ここから本文です

【インタビュー】サバトン「日本はコントラストが素晴らしい」

BARKS 8月22日(月)19時47分配信

スウェーデンの誇る“戦記メタル”の巨星サバトンのニュー・アルバム『ザ・ラスト・スタンド』が、8月19日に世界同時発売となった。敵軍に数で圧倒されながらも勇気と誇りを武器に立ち向かっていく戦士たちのロマンを描いたこのアルバムは、ドラマチックでパワフルなメタル・サウンドに乗せ、日本人の心の琴線に触れるポイントを心得たものだ。しかもアルバムには、西郷隆盛が明治政府に叛旗を翻した1877年の西南戦争をテーマにした「SHIROYAMA」も収録されている。

◆サバトン画像

2015年10月に<ラウド・パーク15>で初来日を果たし、日本のメタル・ファンに鮮烈なインパクトを残したサバトンだが、バンドにとっても日本初上陸は思い出深いものだったようだ。シンガーのヨアキム・ブロデーンはインタビュアーの名前が“ヤマザキ”であると知ると、「君の名前はウイスキーだね?日本で飲んだよマイフレンド!」と笑う。ヨアキムに『ザ・ラスト・スタンド』について語ってもらおう。

──『ザ・ラスト・スタンド』はどんなアルバムでしょうか?

ヨアキム・ブロデーン:サバトン流のメタル・アルバムだよ。そうとしか言えない。音楽についていえば、何もない状態でスタジオに入る。音楽に導かれていくんだ。初期からそういうポリシーなんだよ。新メンバーが加入すると「ハードな路線にする?ソフトにする?」「速くする?遅くする?」と訊いてきたりする。それに対して「どちらでもない。よりベターな路線にする」と答えるんだ。それが一番難しいんだけどね。大半の場合、曲を先に書く。それに歌詞のテーマを当てはめて、仕上げていくんだ。

──アルバムの歌詞のテーマについて教えて下さい。

ヨアキム:全曲を貫くテーマが欲しかった。いわゆるコンセプト・アルバムではないけど、大きな絵を描きたかったんだ。実はスタジオに入る1ヶ月前まで、『ザ・ラスト・スタンド』ではない別のテーマにしようと考えていた。それも悪くはなかったけど、この音楽は“数ではるかに勝る大軍を敵に回した戦士たち”というテーマがピッタリだと思った。数年前からこの題材は頭にあったし、ぜひやりたかったんだ。

──当初はどんなテーマにするつもりだったのですか?

ヨアキム:それは言えないよ。今回ボツにしたテーマも気に入っていたし、次回そっちを使うかも知れないからね(笑)。それにファンによってはそっちのテーマを気に入って、「なんで『ザ・ラスト・スタンド』にしたんだよ!」って怒るかも知れないだろ?

──サバトンは“戦争”を歌詞のテーマにしてきましたが、重視するポイントは何でしょうか?

ヨアキム:3~5分のヘヴィ・メタル・ソングで数十年にわたる戦争を描き切るのは難しいんだ。ひとつの出来事や1人の人物にズームインすることになるか、その逆にズームアウトして時代背景そのものを描くか…どちらかを選択することになる。前作『ヒーローズ』(2014)では曲ごとに“個人”に焦点を当てた。『ザ・ラスト・スタンド』ではズームアウトして、また異なった視点から戦場を描いたんだ。時代も「スパルタ」の紀元前のテルモピュライの戦いから「ヒル3234」の20世紀のアフガン戦争まで幅広いものだし、地域もヨーロッパやアメリカだけでなく、日本やアフリカにまで題材にしているよ。苦労したけど、楽しい経験だった。

──どんなところに苦労しましたか?

