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「仕事が遅れがちな人」が、やっていないこと

ITmedia ビジネスオンライン 8月19日(金)6時40分配信

 仕事のやり直し、差し戻しを防ぐには、どうすればいいのか。準備段階での「結果を出す"下ごしらえ"」について、たくさんの取材経験から考えてみる連載第4回。

【スケジュールをつくらなければいけない】

 第1回、第2回、第3回では、それぞれ「目的」「ターゲット」「アウトプットイメージ」というキーワードを掲げたが、第4回のキーワードは「プロセス」だ。

 どうやって、その仕事を最後まで完遂していくか、効率的にアウトプットに導く「段取り・シナリオ」を考えていく、ということである。まずは、プロセスをしっかり考えてから、仕事に取り組まないといけない。

 ところが、これが往々にして飛ばされることがある。なぜなら「とりあえずやってみよう」と仕事に取りかかってしまうからだ。これは、やり直しが前提のやり方である。うまくいく人たちは、そうはしない。しっかりと準備をしているのである。

 例えば、資料づくりを頼まれた。では、どのように、その資料づくりをアウトプットまでつなげていくか。そこに行き着くまでに、何を、どんな順番で、どんなふうに進めていくのか、考える必要がある。

 しかも、仕事には通常、締め切りがある。その締め切りに間に合うよう、最も効率的にアウトプットが出せる流れが求められる。

 アウトプットの期限から逆算し、やるべきことを整理し、それが最もスピーディーにできる方法を考えていく、ということだ。

 これができていなければ、行き当たりばったりで情報収集はしてみたものの、無駄なものまで集めてしまった、なんてことにもなりかねない。情報収集に時間がかかり過ぎ、整理する時間が足りなかった、などということも起こり得る。

●何が必要になってくるかを洗い出す

 仕事が大きなものになればなるほど、プロセスをつくる重要性は増していく。これがうまくできていないと、うまくアウトプットに着地できないのだ。

 まずやるべきは、アウトプットをつくるために、何が必要になってくるかを洗い出すことである。やるべき作業に分解し、プロセスをつくるのだ。

 資料づくりなら、

・資料をつくるために何を調べる必要があるのか
・それはどこで調べられるのか
・そのためには、どのくらい時間がかかるのか
・最終的な提出書類の体裁にするには、どのくらい時間がかかりそうか

 など、やらなければいけないことを一つひとつリストアップしていく。そしてここで大事になるのが、頭の中でざっくりとプロセスをイメージするのではなく、文字にして紙に落とし込んでみることだ。

 わざわざ紙に書く必要などない、頭の中で分かっていればいいと考えてしまいがちだが、それをやると、どうしてもヌケ、モレが出てしまうことが多い。書き出すことは重要だ。

 ある著名なコンサルタントが取材でこんなことを語っていた。中途入社で一般企業から転職したとき、彼はコンサルタントの仕事に戸惑うことになった。それまで勤めていた企業とは、仕事のやり方もスピードもまったく違っていたからだ。

 当時すでに30歳を過ぎていたが、彼は決意する。それは、関わる仕事のすべてについて、面倒でもそのプロセスをきちんと文字に落としていくことだった。

 結果的に彼は、短期間でコンサルタントとしての成長に成功することになる。最大の理由は、「手間はかかったけれど、すべての仕事を文字で書き出していったことだった」と語っていた。

 通常、プロセスは、取りかかる前にやるべきことを洗い出すが、彼は仕事を終えた後にも結果的にどんなプロセスで仕事を進めたのかを書き出していった。

・それぞれの作業にどのくらいの時間がかかったか
・事前に想定していたプロセスで足りないものは何だったか
・事前のイメージと実際の仕事では、どこにズレが発生しやすいのか

 面倒でもこうしたプロセスの書き出しをしていったことで、やらなければいけないことが可視化されていったのだ。

 そして次に似たような仕事が来たとき、過去にしっかり書き出しておいたものに立ち戻ることで、一気にスピードアップを図ることができたのである。

●人間は集中できず、短期記憶が苦手

 ある大学教授が、取材でこんなことを語っていた。そもそも人間は忘れてしまう生き物だ、ということだ。短期記憶には、すこぶる弱い。だから、ちょっと前に考えていたことすらも忘れてしまう。

