ここから本文です

島根のIターンエンジニアが実践する屋外開発と開発合宿

@IT 8月19日(金)11時54分配信

 はじめまして! 「モンスター・ラボ」島根開発拠点のハスミです。

 私は2014年7月に島根県松江市へIターンしたエンジニアです。今回から3回に分けて、極めて個人的なIターンの理想と現実の体験をお話しします。個人的な体験こそ、U&Iターンに興味がある多くのエンジニアにとって参考になるだろうと考えています。

【大根島開発、松江城山開発、お勤め開発などの画像】

●自己紹介

 あらためまして、羽角均(ハスミヒトシ)と申します。社内では若手エンジニアにも「ハスミン」と呼ばれています。大学で建築を学び、建設専門新聞、いわゆる業界紙を作る会社に就職しました。ここで新聞記事データベースとWebサイトメンテナンスに業務時間の半分を費やし、残り半分で建築関連書籍の編集業務に携わっていました。たまに新聞記事を書きました。

 社内のデータベースメンテナンスアプリケーションがあまりにも使いづらく、「こんなものオレが作り直してやる」と大風呂敷を広げたのが、エンジニアとしての小さな1歩でした。

 当時、ボーランドの「Delphi5」というWindowsアプリ統合開発環境が6万円ぐらいだったと記憶しています。「これを買ってください」という稟議書を書き、ブログラミング言語「Object Pascal」というおもちゃを手に入れました。通常業務の傍ら、1カ月くらいで社内のデータベースを作り直し、CRUDやバッチ処理を統合した業務アプリケーションを作りました。

 他にも記事データベースをWebで閲覧できる有料システムなども作りました。2000年代の最初の数年間にPHPやMySQL(バージョンはともに3.xか4.xでした)のオープンソースミドルウェアを業務・商用システムに導入できたのは、その後の私の人生にとって幸運でした(この活動が会社から評価されていたかどうかは、よく分かりません)。

 10年ほど上記の会社に勤め、「よっしゃ、エンジニアとして生きていこう」と思い立って、開発企業に転職しました。それまではエンジニアのまねごとをしていただけで、本格的なキャリアはここからスタートしたのです。

●そして松江へ

 島根県の県庁所在地であり、全国に5つしかない国宝天守のうちの1つを頂く城下町、松江市。ニッポンの白地図を前にして、松江市の場所を正確に指せる人は極めて少ないでしょう。さあすぐに地図を検索してください。「検索してください」と言われる前に既に検索していた人には、エンジニアの素養があります。さらに精進してください。

 2014年当時東京に住んでいた私は、フリーランスのサーバサイドエンジニアとしてモンスター・ラボを手伝うようになっていました。そこで「どうやらモンラボが島根県にオフィスを作るらしい」というウワサを聞き、ビビッときました。

 松江についての私の知識は以下のような程度でした。

 Rubyの生まれ故郷(?)である。城下町である。まあまあ近くに出雲大社がある。海産物がおいしそう。酒もありそう。

 千葉県生まれの私にとって、島根県はほとんど海外です。普通に人生を過ごしていたらあまりにも縁がありません。そんなところに暮らしてRails中心のエンジニアリング生活を送れるとは何て素晴らしいんだと考え、後に島根開発拠点の代表になる同僚の山口に「おいらも松江に行きたいです!」といったところ、「おお、いいんじゃね」と返事をもらい、2014年7月に開設されたばかりの島根開発拠点にやってきました。

●出勤リモートワーク

 2016年7月現在、モンスター・ラボ島根開発拠点はこんな組織です。

- 4人のエンジニアが
- Webとスマホネイティブの技術を中心に
- 業務システムやB2Cサービスなどを開発しています

 島根で私たちがどのように仕事をしているかを紹介しましょう。

 多くの場合、島根のメンバーの他に、東京の本社にもエンジニアやディレクターなどの開発メンバーがいます。さらにベトナムなど海外のグループ/パートナー企業に開発メンバーがいることもあります。

 コミュニケーションツールは「Slack」です。クライアントの多くは東京などにいるので、彼らがSlackチームに参加している案件もあります。文字やファイルのやりとりだけでは意図が伝わらないことが多いので、「appear.in」などのビデオ通話サービスを1日に何度も起動します。これにもクライアントを巻き込みます。

 ソース管理は「GitHub」、ファイル共有は「Googleドライブ」、サーバは「AWS(Amazon Web Services)」などのクラウドです。どこにいても社内にいるのと同様の環境で安全かつ効率的に仕事ができます。プリンタはほとんど不要です。これは素晴らしいことです。インターネットと電源さえあれば仕事になります。この事実は東京のSIerに勤めるエンジニアたちにも知識としては知られているでしょう。

