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ギネス記録をもつ「世界一辛いトウガラシ」とは?

TOKYO FM+ 8月20日(土)12時0分配信

昔から「暑いときには辛い料理」と言いますが、その理由はさまざまです。ひとつは、汗をかくと体温が下がるから。もうひとつは、夏バテで弱った胃腸の血流を良くし、食欲を増進させるから。そして何より、辛いモノ好きの人が、単に食べたいから……です! ということで今回は、日本ではすでにスタンダードになった香辛料「トウガラシ」の魅力を、TOKYO FMの番組の中で詳しい方々に教えてもらいました。


◆「辛いモノが大好き!……だけど苦労も」
~お笑いコンビ「三四郎」 小宮浩信さん

僕は普段からカレー屋の「CoCo壱番屋」で10辛のカレーを食べたり、ラーメン屋の「蒙古タンメン中本」で一番辛い「北極ラーメン」を食べているくらい辛いモノが好きです。北極ラーメンは辛さを表す炎マークが9個。普通の人は炎5個のスタンダードなラーメンでもギブアップしかねないので、その辛さは尋常ではありません。

もともと辛いモノに強かったわけではなく、蒙古タンメン中本も最初は「辛いな」と思いました。でも見栄を張って全然平気な顔をして食べ続けているうちに、その刺激が快感になっていったんです。やがて辛さが物足りなく感じるようになって、どんどん辛いラーメンを食べるようになっていきました。

ただし上には上があるもので、スリランカ料理のお店で「カレーを一番辛くしてください」とお願いしたら、真っ黒なカレーが出てきたんです。厨房の人たちが「生意気な日本人が来た」みたいな感じでニヤニヤしていたので意地になって半分くらいは食べました。そこで「お腹いっぱい」みたいな顔で残したんですけど、本当は辛すぎて食べ切れなかったんです。

僕は胃腸もそれほど強くないので、辛いモノを食べてお腹を下してしまうこともあります。でも好きだから辛いモノを食べたい。そこでネットで調べたところ、牛乳が胃に膜を張るので辛いモノの刺激を緩和してくれるのだとか。試してみようと思ったら、まず牛乳でお腹を下してしまい大失敗でした。

番組の罰ゲームで辛さ300倍のタバスコを使ったピザを食べたこともあります。店長さんが「けっこう美味しいですよ」と言うので、「食べたことあるんですか?」と聞いたら「ないです」と笑うんです。罰ゲーム用に作った特注のピザだったんですけど、食べたことのない人が一番タチが悪いですね。

自宅にあるのは辛さ2倍のタバスコですが、さらに辛い「デスソース」になると普通の人は1滴で30分くらい悶絶します。けっこうあちこちで売ってますけど、興味本位で挑戦したら絶対にダメです。


◆「世界一辛いトウガラシの辛さは……」
~信州大学 学術研究院(農学系)准教授 松島憲一さん

トウガラシはナス科トウガラシ属の植物。実はピーマンやパプリカも同じナス科トウガラシ属なのでトウガラシの一種で、辛みを産出することができなくなった系統です。一方「鷹の爪」はトウガラシの品種を指します。日本では昔からこの品種を粉にして香辛料として使っていたので、鷹の爪という言葉がトウガラシの総称のように使われるようになりました。

でもトウガラシは各地にいろんな品種があります。たとえばキムチ用のトウガラシはそんなに辛くなく、発色が良くて甘みもある。酸味があったり、グルタミン酸のうま味成分もあったり、トウガラシは辛みの強さだけでなく、辛みの向こうにある甘みやうま味を料理に活かしてください。

韓国では辛みの弱いトウガラシを生のまま味噌を付けて食べますし、日本でも長野県の北のほうでは「ぼたんこしょう」というピーマン型のトウガラシを生で食べます。ぼたんこしょう、ナス、ミョウガ、大根の味噌漬けなどを刻んで混ぜた「やたら」という料理なんですが、ご飯にかけるとピリッとした辛さと夏野菜の青臭さが暑い夏には心地良い一品です。

ブータンならトウガラシをチーズと一緒に煮込んだ「エマダダツィ」。イメージとしては激辛クリームシチューで、これもご飯にかけて食べるとおいしい料理です。タイの「トムヤンクン」は酸っぱ辛いスープですし、中国の「麻婆豆腐」ではトウガラシと山椒と合わせています。それぞれの料理に合った品種のトウガラシが各地で使われていますね。

