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【来日公演直前インタビュー】「最先端ではないし、過去の年代をオマージュした音楽でもない―“クラシック”なんだ」マックスウェルが語る最新作、念願の日本公演、プリンス

Billboard Japan 8月18日(木)18時35分配信

 7年ぶりの新作『ブラック“サマーズ”ナイト』を引っさげ、2016年8月19日に初となる来日公演を行うマックスウェル。1stアルバム『アーバン・ハング・スイート』リリースから20周年を迎える記念すべき年となる2016年。7月には、“ブラックサマーズナイト”3部作の第2作目『ブラック“サマーズ”ナイト』を発表し、セクシーさとエレガントさを兼ね揃えた、色褪せることのない珠玉アダルト・アーバン・ミュージックでリスナーを魅了した。

 40代に突入し、さらに円熟味と色気を増すネオ・ソウル界の“ブレない”男に初来日公演への意気込みや1stアルバム『アーバン・ハング・スイート』リリースから20年目のアーティストとしての想いをメール・インタビューで訊いてみた。

―『ブラック“サマーズ”ナイト』をひっさげたUSツアーが終わったばかりですが、手ごたえはいかがでしたか?
マックスウェル:これまで訪れたこのとない素晴らしい場所にも行けて、アメイジングな気分だ。ツアーするのは久しぶりだから、こうやっていい反響があると励みになるし、僕のことを再び迎え入れてくれていることに感謝しているよ。

―8月19日には、日本で初めて公演を行いますが、どんなショーになりますか?公演のバンド・メンバーについても教えてください。
マックスウェル:メンバーは、キーヨン・ハロルド(トランペット)、デリック・ホッジ(ベース)、ダリル・ハウエル(ドラム)、シェドリック・ミッチェル(オルガン)、僕が19歳の頃からのコラボレーターであるホッド・デイヴィッド、トラヴィス・セイルズ(キーボード)、ラティナ・ウェッブ(BGV)、ケネス・ウェイラム(サックス)だ。彼らのようなバンド・メンバーが参加してくれてラッキーだよ。ショーに関しては…何よりも再び東京に戻ってこれた喜びが感じられると思うよ。戻ってこれて、本当にエキサイトしているんだ。最後に東京を訪れたのが1999年は、取材を受けたり、素晴らしい体験をたくさんしたけれど、ライブをする機会がなかった。だから、日本でライブをすることは長い間やりたいことのリストにあったんだ。

―他に、楽しみにしていることはありますか?
マックスウェル:友人が何人か日本に住んでいるから、彼らに会うのが楽しみだ。あとは、日本の建築物やアートを見たり、美味しいものを食べること。それと、“響”ウィスキーを飲むのことを楽しみにしている。

―今回のショーの構想を練る際に、重点をおいた部分はありますか?
マックスウェル:これまでやってきたことに、新作の楽曲を加えたという感じだな。でもあまり早まりたくはなかった。最新作は、多少聴きこみたいと思えるような作品だからね。デビュー作から最新作まで万遍なく網羅していて、ライブの構成もそんな感じだから、みんなに楽しんでもらえたらいいね。

―以前<MTV Unplugged>の歴史的セッションで披露したケイト・ブッシュの「This Woman’s Work」を、プリンスへのトリビュートとしてライブでカヴァーしているそうですが、なぜこの曲を選んだのですか?
マックスウェル:詞がピッタリだからだよ。誰かが居なくなってしまって、それを忘れようとする…涙が出そうなんだけれど、それをこらえなければならない。そんな気持ちにさせてくれる曲だ。先日、プリンスのトリビュートとして<BET Awards>で「Nothing Compares 2 U」を披露したけれど、その時、彼がもうこの世にいないということを反映するために少々詞を変えることを快くも許された。プリンスは、僕に多大な影響を与えた人物で、彼が亡くなってしまったって、未だに信じられない。ステージに上がる前には、必ず彼の曲を聴いているよ。自分の中で、ついこの間起こったことのような新鮮さがまだあるんだ。なぜこうなってしまったのか、僕には分からないけれど、これが神の計画だったんだろうね。今年亡くなったばかりだし、ショーの中で彼にトリビュートしないなんて考えられない。音楽のみならず、人としても、僕にとって大きな意味を持つ人物で、世界中の人々をインスパイアしたから。

