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ピクサー・アニメーション・スタジオに訪問!チームワークが生まれる職場とは

cinemacafe.net 8月20日(土)14時0分配信

本格的な夏休みシーズン真っ只中、『ファインディング・ニモ』待望の続編として公開中の『ファインディング・ドリー』は公開からますます動員数を伸ばし続けている。これまで、シネマカフェが実施した現地取材レポートを通して、本作に関わる様々なクリエイターたちのインタビューをお届けしてきた。

【画像】ピクサー・アニメーション・スタジオ/フォトギャラリー

レポート第3弾にて、“ブレイントラスト”と呼ばれるディズニー/ピクサー流のストーリー構築方法についてご紹介したが、ストーリー部門のクリエイターたちが複数人集まり、アイデアを出し合うことでストーリーがブラッシュアップされていくその過程は、チームメイト間の共通認識や意思疎通はもちろん、スタッフたちが自由にアイデアを出し合えるフラットな関係性がなければ成立しない方法である。果たして、ピクサー・アニメーション・スタジオのクリエイターたちは、どのようにしてそのチームワークを育んでいるのだろうか?

現地取材レポート第6弾となる今回は、カリフォルニア州エメリービルに位置する、ピクサー・アニメーション・スタジオ訪問記をお届けする。数多くの傑作が生まれたこの場所で、彼・彼女たちのチームワークが育まれる秘密に迫った。

美しいフォントで綴られた大きな「PIXAR」の文字が飾られたゲートをくぐると、右手には豊かな緑が広がっている。左右に生い茂る樹々に囲まれた緑道を歩くと、目に飛び込んでくるのはピクサーの作品の冒頭に必ず登場する「ルクソーJr.」と「ルクソーライト」の巨大オブジェ。それらの向かい側に、ピクサー・アニメーション・スタジオのメインビルディングである「THE STEVE JOBS BUILDING」の美しいガラスの壁面が視界いっぱいに広がる。アップルの社屋をはじめ、アップルストアの建物の美しいガラス張りのデザインにこだわったジョブズの哲学がここにも表れている。「THE STEVE JOBS BUILDING」という名称は、スティーブ・ジョブズが亡くなった2011年の翌年、彼への追悼の意を込めて名付けられた。

建物に入ると、まずその空間的な広がりと開放感に驚かされる。広い天井に、左右に分かれた2階部分のオフィス、1階のカフェテリアや、ショップ、ソファ、カフェテーブルなど、全体の様子が一望できるアトリウムの天井からは光が差し込み、空間全体に風通しの良い雰囲気が感じられる。それぞれ別のプロジェクトで働くスタッフの間でも、1階に訪れば、偶然の対話や自然なコミュニケーションが生まれるような空間としてデザインが施されている。

広々とした1階ラウンジの右手には、ソファスペースにディズニー/ピクサーのグッズショップ、スタッフのメールボックス、テーブルが並べられた休憩スペースが配置され、左手には受付、ビリヤード台やテーブルフットボール台などが並べられたリフレッシュスペースらしき空間、カフェテリアが配置され、奥側の正面のスペースにもゆったりとしたソファが並べられいる。全体としてたっぷりと幅をとった余裕のあるレイアウトであり、リラックスした雰囲気が漂う。また、奥側の左右の上空には幾つものスピーカーが縦に積まれており、仕上がった作品が上映される際などに使用されるようだ。

そして何より目を引くのは、訪れた者たちを明るく出迎えるように並べられたピクサー作品に登場するキャラクターのオブジェの数々。エントランス周辺に並べられた『カーズ』のルイジ&グイド、『インサイドヘッド』のビンボンをはじめ、受付横のレゴブロックでできた『トイ・ストーリー』のウッディ&バズ、ビリヤード台の横には『Mr.インクレディブル』の一家が並び、スタッフたちがキャラクターたちを身近な存在と感じているような印象だ。ほかにも、壁面にかけられた巨大な『ファインディング・ドリー』のコンセプトアート、トイレの表札にこっそり忍ばされたウッディとブルズアイのシルエットなど、至るところに作品の数々が散りばめられ、エントランス横に並べられたトロフィーの数々からは、アニメーションスタジオとして自負と気概が感じられる。

