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<特別連載>ミャンマーのロヒンギャ問題とは何か? (20) バングラデシュにはロヒンギャ難民以外に仏教徒のラカイン人も避難  宇田有三

アジアプレス・ネットワーク 8月19日(金)10時31分配信

Q. それでは、バングラデシュの東南部コックスバザール付近のロヒンギャの人たちの人口はどのくらいなんですか?
A.実は詳しい資料はありませんし、ロヒンギャの人口調査をしているという話も聞きません。ただ、難民キャンプ内に関しては統計があり、公式・非公式合わせて3~5万人ほどということです。実際に公式難民キャンプで支援に当たっているバングラデシュ人のスタッフからは、「難民キャンプ内では、家族計画の実施が順調ではない」という話を聞きました。

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ではなぜ、難民キャンプ内で家族計画が順調にいかないかは、はっきりとは説明してくれませんでした。キャンプ内では人が増えすぎ、周りに暮らす現地のバングラデシュ人と軋轢を起こしているそうです。

Q. 難民キャンプ周りの現地の村人もロヒンギャの人たちの存在をあまり歓迎していないのですね。
A.そうだともいえます。2009年~2010年にロヒンギャの難民キャンプを訪問した際、非公式キャンプ内には自由に立ち入ることができました。それが、2012年の8月に同じキャンプを訪問しようとしたら、キャンプ周辺の村人の監視が厳しく、外国人がキャンプに立ち入るのを阻止しようとする動きもありました。実際、ロヒンギャを排斥する団体も設立されていました。

現地の支援者によると「外国人はトラブルの元になるロヒンギャばかりを助けて、生活が苦しい我々(バングラデシュの)村人には援助をしてくれない」という気持ちがあるそうです。

Q. やはり、現地のことはあまり知られていないですね。
A.もう一つ、知られていないことがあります。それは、ミャンマー側からバングラデシュ側に逃れてきているのは、ロヒンギャたちだけでなく、数は数百人と少ないのですが、ラカイン人たちもいるのです。

Q. えっ、ラカイン人って仏教徒たちでしょう。それでもミャンマー側から避難しているのですか?
A.そうなんです。軍事政権の迫害対象は、仏教徒もムスリムも関係ないのです。

Q. 仏教徒のラカイン人たちも難民キャンプに暮らしているのですか?
A.いいえ、彼らはコックスバザール市内の仏教徒コミュニティに身を寄せて生活しています。彼らは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)発行の難民証明書も持っています。でも、ロヒンギャに較べて数も少ないし、国際社会の目にも入らないままです。だから、同じ軍政から逃れてきたラカイン人に手をさしのべようとしない「国際社会」に対してあまり良い印象を持っていません。(つづく)



宇田有三(うだ・ゆうぞう) フリーランス・フォトジャーナリスト
1963年神戸市生まれ。1992年中米の紛争地エルサルバドルの取材を皮切りに取材活動を開始。東南アジアや中米諸国を中心に、軍事政権下の人びとの暮らし・先住民族・ 世界の貧困などの取材を続ける。http://www.uzo.net
著書・写真集に 『観光コースでないミャンマー(ビルマ)』
『Peoples in the Winds of Change ビルマ 変化に生きる人びと』など。

最終更新:8月19日(金)10時31分

アジアプレス・ネットワーク