―では、プリンスから学んだ、最大の教訓とは?
マックスウェル:クリエイティヴ面においての夢を追うこと。自分の直観を信じること。自分らしくあること。もうこれ以上できない、と思ってもさらに突き進むこと。クリエイティヴな人間、そしてミュージシャンとして、これまで怖くて実行したり、挑戦できなかったことはたくさんあるけれど、彼がいなくなってしまったことで、より野心的になりたいという気持ちが芽生えてきたね。

―幼い頃、ライブ・パフォーマーとして尊敬していたアーティストは?
マックスウェル:もちろんプリンス。新曲にもかかわらず、手のジェスチャーだけで、どの曲か即座にわかるんだ。マーヴィン・ゲイも重要。ジェイムス・ブラウンは、僕の人生に大きな影響を及ぼした。シャーデーもそうだね。様々な、幅広いアーティストたちに影響を受けてきた。でも、最終的には、観客へポジティブなエネルギーを与え、ステージに立つことに喜びを感じ、観客の存在にリスペクトを示し、まるで観客一人一人に語りかけているような気分にさせてくれるアーティスト―そういったパフォーマーに可能な限り近づこうと努力しているよ。

―それでは“ブラックサマーズナイト”3部作を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
マックスウェル:昔から3部作を制作したかった。<コロンビア>と契約した、デビュー当時からの夢だったんだよ。契約上、これらが最後の3枚の作品だから、3部作にしようと思ったんだ。

有名人であることやアルバムをリリースすること以外のことにも興味をひかれるから、思ったよりも時間がかかってしまっている。他人の意見や批判にさらされ、ストレスが溜まることもある。そんな風に注目を浴びることに対する心構えができない時もあるから、先延ばしにしてしまう部分も多少あるんだ。けれど、自分が作りたかった作品を発表できた、と感じてる。あと1年制作期間を与えられたら、まだ作業をしてるかもしれないけど、今年リリースする必然性があったんだ。デビュー20周年だからとか、プリンスが亡くなったから、とかそういう理由ではない。既に作業に取り掛かっていたわけだし、ツアーの予定も立てていた。リリースするにふさわしい時だったんだ。

―時間がかかったのは、マックスウェル自身の完璧主義な面もあると思うのですが、スタジオで作業している際に自分でもちょっとやりすぎかな、と感じることはありますか?
マックスウェル:一番の肝は、まずスタジオに足を踏み入れることなんだ。これまで作ってきた作品以上のものをつくれるか、という不安に駆られる。常に新しいことをやり続けたいから、サウンド面において意図的に変化をつけることもある。でも、そうすると前作とはまったく違うと批判される。同じことを何度も繰り返したくない、常に前進し、変化し続けたいんだ。

―これまで、ごく数人の気の知れたコラボレーターたちとアルバム制作を行っていますが、そんな中で新鮮味はどのように保っているのですか?
マックスウェル:多分、アルバム・リリースの間にとる時間が、プロセスをエキサイティングで、新鮮にしてくれているんだと思う。ステージで歌うミュージシャンということを完全に忘れて、人生をちゃんと謳歌してる。普通の人と同じように。自分が有名だとは思っていないゆえに、セレブ的な生活とは無縁な、曲作りに活かせるような経験をすることが可能なんだ。

―『ブラック“サマーズ”ナイト』にはワンテイクでレコーディングされた楽曲が2曲あるそうですが、即興性と“生感”という点においてどのような効果がありました。
マックスウェル:この試みは、天才的なスチュアート・マシューマンと彼が僕のことをどれだけよく知ってるかへの“トリビュート”なんだ。実はその2曲は彼の曲で、ちゃんと聴いたことがなかったんだけど、そのままスタジオに入って完成させたんだ。前作であまり一緒に作業することができなかったから、その時間を取り戻したい部分もあったし。彼のことを心から敬愛している。デビュー作を制作した時に、親友、メンターとして、素晴らしい仕事をしてくれたからね。