ヨアキム:第2次世界大戦は資料や本がたくさんあって、幾らでも掘り下げることが可能で、当時を生きた人もまだ存命だったりする。でも情報の取捨選択が難しく、どの部分を使うかで頭を悩ますことになるんだ。その一方で古代の戦争だと一般の兵士は読み書きができなかったし、彼らの行動や考えは残されていない。我々に残されているのは国王や将軍などの記録だけだ。ディテールが不明だから、我々がよりドラマチックに描写する余地が残されている。「天国への階段を護る」とか、比喩も使いやすいんだ。

──史実の再現と、アーティストとしての創造性のバランスは、どのように取っていますか?

ヨアキム:それは歌詞を書くにあたって日々直面する戦いだよ、マイフレンド。もちろん可能な限り、史実に忠実でありたい。兵士の数とかを間違えてはいけないよね。でもそれを気にするあまり、平坦になってしまうことは避けなければならないんだ。エモーションは大事なものだ。ただ、さまざまな支持を新たに学ぶのは楽しいよ。実は『ザ・ラスト・スタンド』の歌詞を書き始めるまで、ズールー戦争や日本の西南戦争、ウィーン包囲などについてあまり知らなかった。なんとなく知識としては知っていても、掘り下げてみたのは初めてで、新鮮な旅路だったよ。

──アルバムの1曲目を飾る「スパルタ」と同じ、紀元前480年のテルモピュライの戦いをテーマにしたコミック/映画『300(スリー・ハンドレッド)』にはかなりの脚色がありますが、どう考えますか?

ヨアキム:『300(スリー・ハンドレッド)』は見たよ。テストステロン(男性ホルモン)映画だよね!あの映画を作った人たちは、あの映画が史実に基づいているとは主張していない。コミックが原作の、あくまでピュアなエンタテインメントなんだ。映画としてすごく面白かったし、文句はないよ。俺が嫌いなのは、実際にあったことと異なるストーリーを展開させながら、“事実に基づく物語です”と主張することなんだ。数年前にも幕末を舞台にしたハリウッド映画があったけど、少しでも日本の歴史を知っている人だったら首を傾げる内容だった。“誰かの見た夢に基づく物語”だったら正しいだろうけど、“事実に基づく”と言ってしまうのはちょっと違うと思うね。TVシリーズ『バンド・オブ・ブラザーズ』『ザ・パシフィック』は大好きだよ。制作者たちは可能な限り史実を再現して、それでいてハリウッドのスパイスを加えている。史実とドラマ性を両立させているんだ。

──1877年の西南戦争を舞台にした『SHIROYAMA』は西郷隆盛を題材にしたというのに加えて、ヘヴィ・メタルとして素晴らしいナンバーなのが、日本人として嬉しいです。

ヨアキム:うん、「SHIROYAMA」は俺のお気に入りの曲なんだ。日本のファンがこの曲で盛り上がってくれたら嬉しい。俺は世界史が好きで、子供の頃からいろんな本を読んだりしてきたけど、スウェーデンでは学校でもあまりアジアの歴史を学ぶ機会がなかった。去年(2015年)<ラウド・パーク15>への出演が決まったとき、日本の歴史について主にネットで調べるようになったんだ。最初は観光の予定を立てるためにネットを調べていたけど、俺は歴史オタクだから当然のように脱線して、いろんな歴史上の出来事について調べ始めた。それで西南戦争と出会ったんだ。「SHIROYAMA」では西南戦争の経緯を歌うのではなく、比喩を用いながら、サムライの時代と新政府の新旧の価値観のぶつかり合い、そして時代の変化を描きたかった。サイゴウはサムライの時代を終わらせたけど、結局サムライ達を率いて叛乱を起こして、最後にサムライらしく自決したというのにドラマを感じるよ。

──西南戦争以外に候補となった日本の歴史上の出来事はありましたか?

