターテインメントに使うのでしょ」と思われる人が多いかもしれませんが、実はさまざまな業界で使うことができると思っています。

(甲斐寿憲)

最終更新:8月18日(木)6時25分

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