―最新作には、ロバート・グラスパーも参加したそうですが、彼との仕事はいかがでしたか?
マックスウェル:彼は素晴らしいよ。ミュージシャンとしてはもちろんだけど、最高にファニーなんだ。彼と仕事をするといつも笑ってばかりだ。まさに天才…今となっては誰もが知ってることだけど。音楽の“パレット”も豊かで、僕らでは考えつかないようなコード進行を提供してくれた。彼と仕事するのは、まるで夢のようで、実は次回作にも参加してもらっているよ。

―ちなみに、作品のアウトロ的な「Night」の波の音はどこで録音したものなのですか?
マックスウェル:マイアミだよ。2014年に、アルバムの大部分を作った場所でもある。

―気になる3部作のフィナーレとなる次回作について教えてください。米大統領選を控えていることもあり、多少政治的な内容になる可能性もあるでしょうか?
マックスウェル:そうだね、やや政治的な内容になると思うよ。僕は宣教師ではないし、今の政治的状況について個々に自分の意見を持ったらいいと思うけれど、そうだな…TVシリーズにおいて反響のいいシーズンの最終回の内容を教えちゃうみたいだから、詳しくは言えないけど。でも、作品についてエキサイトしているし、できるだけ早くリリースしたいと思ってる。みんなに「また7年後になるんでしょ?」って言われてるのはわかってるよ(笑)。でも、ビッグ・サプライズを楽しみにしてて!

―曲を通じて、自分の感情を包み隠さず表現し続けていますが、人間のもろさや無防備さは、いいソングライティングに不可欠だと感じますか?特に現在のR&Bにおいては、失われつつある美学のような気がします。
マックスウェル:あぁ、自意識が高い人間は大勢いて、そうならなきゃいけない理由も理解できる。でも、マーヴィン・ゲイ、シャーデー、ビリー・ホリデイの曲を聴くと、謙虚さがあって、心惹かれるものがある。そっと扉を閉じて、自分が恐れるものを解き放つのは、ある意味傲慢だと思うね。

―デビュー作『アーバン・ハング・スイート』のリリースから20年が経ちますが、これまでのキャリアにおいて特に誇りに思っていることはありますか?
マックスウェル:この業界で20年間活動できたこと―クリエイティヴ面で実験を重ね続けながら、このようなキャリアを辿ってこれたことじゃないかな。

―こんなにも長く活動を続けられた理由や秘訣は?
マックスウェル:一緒に仕事をしてきた人々への忠誠心。世界一素晴らしいバンドに恵まれていることもとても重要だ。そして、人々の心の琴線に触れるような音楽を作ることを常に心がけていること。最先端ではないし、過去の年代をオマージュした音楽でもない―“クラシック”なんだ。そこがポイントだと思うよ。でも結局のところ、聴き手のおかげなんだ。こんなにもサポートしてもらって、感謝しきれないよ。

―SNSも頻繁に使ってファンと交流しているようですが、ツールとしての利便性とアーティストの神秘性との関係についてどのように考えますか?
マックスウェル:長らく活動していなかったから、7年間の空白を埋める必要があるんじゃないか、と思って。作品をリリースして、ツアーをしてるって。インターネットの普及によって、アーティストの神秘性って、今ではほぼ無いに等しいんじゃないかな。

―最近よく聴いているアーティストは?
マックスウェル:DVSN、ファンテイジア、昔のプリンスの作品、あとはマックスウェルの新作だ!

―では最後に、 “究極の夏の1曲”を教えてください。
マックスウェル:スロウな曲なら「Always and Forever」、アップテンポな曲ならマーヴィン・ゲイの「Got to Give It Up」だな。

◎公演情報
【MAXWELL
SUMMERS' TOUR 2016 #MST16】
東京 2016年8月19日(金) 新木場STUDIO COAST
OPEN 18:00 / START 19:00
当日券:1Fスタンディング 9,000円(ドリンク代別) ※会場当日券売場にて18時より販売
※未就学児入場不可
INFO: Creativeman http://www.creativeman.co.jp

◎リリース情報
『ブラック“サマーズ”ナイト』
マックスウェル
2016/7/6 RELEASE
2,400円(plus tax)

最終更新:8月18日(木)18時35分

Billboard Japan

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。