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日本のAI戦略、“反転攻勢”できるか 「量より質のデータ」に活路

日刊工業新聞電子版 8月18日(木)16時28分配信

グーグル・IBMなどへの危機感

 囲碁のチャンピオンを破るなど急速な発達を遂げている人工知能(AI)。この分野で先行する米国企業が応用先を医療やロボット、自動運転車などにも広げつつある。反転攻勢に出たい日本。AI開発に「量より質」にこだわったデータを生かすなど、日本ならではの取り組みも芽生えつつある。(平岡乾)

 「これで負けたら、日本はすべて負ける」―。3月末に自民党が安倍晋三首相の直轄組織として設けた「人工知能未来社会経済戦略本部」。山際大志郎事務局長(衆議院議員)によると、同本部はそんな危機感に包まれていたという。

 念頭にあるのはグーグルやフェイスブック、IBMといった米IT企業だ。検索サービスやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などインターネット上のサービスで培ってきたAI技術を引っさげ、日本が得意としてきたハードウエア分野に進出する動きが相次ぐ。

 象徴的なのがグーグルで、自動運転車やロボット分野の企業の買収を重ねてきた。2014年に住宅用の温度制御機器を手がける米ネストを買収し、16年5月には音声で照明や家電を操作できる「グーグル・ホーム」を発表。活動の場をサイバー(電子)空間からリアル(現実)空間に広げる動きが顕著だ。

 一方、15年11月に自社のAI「TensorFlow」をオープンソース(無償公開)とした。AIは無料として普及を促しつつ、リアルデータの収集に腐心しているようだ。

 現在主流のAI技術「機械学習」は、ビッグデータ(大量データ)を取り込むことで分析精度性能を高める。例えば、人間の顔の画像データを大量に取り込むことで、顔認識の精度が高まる。こうして今やAIは人間自身による顔の認知能力をも凌(しの)ぐようになった。

ウェブサービスのAI技術でハード進出

 ハードの世界に進出するにあたり、次の照準はリアルデータ。IBMも米テレビ番組のクイズ王を破ったAI「ワトソン」を、銀行のコールセンター業務や病理診断など医療分野などの業務に応用する考え。日本を含む世界各地でリアルデータを集める構想が進む。

 翻って日本は「質の高いデータ」で差別化を狙う。この点で際立っているのが、経済産業省と厚生労働省が生活習慣病の改善や予防にAIを活用する取り組みだ。

 トヨタ自動車や野村証券、コニカミノルタ、埼玉県の自治体などを含む八つの団体がこの事業に参加する。9月から、これらの企業や団体に所属する糖尿病軽症者が歩数や体重、血圧などを毎日測るほか、糖尿病の指標となる健康データを毎月集める。

 こうして生活習慣が症状改善にどのくらい寄与したかが時系列で分かるデータセットを集め、AIの学習に生かす。最終的に糖尿病のタイプや個人の生活習慣の傾向を考慮し、無理なく続けられる生活習慣の改善案を提示できるようなAIの実現を目指す。

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最終更新:8月18日(木)16時45分

日刊工業新聞電子版