 しかし、知識として知ることと実際に体験することの間には大きな溝があります。あるんじゃないかと思っています。

 私たちの仕事のスタイルは、今のところリモートワークに近いです。在宅ではなく事務所に出勤しますが、在宅でもほとんど変わらずにできることを、たまたま事務所でやっているだけです。しかし在宅で、全くの独りきりで仕事をし続けるのはしんどいと思いますので、松江のオフィスに数名のエンジニアが集まって働くのはちょうどいい環境です。

●ボクたちの屋外開発

 島根にきたのが2014年7月。2カ月ほど上述のような「出勤リモートワーク」をしたところ、「事務所を飛び出すべきだ!」と心の声が叫びました。

 冒頭の「城山花見開発」は、私たちが実践した屋外開発の一例です。この年の初秋から試みた他の屋外開発風景をご覧ください。

 これらはちょっとしたトレーニングです。「ITエンジニアならどこでも働けるよね」と言いつつ、実際に「どこでも働いている」人はどのぐらいいらっしゃるでしょうか? 私たちはやってみました。

 実行に移してみると、ちゃんとしたデスクがないから肩がこる、日が陰ると寒いのに午後はやたらと暑い、日光がまぶしくて画面が見えづらい、トイレが微妙に遠いなどの不便はありました。でも苦痛というほどではありません。何とかなります。午後に給電が必要になるという課題は悩ましいところではありますが、私たちはオフィスを捨てても闘えるチームになりました。

 現実問題として、東京のITエンジニアが気軽に屋外開発をするのは難しいでしょう。なぜなら、大都市には「みんなが大都市に(そしてオフィスに)集中していることが前提のワークフロー」が出来上がっているからです。モンスター・ラボ島根開発拠点は、開設されたばかりだったこともあって、そんな既成概念がありません。

 松江市はいわゆるコンパクトシティであり、ブブーンとクルマを飛ばせば簡単に屋外開発現場へアクセスできます。そこは神秘的なくらい人が少なく、カラスもいませんし、たまに通りかかるおじさんが「何やってるの?」と質問してくるくらいです。「プログラミングです」「へぇ、何だそれ」「こう見えても仕事です」「そっかぁ。まあがんばれや」という程度なので、開発に集中できます。

 カラスがいない、というのを冗談だと思った方がいるかもしれません。決してそうではありません。松江にはカラスを追い立てるトンビが住んでおり、既述のように人口が少なく街がきれいなため、本当にカラスが少ないのです。カラスが近寄ってこない屋外活動は気持ちのいいものです。

●開発合宿と行政サポート

 そんな私たちの野外活動を知った松江市の職員さんから「開発合宿」のお誘いを頂きました。開発合宿ならみなさんもよくご存じしょう。日本で最初にこれをやったのは、かの伊藤直也さんだそうです。ご本人がおっしゃっていたので間違いありません。

 松江市は(そして松江市以外の島根県内自治体の幾つかも)、IT企業の開発合宿宿泊費などをサポートしてくれます。補助の内容は年度ごとに変化しますし、補助を受けられる条件も異なるため、詳しくは各自治体にお問い合わせください。

 ともかく私たちは、美保関(みほのせき)というところで開発合宿を開きました。美保関がどこにあるかはググってください。美保関の日本海側にある民宿を借りたのですが、もう何ていうかジオパークです。5月の渡り鳥の声が響く神がかった環境で1日を過ごしました。

 松江市がデスクとチェアと高速インターネット回線と無線LANを用意してくれ、電源もあるので、快適さはいつものオフィスと変わりません。それどころか、島根開発拠点代表の山口によると「開発効率は3倍だった」とのことです。

●暮らしをデザインする

 いかがでしょうか。私たちがどのように仕事のスタイルをデザインしてきたか、その一端をご紹介しました。一端です。ぜんぶ見たい方は島根に遊びに来てください。

 次回は、仕事以外の残り半分、すなわち住人としてのIターンライフについてお届けします。東京から地方都市へ移住して、環境の変化を暮らしのデザインにどうつなげられたのか、何ができなかったのか、をお伝えします。お楽しみに。

最終更新:8月19日(金)11時54分

@IT

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

暗闇で光るサメと驚くほど美しい海洋生物たち
波のほんの数メートル下で、海洋生物学者であり、ナショナルジオグラフィックのエクスプローラーかつ写真家のデビッド・グルーバーは、素晴らしいものを発見しました。海の薄暗い青い光の中で様々な色の蛍光を発する驚くべき新しい海洋生物たちです。彼と一緒に生体蛍光のサメ、タツノオトシゴ、ウミガメ、その他の海洋生物を探し求める旅に出て、この光る生物たちがどのように私たちの脳への新たな理解を明らかにしたのかを探りましょう。[new]