ギネスブックに登録された世界一辛いトウガラシは「キャロライナ・リーパー(キャロライナの死神)」です。これはアメリカ人が登録した品種で、日本で一味唐辛子に使われる品種だと乾燥した粉1gあたり2000μgのカプサイシンを含んでいるのですが、キャロライナ・リーパーはそれが9万8000μgもあります。ハバネロで3万くらいですから、とてつもない辛さです。

昔はトウガラシの辛さを測るのに、成分をアルコールに抽出して砂糖水で少しずつ薄めて、何倍まで薄めたら舌で感じなくなるかを調べていました。この方法を考えた人の名前から「スコヴィル値」というのですが、人間の舌はあいまいなところもあるので、今はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)という機械でカプサイシンの濃度を測っています。

トウガラシの辛み成分はカプサイシンで、トウガラシしか作ることができない成分です。トウガラシを食べるとカプサイシンが口の中の受容体を刺激し、脳に「痛い」「熱い」という信号が送られます。だから英語で「辛い」を「Hot」と表現するのは正しいんです。ちなみにワサビの辛さは「Sharp」でトウガラシの辛さとは違う言葉で表現します。

トウガラシを食べると体がポカポカしてくる現象を「体熱産生」と言います。体の中の糖分や脂肪をどんどん燃やして熱に変えていくので、トウガラシを食べるとダイエット効果があるんです。さらに汗をかくことによる熱放散の効果もありますし、ビタミンCも豊富なので、夏にすごくいい食べものだと思います。

よく料理の先生が「トウガラシの種を取り除く」と言いますが、実は種そのものには辛みはありません。カプサイシンを生み出すのは種が付いている胎座と隔壁です。もっとも種を取り除けば胎座と隔壁も一緒に除かれるので、辛みを和らげるために種を取り除くのは間違ってはいません。


◆「メキシコ料理はトウガラシの出汁が決め手」
~メキシコ料理店「ラ・カシータ」オーナーシェフ 渡辺庸生さん

メキシコでトウガラシを料理を使うにあたっては、トウガラシの個性を大事にします。日本でいえば出汁みたいなもので、日本なら昆布出汁、鰹出汁、炒り子出汁といろいろありますが、トウガラシにもいろんな個性があるのでそれを活かすんです。

メキシコではだいたい100種類くらいのトウガラシが使われています。煮ても焼いてもおいしいのですが、一番調和するのは油です。サラダ油の中でちょっと熱を加えると最初にうま味の出汁が出ます。次に香りが出て、3番目が辛さ。そこに種を入れたりしながら調和させていきます。

メキシコ料理では、まず「トルティージャ」という言葉を覚えてください。これはトウモロコシの粉末を薄く伸ばして焼いたクレープ状の生地で、メキシコではその上に焼いた魚や肉などのおかずを載せて食べます。おなじみのタコスはトルティージャに何かを挟んで食べる軽食です。

さらにサルサという言葉もよく勘違いされるですが、これは「ソース」という意味です。だから「サルサ・ソース」というのは間違いで、「○○サルサ」みたいなさまざまなソースがメキシコにはたくさんあります。そして肉に合うサルサ、魚に合うサルサなどを使い分けます。

大きなトウガラシだと30cmくらいあるのですが、メキシコではそれを乾燥させて20cmになったところを使ったりもします。そのへんは日本におけるシイタケのイメージに近いですね。そのまま煮たり焼いたりして食べてもおいしいし、干して乾物にしても良い出汁が取れます。

メキシコでトウガラシは「チレ」と呼ばれます。代表的な種類はチレ・アンチョなどですが、日本ではハラペーニョやハバネロが有名ですね。実はどちらも地域性の高いトウガラシで、チレ・ハラペーニョはハラパという港町で昔から作られてきたトウガラシ。チレ・アバネロ(スペイン語ではHは発音しません)はユカタン半島のトウガラシなんですが、キューバのハバナから種が飛んできたという意味でハバネロと呼ばれています。

メキシコの代表的な料理と言えば「モーレ」です。これはモーレと呼ばれるソースを鶏肉などにかけた料理で、そのソースには3種類以上のトウガラシが使われます。さらにゴマ、アーモンド、干しぶどう、シナモン、チョコレートなどを入れたソースなんですが、これが作れないと女性はお嫁に行けないと言われるくらいメキシコでは欠かせない家庭料理です。

(TOKYO FMの番組「ピートのふしぎなガレージ」2016年8月13日放送より)

最終更新:8月20日(土)12時0分

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