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<特別連載>ミャンマーのロヒンギャ問題とは何か? (19) なぜ「ロヒンギャ」は差別されるのか 宇田有三

アジアプレス・ネットワーク 8月18日(木)12時15分配信

Q. それでは、かれらを何と呼ぶのがいいのですか?
A.実際に自分たちを「ロヒンギャ」と呼びたい、呼んで欲しい人がいるのは事実です。ですが、果たして彼らが「ロヒンギャ民族」と呼んで欲しいのか「ロヒンギャ・ムスリム」と呼んで欲しいかといえば、これまでの私の経験では、ほとんどのロヒンギャは後者を選んできました。なので、ミャンマー国内の土着化したムスリムの一つとして「ロヒンギャ・ムスリム」と呼ぶのがいいのではないかと思っています。

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Q. 実際にバングラデシュで、ロヒンギャの人びとに会った印象はどうですか?
A.バングラデシュでは東南部コックスバザール地域のロヒンギャの難民キャンプ(公式キャンプ2箇所、非公式キャンプ2箇所の計4箇所)を訪れました。現地に入って初めて知ったのですが、実は難民キャンプに暮らしていないロヒンギャの人びとが20万人近くいたことでした。

Q. 20万人を超えるロヒンギャたちは、何をしているのですか?
A.その正確な数字は分かりません。だいたいそれぐらいの数だと推測されています。彼ら彼女たちの立場は、それこそ千差万別で、軍政期にミャンマー側から逃れてコックスバザール周辺で、賃金労働者や日雇い農民としている者もいます。また、商売人としてバングラデシュ側とミャンマー側で貿易業を営んでいる人もいます。

Q. ロヒンギャは、バングラデシュ人(ベンガル人)と一緒に、普通に生活しているのですか?
A.実際に詳しい調査をしたわけではありませんので、はっきりしません。ただ一か月ほど現地に滞在する中で、ロヒンギャの人が現地の人に差別されているということは感じました。実はもっと詳しい調査や取材が必要な部分ではないかと思っています。

Q. ロヒンギャは、バングラデシュで暮らすのに言葉の問題はないのですか?
A.ロヒンギャたちは通常、ミャンマー語ではなく、チッタゴン方言のベンガル語を話しています。私自身、ミャンマー語とベンガル語の違いぐらいは分かりますが、ベンガル語とチッタゴン方言のベンガル語の違いは全く分かりません。

※ 2016年5月、チッタゴン地域をフィールドワークしている研究者に話を聞く機会がありました。その際、チッタゴン方言もいくつかに分かれており、ロヒンギャたちの話すチッタゴン方言は特別なチッタゴン方言で、「チッタゴン方言」と簡単にいえないのではないか、という説明を受けました。ロヒンギャたちが話すのは、チッタゴン方言の中でも特別な言葉の一つなのだから「ロヒンギャのチッタゴン方言」とでも表現できるのでは、とのことでした。(この辺りも不明確な部分が多く今後の研究が待たれます)

Q. じゃあ、ロヒンギャの人もバングラデシュでのコミュニケーションはそれほど困らないのですね。
A.現地ではそう説明されました。しかし、一般的なベンガル語ではなく、チッタゴン方言のベンガル語というのは、現地の人には分かるので、「おまえたちはよそ者だろう」という感じで、ロヒンギャたちが差別されている話はよく聞きました。

Q. なぜ差別されるのですか?
A.推定20万人を超える人が外から来れば、食事の準備のための薪集めだけで、現地の人と資源の取り合いになる。工場や田畑での労働者も賃金の安いロヒンギャが優先され、現地の人の職を奪うことになるなど、生活レベルでの摩擦が起きます。

Q. 確かバングラデシュは人口密度が世界でも高かったような気がします。
A.生活の状況に関しては、バングラデシュの首相もインタビューで、「バングラデシュは既に人口過密状態」といっています。
バングラデシュの人口に関しては、誤解があるようです。確かにバングラデシュは現在でも、最も人口密度の高い国として知られています。しかし、かつて人口増加の問題を抱えていたバングラデシュは人口抑制の政策をとり、その政策は成功しているといえるでしょう。バングラデシュは現在、人口増加率で見ると南アジアで低い国となっています。(つづく)



宇田有三(うだ・ゆうぞう) フリーランス・フォトジャーナリスト
1963年神戸市生まれ。1992年中米の紛争地エルサルバドルの取材を皮切りに取材活動を開始。東南アジアや中米諸国を中心に、軍事政権下の人びとの暮らし・先住民族・ 世界の貧困などの取材を続ける。http://www.uzo.net
著書・写真集に 『観光コースでないミャンマー(ビルマ)』
『Peoples in the Winds of Change ビルマ 変化に生きる人びと』など。

最終更新:8月18日(木)12時15分

アジアプレス・ネットワーク

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。