大きく左右に分けられた2階スペースは、それぞれ“右脳”と“左脳”をイメージしされているようで、右脳部分を司るのは、キャラクターやデザインなど芸術的なクリエティブを担当する部門であり、左側の左脳部分には、作品におけるテクニカルなパートに携わるクリエイターたちの仕事場となっているようだ。2階の右脳部分に足を運ぶと、アートスペースのごとく壁一面には『ファインディング・ドリー』のアートワークの数々が飾られていた。キャラクターたちが生まれる原型となったスケッチやコンセプトアートをはじめ、立体のオブジェや美しいグラフィックに至るまで、作品の制作過程における膨大な量のアーカイブが展示されており、まるで美術館の特別展のような佇まいが感じられる。また、これらの展示は新作の公開ごとに入れ替わるようで、これまでの作品分のアートワークがアーカイブされているかと思うと、あまりの贅沢さにため息が出る思いだった。


「THE STEVE JOBS BUILDING」を出て、左に続く緑道を抜けた左手に見えるのは、「ブルックリン」と呼ばれる第二の建物だ。中に入ると、「THE STEVE JOBS BUILDING」におけるガラスや鉄などの無機的なイメージとは一転、レンガや木材による壁面や絨毯敷きの空間などが広がり、どこか暖かい雰囲気漂う空間が印象的だった。こちらにおいても、『モンスターズ・インク』のサリー&ボブのオブジェや、石畳にこっそり隠されたウッディのシルエットなど、キャラクター愛が感じられる配置はもちろん、ガラスケースに保管されたスティーブ・ジョブズとジョン・ラセターがやりとりした手紙や(ジョブズのハンドライティングの美しさには驚かされた)、ソファラウンジのようなリラックススペースには、かつて野球場だったという本スタジオの土地の歴史を記すギャラリー展示が壁面に飾られるなど、常に新しいクリエイションが生み出される場としての「THE STEVE JOBS BUILDING」に対して、こちらは時間の蓄積によって育まれる歴史の息遣いが感じられる空間が広がっていた。

ほかにも、敷地内にはプールやサッカー場、テニスコートなど、体を動かすことができるスペースも確保されており、スタッフたちが気軽にリフレッシュできる環境が整えられている。また、「THE STEVE JOBS BUILDING」内のカフェテリアはオーガニックな野菜中心のメニューで、スタッフの健康への配慮がここでも行き届いている。

「THE STEVE JOBS BUILDING」2階に設けられているアーティストたちのプライベートな作業部屋は、それぞれが個性的に装飾すること推奨されているという。存分にリラックスできるカフェや緑道などのパブリックな空間と、自分の好みに合わせてデコレーションされた空間で制作に打ち込むことができるプライベートな空間、そのどちらもが揃うこの場所は、まさにクリエイターたちにとっては理想的な職場と言えるだろう。

「ここには、とても一生懸命働いている素晴らしい人々がすごくたくさんいて、彼らと一緒に仕事が出来ることは、モチベーションを維持させるよ」
――マーク・ソンドハイマー 『ひな鳥の冒険』プロデューサー

「ピクサーは、自分たちはこの映画に関わっている、とみんなに感じさせるのがとてもうまいの」
――リンジー・コリンズ『ファインディング・ドリー』プロデューサー

「自分の周りを、自分が敬意を感じる仕事をしている人たちで固めて、一緒に仕事をしながら、素晴らしいアーティストになるために自分自身を駆り立てることが大事なんだ。仲間のグループからの正直なフィードバックは、成功するための鍵だよ」
――アンガス・マクレーン『ファインディング・ドリー』共同監督

「いい日には一緒に喜び合い、一緒にその日を過ごすことができる、まるで家族のようです。いいチームメイトがいるときには、どんなことでも一緒にできるんです」
――ロナ・リュー『ファインディング・ドリー』シェーディング・リード

現地取材を通して実施したインタビューにて、誰もがピクサーで働くことの喜びとやりがいを笑顔で語っていたのがとても印象に残っている。ピクサーの作品から感じ取ることができる、困難や苦しみに決して覆われることのない生きることの喜びや、人生への力強い肯定は、何よりここで作品を生み出すことへの喜びに溢れたクリエイターたちあってのことなのだろう。そしてそれは、映画作りの仕事に限られたことではない。幸福に働くことのヒントが、ここにはたくさんあるように思えた。

『ファインディング・ドリー』は、全国にて公開中。

協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

最終更新:8月20日(土)14時0分

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