 これには実は、太古の昔からの動物としての本能的な理由がある。脳のスペースを、いつも空けておくということだ。なぜなら、脳がいつも別のことを考えていたりすると、他の動物に簡単に襲われてしまったりするからである。

 彼は言っていた。そもそも人間は、集中もできない生き物。なぜなら、集中していると、昔は簡単に命を落としてしまったからだ、と。集中できないのも、短期記憶が苦手なのも、仕方がないのである。

 では、どうするのかというと、記憶装置を外部に持つことだ。その最も簡単な方法が、メモをとることなのである。

 プロセスについても、頭の中で考えただけでは、忘れてしまう。アウトプットのために必要なプロセスは書く。簡単なメモ書きでもいいので、可視化して眺めてみる。

 その上で過不足がないか、しっかり確認する。ここで手抜きをしたり、ヌケ、モレが出ると、結果的に思うようなアウトプットは出せなくなる。そして、書き出した経験は、次にも生きてくるのである。

 一つひとつの仕事をきっちりとこなしていくと、やがていろいろな仕事の共通項が見えてくるようになる。ポイントがつかめてくるようになる。

 先のコンサルタントは、これを「抽象化ができるようになっていく」と語っていた。抽象化ができるようになると、まったく違う種類の仕事でも、抽象化された過去の仕事の経験が生かせるようになっていく。そうすることで、仕事の幅を一気に広げていくことができるのである。

 やったことがない仕事でも、果敢に挑んで成果に結びつけてしまえる人は、この抽象化ができている人なのだ。それは、一つひとつの仕事をきっちりこなし、プロセスを可視化するという丁寧な仕事を積み重ねることで可能になるのである。

●スケジュールをつくる

 プロセスではもうひとつ、やらなければいけない重要なことがある。時間の見積もりを考えること、すなわちスケジュールをつくることだ。

 それぞれのプロセスは、どのくらいの時間がかかるのか。どのプロセスが、最も手間がかかるのか、ここで見極める。

 甘い時間見積もりをつくってしまうと、最終的に時間が足りなかった、などということになりかねない。正しい時間見積もりをしていないと、前半に時間を掛けすぎて、後半に時間が足りなくなってしまった、などということにもなりかねない。

 ある経営者が、取材で語っていた。プロセスをパッと見て、即座にどのくらいの時間がかかるのかを判断することは、仕事を進める上で最も難しいことだ、と。やったことのない仕事は、どのくらいの時間がかかるのか、分からないからである。

 ベテランが、新人と違ってテキパキ仕事を進めていけるのは、仕事のスキルが高まっていることのほかに、時間見積もりが過去の経験からすぐにできるからだ。

 その意味で、経験を蓄積することは極めて重要であり、経験を次に生かしていくプロセスの可視化が、ここでも大きな意味を持ってくる。

●仕事の発注者に進ちょくを報告

 経営者はこうも言っていた。経験が浅いうちは、プロセスにどのくらいの時間がかかるのか、周囲の先輩や上司に聞いてみるといい、と。

 ただし、そのときは、プロセスの分解をしっかり自分でやっておくことが大切だ。その上で、自分なりに時間見積もりを立ててから相談してみる。そうすることで、実際の経験者との考え方の違いを把握できるのである。

 そして、最もやってはいけないのは、定められた時間に遅れてしまうこと。締め切りに間に合わなくなってしまうことだ。

 そのためにも必要になるのが、仕事の発注者に進ちょくを報告することである。仕事を出した側の立場に立ってみるといい。思い通りの仕事が進んでいるか、常に心配なのだ。

 「打ち合わせはしたけれど、思うような方向でアウトプットは出てくるのか」

 「今はどこまで仕事は進んでいるだろう」

 「本当に締め切り通りに上がってくるだろうか」

 そんなふうに考えていてもおかしくない。だから、進ちょく報告が意味を持つ。「今このあたりまで来ています」「どのくらいでできそうです」と報告する。少し心配になったら、相談をしてもいい。

 そしてこの進ちょく確認も、仕事のプロセスに組み込む必要があるのだ。

(上阪徹)

最終更新:8月19日(金)6時40分

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