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「上場ゴール」か、成長途上か LINEは上場初日の評価を超えることができるのか

ITmedia ビジネスオンライン 8月18日(木)7時10分配信

 7月15日に上場したLINE。国内でダウンロード数・売り上げともにナンバーワンのアプリを運営する同社は国内で今年最大級のIPO(新規上場)となり、市場の注目は集まっていた。しかし上場には懐疑的な見方も少なくなく「今後の成長余地が少ない」「いま上場する意図が見えない。“上場ゴール”ではないか」といった声もあった。

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 上場初日は公開価格の3300円を大きく上回る4900円からスタートし、その日のうちに5000円の高値を付けた。しかし、7月中は下降傾向に。27日に好調な1~6月期業績が発表されたにもかかわらず、8月1日には3780円の上場来安値に。だがその後、証券会社によるレーティング引き上げで切り返し、16日には4780円に上昇した。

 LINEをどう評価すべきか、市場は図りかねているようにも見える。期待と不安が交錯するLINEの上場を、アプリ業界はどう見ているのか。スマートフォン向けアプリ分析サービスのApp Annie(アップアニー)の日本・韓国担当リージョナルディレクター 滝澤琢人さんに聞いた。

●LINEは上場ゴール?

 LINEは国内ナンバーワンのメッセージアプリ。だから、日本市場でのこれ以上の伸びは難しく、“上場ゴール”なのではないか――そんな疑問に対し、滝澤さんは「そんなことはない」と否定する。

 「LINEを始めとするメッセージアプリにはまだまだ可能性がある。というよりも、モバイル市場に大きな可能性があると言っていいかもしれない。モバイルシフトの大きな波が来ていて、“あらゆるサービスに大きな影響を与える”入口になっている」(滝澤さん)

 消費者の多くは情報を得る手段としてスマートフォンを使うようになっていて、企業にとってはかなり強い新たな接点となっている。これからの企業戦略の要になるのはモバイルで、新しいサービスの起点となると考えている企業も増え始めているのだという。

 消費者とモバイルの接点というと、一番想像しやすいのがオンラインショッピングだ。経済産業省によると、2015年の国内EC市場規模は13.8兆円と、前年から7.6%拡大した。成長の背景には、“気軽に、ストレスなく、欲しいと思った時に物を買いたい”という消費者の願望と、モバイルでの買い物という形態がマッチしたことがある。

 例えばコーヒーチェーンの米Starbucksは、「モバイル・オーダー・アンド・ペイ」での売り上げが好調だ。アプリを通じて注文と決済を行い、所定の時間に店に向かえば並ぶことなく商品をピックアップできるのが特徴。利用者の客単価は他の顧客の約3倍という分析もあり、収益の大幅増に貢献している。「EC以外でも、店舗や旅行や交通などのジャンルには、まだまだモバイルによって発展する余地が十分にある」と滝澤さんは語る。

 また新興国や若年層では「PCを持っておらず、インターネットにはスマホでだけ接する」という層も増えてきている。このような層が増えていけば、「モバイルファースト(Webサイトを公開するときに、モバイル版を先に公開する)」ではなく、「モバイルオンリー(モバイル版のみに向けてサービスを提供する)」という流れも生まれてくる。

 「若い人のコミュニケーションが、今はモバイルに集中している。動画配信のAbemaTVやNetflixはPC版もあるが、スマホ版で大きく成長している。こういったサービスがモバイルオンリーにシフトするようになるのは時間の問題。さらに、モバイルは現状スマホが6割で従来型携帯電話(ガラケー)が4割だが、これからますますスマホシフトして、ますます生活になくてはならないものになっていく」(滝澤さん)

 普及が進み、既に飽和しているとも言われるスマホだが、スマホを活用したモバイルサービス自体はまだ入り口に立ったばかり──ということになる。モバイル市場が爆発的に伸びていき、今後も加速していくことが予想される状況下で、国内ナンバーワンメッセージアプリであり、海外展開も進めているLINEには大きな可能性と発展性がある――という見方はできそうだ。

●モバイルは魅力的な広告市場

 LINEの成長ポイントはもう1つある。それは“モバイル広告市場”だ。

 企業の広告費はこれまで、そのほとんどが既存のメディア(テレビ、新聞、雑誌など)に使われていた。特に古い歴史を持つ日本企業はその傾向が強く、広告のデジタル化・モバイル化は進んでいない。モバイルの重要性をなんとなく分かってはいても、「数多くのチャンネルの1つ」と考えていた。その一方で、IT関係や、ゲームやエンターテインメント系がモバイルの重要性に注目するのは早かった。

