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[ニュース分析]韓国入国外交官では最高位級、「エリート脱北者」異例の発表

ハンギョレ新聞 8月18日(木)7時15分配信

韓国政府、テ・ヨンホ駐英北朝鮮公使の入国を緊急公開

「金正恩体制の限界への認識が拡散」 
統一部報道官「北朝鮮制裁の效果」強調する意図も 

北朝鮮消息筋「テ公使の平壌復帰を控え、金銭トラブルのため脱北という説」

 韓国政府は17日夕方、英国駐在北朝鮮大使館のテ・ヨンホ公使の脱北の事実を緊急公開したのは「北朝鮮体制の動揺説」を後押ししようとする意図が強い。 政府は4月初め、中国浙江省の北朝鮮レストランの支配人・従業員のいわゆる「集団脱北」を異例に公開した後、北朝鮮でエリートや上流層の脱北が続いているという主張を続けてきた。 特に「北朝鮮の中心階層の間で金正恩(キム・ジョンウン)体制はこれ以上希望がない、また、北朝鮮体制がすでに限界がきているいう認識が広がる」というこの日の統一部のチョン・ジュン報道官の発言が政府の意図をはっきり示している。チョン報道官は「支配階層の内部結束が弱体化しているのではないかという判断ができるようだ」と述べた。

■対北朝鮮制裁→体制の動揺→脱北増加?
 実際に妻や子どもとともに韓国に入国したテ公使は、これまで韓国内に公開で入国した脱北外交官のうち最高位級に挙げられる。テ公使は、規模は大きくないとはいえ駐英北朝鮮大使館ではヒョン・ハクボン大使に次ぐ序列2位だ。1997年、当時駐エジプト北朝鮮大使館のチョン・スンイル大使が米国に亡命し、1990年代中・後半には中東やアフリカ地域から国内に入国した北朝鮮の外交官らがいた。
政府は特に脱北者の増加が対北朝鮮制裁の効果という側面を強調する。政府当局者は「今年初め、北朝鮮の4回目の核実験と長距離ミサイル発射後、国連安全保障理事会の強力な対北朝鮮制裁が実施され、海外勤務の北朝鮮エリート層が動揺していると聞いている」と語った。

 ただし、国連安保理の対北朝鮮制裁や各国政府の独自の制裁が直接脱北と関連しているという解釈に対して慎重な意見も多い。ある脱北者団体の関係者は「脱北者の数字が増えるのは、政府がいくらでも調整できる。脱北者たちは一部の東南アジアの国々で待機中であり、普通の手続きでは早くても1カ月ほどかかるが、大使館が手続きを早めれば数字を増やすことは難しいことではない」と話した。同関係者は特に「この脱北者たちは北朝鮮から少なくとも昨年か一昨年に出てきた場合が多いのに、制裁の効果だとは言い難い」と語った。

■個人的脱出の理由もあるよう
 北朝鮮で最高位級のエリートとされるテ公使の場合も、制裁や体制とは無関係な亡命ともいえるという指摘もある。テ公使は今年の夏に任期を終え平壌(ピョンヤン)に復帰する予定だったと伝えられている。北朝鮮事情に詳しい消息筋は「10年間駐英北朝鮮大使館で働いてきたテ公使は会計や物資購入の担当だったが、近く平壌に戻らなければならない状況だった。後任に引き継ぎをするにあたり、一部金銭トラブルが起きたというのが脱北へと繋がったものと聞いている」と話した。この消息筋は「テ公使はこのような切迫した状況で相当な金額を持って逃げたと聞く。北朝鮮大使館は金融制裁のために銀行口座を使きた用できないため、主に現金を持っているためよくトラブルが起こる」と伝えた。

 専門家らは「子どもの問題」がテ公使の脱北の決心に重大な影響を与えたと見ている。テ公使は少なくとも2人の息子がいると伝えられているが、長男は英国の大学で公共保健に関する経済学の学位を持っていると英国のBBC放送が報道した。下の息子は公立学校に通いテニスクラブで熱心に活動したとBBCは伝えた。下の息子と同じ学校に通っているルイス・フライヤー君(19)は下の息子が先月中旬ごろ消息が途絶えたとガーディアンに話した。 下の息子はデンマークで生まれ、北朝鮮に帰った後4年前に家族とともにイギリスに来、インペリアル・カレッジに進学し数学とコンピューター工学を専攻する予定だったとフライヤー君は伝えた。ある脱北問題専門家は「テ公使の息子たちは英国など外国で10年間暮らしたので、平壌に帰ることに難色を示したのかもしれない」と指摘した。チョン報道官もこの日の緊急ブリーフィングで「子どもと将来の問題など」をテ公使の脱北理由に挙げた。

■テ・ヨンホ公使とは誰か
 テ公使の韓国行きが北朝鮮に与える衝撃は少なくないものと見られる。公使はデンマークで留学し、1993年にデンマーク大使館から始まりスウェーデン、イギリスなどで外交官として勤務するなど、北朝鮮外務省で指折りの西欧専門家として知られた。英国では北朝鮮政権と金正恩労働党委員長兼国務委員長が、英国で正しく報道されず誤解されていると主張する役割がテ公使の主な任務だったとBBC放送は伝えた。彼の主な任務は会計と物資購入のほかに領事・公報分野だったとされている。テ公使は昨年、金正恩委員長の実兄の金正哲(キム・ジョンチョル)がエリック・クラプトンの公演を見るために秘密裡に英国を訪問しロンドンの公演会場を訪れた際にも側で補佐をした。

キム・ジンチョル、チョ・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

最終更新:8月18日(木)7時15分

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