ここから本文です

【陸上】競歩・荒井 失格一転「銅」のウラ側

東スポWeb 8月20日(土)16時51分配信

【ブラジル・リオデジャネイロ19日(日本時間20日)発】まさかの失格から一転、悲願の銅メダル獲得だ。陸上男子50キロ競歩は日本勢3人が出場し、荒井広宙(ひろおき=28、自衛隊)が3時間41分24秒の3着でゴールした。日本競歩初の五輪メダルのはずが、約1時間後に失格処分に。すぐに陸上日本代表の麻場一徳監督(55)が国際陸連に上訴した結果、裁定は覆り、荒井の3位が確定した。ドタバタ劇の末の銅メダルが、日本の今大会39個目のメダルとなり、2012年ロンドン大会を抜く過去最多となった。

 波乱の連続だった。50キロ競歩に臨んだ世界選手権4位の荒井は序盤から2位グループをキープ。後続のエバン・ダンフィー(25=カナダ)に一時抜かれても、激しく競り合って追い越し、3番手でゴール。優勝したマテイ・トート(33=スロバキア)と握手し、互いの健闘をたたえ合った。

 競歩初の偉業は今大会の陸上競技初メダル。荒井は日の丸を広げ「レース展開は良かった」と喜んだ。日本各メディアも深夜の快挙を速報。列島が歓喜に包まれるなか、荒井に抜かれたカナダ側がレース後に抗議。荒井がダンフィーを抜く際に体が当たり、妨害を受けたと主張すると、約1時間の協議の末、まさかの失格処分。荒井の成績はレース記録から抹消されてしまった。

 問題の場面はレース終盤の49キロ付近だった。4番手に落ちた荒井が再び抜き返す際に右肩がダンフィーの左ヒジ付近に接触。相手はバランスを崩し転倒しかけた。

 たしかにこの接触が3位と4位を分けたとの見方もできるが、故意ではなくアクシデントだったはず。レース後、荒井は「近くて当たってしまった。競歩は腕振りが大きいので接触はどうしてもある」と話していた。

 しかし、予想外の失格裁定に日本サイドは猛反発。麻場監督は「判断に対して上訴した。納得していない。不可抗力の接触。われわれからするとカナダ選手の(左)ヒジが先に当たっている」と主張。荒井も「カナダの選手から謝ってきてハグした。選手同士に問題なかった。悪いこと(失格)とは思っていなかった」と語っていた。

 上訴に対しては、国際陸連の理事メンバー5人で審議し、多数決による採択が行われる。レース終了からおよそ3時間後、ようやく国際陸連からメールが届いた。日本側に届いた文面には「裁定は日本の抗議を支持し、もともとの順位に戻しました。ヒロオキが3位、ダンフィーが4位です」と書かれていた。

 メダル確定の知らせを聞いた荒井は「お騒がせしてすみません。抗議があって失格になってしまうのではと思っていた。結果として(銅メダルを)取れたのでよかった。日本の競歩をつくってきた先輩たちに少しは恩返しできた」と喜びを爆発させた。

 福井工業大学を卒業後、現在の所属が決まるまで親の仕送りで競技を続けていた苦労人。ロンドン五輪代表を逃した悔しさをバネに、競技により一層打ち込んできた。2年前には貯金をはたいて100万円の低酸素テントを購入し心肺機能を高め、この日を迎えた。

 荒井は「満足するのではなく、4年後には東京五輪があるので上を目指してやっていきたい」。昨年11月に亡くなった母の繁美さん(享年63)にも胸を張って報告できるはずだ。

最終更新:8月20日(土)17時24分

東スポWeb