 「モバイル広告のポイントは、企業から消費者に向けてターゲティングができること。時間やタイミングもカスタマイズして、消費者の好みに合わせてピンポイントに広告を出すことができる強みがある」(滝澤さん)

 日本ではまだまだ趣味嗜好が似通っているために、従来型メディアによるマスマーケティングはまだ強力だ。だが今後、社会の多様化が進めば、同質な大集団を前提としたマス広告のコストが見合わなくなっていく。

 これまでは「20代女性向けの商品なら、人気のテレビドラマ枠に広告を出しておけばリーチできる」といった方針で済んでいたが、多様化した社会では「どういう20代女性に届けたいのか」をきちんと考える必要が出てくる。届けたい層は、ふだんどういったコンテンツを消費して、どんな物を買ってくるのか? そういったことを考えながら、ターゲット層を打ち出していく。そしてその層にピンポイントに届けることができるのがモバイル広告の強みだ。

 LINEの16年1~6月期決算では、広告サービスの売り上げが前年同期から+60.1%と大きく成長した。LINEの収益モデルは「コミュニケーション(スタンプ・着せかえなど)」「コンテンツ(LINE GAME・LINEマンガなど)」「LINE広告」「ポータル広告」の4軸があるが、その中でLINE広告は最も成長率が高く、最も売り上げが多い「コンテンツ」の収益に迫りつつある。

●LINEの大きな課題とは?

 LINEの成長余地は十分にありそうだ。では逆に、LINEの課題は何か。

 「LINEだけではなく、スマホアプリの全てにいえることだが、App StoreとGoogle Playという2大ストアがあることで、グローバル展開が容易にできるとともに、逆に競争が激化しているという面がある」(滝澤さん)

 かつて「mixi」などのSNSで指摘された「ネットワーク効果」(ユーザーが増えれば増えるほどサービスの価値が高まる)はメッセージアプリの特徴でもある。ユーザー利用者が増えれば、そこにさらに利用者が集まっていく。つまり、市場で高いシェアを得たアプリがどんどん強くなっていくのだ。

 トップアプリの牙城を崩して、2位以下が“下剋上”するのは非常に難しい。このため、日本ではLINEの地位は揺るぎないが、同じ理屈で、FacebookとWhatsAppの米国や、WeChatの中国でLINEが大きな成功を収めるのは難しいと言える。

 LINEがトップを握るのは日本のほかは台湾とタイで、インドネシアでも首位をうかがう。「LINEの戦略としては、まずは1位を獲っている国内を優先。そしてユーザー数が増えている台湾、タイ、インドネシアを伸ばしていく――というものが考えられる」(滝澤さん)。LINEの出澤剛社長は上場時、シェア首位の4カ国・地域に絞っていく方針を明らかにしている。

 現在、LINEの売り上げは7割が国内。残り3割を占める海外展開の成否も今後の成長を左右しそうだ。

●この企業の上場に注目

 LINEは上場で1320億円を調達した。設備投資や負債返済に充てる一方、成長に向けたM&A(合併・買収)にも活用する考えを明らかにしている。「マーケットの拡大に使うのか、サービスの拡充に投資するのか……LINEに今後“強力なライバル企業”が出てきたときに、どのような対応をするかが分かる」と滝澤さんはみる。

 LINEの上場はアプリ業界にとって大きなニュースだった。今後、アプリ業界でLINEと同様に上場が注目される企業は?

 「『上場していないのが意外なほど』といわれているのが配車アプリサービスを提供するUber(ウーバー)。非上場だが企業価値はGeneral Motorsやホンダを抜き、時価総額ランキングの上位に食い込んでいる」(滝澤さん)

 また、メッセージアプリの次のトレンドとして注目されているのが“動画を使ったコミュニケーション”。中でも、モーションセルフィーで動画をリアルタイム処理できる「SNOW」は、LINEと同じく韓国のNAVERを親会社とするCamp Mobileが開発し、10代を中心に大きな支持を得ている。

 「海外ではチャットアプリのSnapchatが若い層にウケて、マーケッターにとって無視できない状態になっている。新しいコミュニケーションを生み出し、急成長している企業は、今後突然トップになることが考えられる」。SnapChatは日本法人を設立するといううわさもあり、要注目だ。

最終更新:8月18日(木)7時10分

ITmedia ビジネスオンライン

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