ヨアキム:いや、まだ日本の歴史に関しては、俺は新人だからね。今でもいろいろ学んで、さまざまな出来事に新鮮な感動を受けているよ。将来の作品でも、日本の歴史が題材になることがあるだろうね。<ラウドパーク15>の後5日間、妻と日本で休暇をとったけど、「全然足りない!」と感じたよ。東京がモダンな大都市で渋谷交差点などがあるのに対して、京都は伝統的な文化があって、そのコントラストが素晴らしかった。文化と歴史に満ちた国で、大好きになったよ。

──サバトン・ブランドのサングラスについて教えて下さい。

ヨアキム:このサングラスは俺たちの誇りだよ。ハガ・アイウェア社のサングラスはスウェーデンだと高速道路のサービスエリアとかで売られていて、レイバンなんかと較べて安価なんだ。それでいてずっと丈夫だし、壊れにくい。しかもサバトンの出身地であるファールンに本社があるんだ!それで彼らと契約して、サバトン・サングラスを発売することにした。デザインも気に入っていて、もちろん暖炉やレコード棚の上に飾るのも良いけど、ヘヴィ・メタルのライヴやフェスティバルのような苛酷な環境でも壊れにくい、丈夫なサングラスだよ。

──アルバム発売後のワールド・ツアーのタイトルが“ザ・ラスト・ツアー”というのにショックを受けたファンも少なくないと思いますが、解散はしばらく先のことですよね…?

ヨアキム:うん、安心して欲しい。アルバム・タイトルが『ザ・ラスト・スタンド』だから、それにひっかけたジョークなんだよ(笑)。それともうひとつ、俺たちはいつだって一番でありたいんだ。ステイタス・クオーは1984年にラスト・ツアーを始めて、もう32年もやっているだろ?俺たちはその記録を塗り替えたいんだ。解散ツアーの世界最長記録を狙うよ。せめてKISSとスコーピオンズの記録には追いつきたいね。今から35年ぐらい経っても、まだ“ザ・ラスト・ツアー”を続けるつもりだよ!

取材・文:山崎智之
Photo by Tim Tonckoe, Ryan Garrison

サバトン『ザ・ラスト・スタンド』
2016年8月19日 世界同時発売
日本盤限定ボーナストラック収録/歌詞対訳付き/日本語解説書封入/日本語字幕付き
【初回限定盤CD+ライヴDVD】 ¥3,500+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
【通販限定100セット限定サイン付き初回限定盤CD+ライヴDVD+Tシャツ】¥7,500+税
1.スパルタ
2.ラスト・ダイイング・ブレス
3.ブラッド・オブ・バノックバーン
4.ダイアリー・オブ・アン・アンノウン・ソルジャー
5.ザ・ロスト・バタリオン
6.ロークズ・ドリフト
7.ザ・ラスト・スタンド
8.ヒル 3234
9.SHIROYAMA
10.ウィングド・ハザーズ
11.ザ・ラスト・バトル
12.カモフラージュ(スタン・リッジウェイ カヴァー)※初回限定盤ボーナストラック
13.オール・ガンズ・ブレイジング(ジューダス・プリースト カヴァー)※初回限定盤ボーナストラック
14.バーン・イン・ヘル(トゥイステッド・シスター カヴァー)※日本盤限定ボーナストラック
【ボーナスDVD】《2016年2月24日フランス・ナント公演》
1.ザ・マーチ・トゥ・ウォー
2.ゴースト・ディヴィジョン
3.ファー・フロム・ザ・フェイム
4.アップライジング
5.ミッドウェイ
6.ゴット・ミット・ウンス
7.レジスト・アンド・バイト
8.ウルフパック
9.ドミニウム・マリス・バルティック
10.カロルス・レックス
11.スウェディッシュ・ペイガンズ
12.ソルジャー・オブ・スリー・アーミーズ
13.アッテロ・ドミナトゥス
14.ジ・アート・オブ・ウォー
15.ウィンド・オブ・チェンジ
16.トゥ・ヘル・アンド・バック
17.ナイト・ウィッチズ
18.プリモ・ヴィクトリア
19.メタル・クルー

【メンバー】
ヨアキム・ブローデン(ヴォーカル)
パル・スンドストロム(ベース)
クリス・ローランド(ギター)
トッベ・エングランド(ギター)
ハネス・ヴァン・ダール(ドラムス)

最終更新:8月22日(月)19時47分

BARKS