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英国イクメン事情 父親たちはなぜ「共有育児休暇」を取らないのか

The Telegraph 8/20(土) 11:00配信

【記者:Radhika Sanghani】
 ジャロン・ジェームズ(Jaron James)さん(41)は、2人目の子どもが生まれる際に妻から「共有育児休暇」制度を利用してみない?と提案されたときの反応を率直に明かした。

「育児休暇を取らなくてもいい言い訳を探し、すぐにものすごく否定的な返事をしました。大変な重労働になると思ったし、気乗りしなかった。上司に話すのも気が重く、自分のキャリアにどんな影響があるかを考え続けていました」

 しかし、英ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)でフォトグラファーとして働いていたジェームズさんの職場環境が変わったことで「ノーと断れるほどのちゃんとした理由がなかった」とジェームズさんは話す。

 ファッション誌「レッド(Red)」の副編集長をしている妻のサラ・トムザック(Sarah Tomczack)さんが早く職場復帰するほうが家計は助かった。さらにトムザックさんは、夫婦は平等という考えから、夫にフルタイムで2人の子どもの面倒を見てもらい、子育ての苦楽を理解してほしいとも願っていた。

 そこで1月、次女のシルビー(Sylvie)が生後7か月になると、ジェームズさんは4か月間の予定で育児休暇を取り、長女で3歳のココ(Coco)も合わせて2人の娘の「専業パパ」になった。

 法律事務所EMWのデータによると、英国で今年1~3月にジェームズさんのように夫婦で「共有育児休暇」を利用したといわれている男性はわずか3000人。取得資格があるうちのわずか4%に過ぎない。

 2015年4月に導入されたこの新制度では、共働きの夫婦が子どもが生まれてから1年間の育児休暇を分割して取ることができる。最初の2週間は体力を回復させるために母親が取らなくてはならないが、残りの期間は夫婦のどちらが利用しても構わない。

 しかし、夫婦のいずれもがわが子との絆を育みながらキャリアも維持できる画期的な男女平等政策だと称賛する声が多かったにもかかわらず、なぜ父親の共有育児休暇取得率はこれほど低いのだろう。

 多くの夫婦にとっては、単純に経済的な問題だ。共働き夫婦で男性の収入のほうが多いカップルは78%に上る。そのため父親が育休を取ると、当然、家計は苦しくなる。

 1年間の育休中、最初の6週間は給与の90%、その後の33週間は法定賃金の週給140ポンド(約1万8000円)に下がり、最後の3か月間は無給になる。もし夫と妻の収入が同程度でも、女性が育休を取ったほうが母親手当てなどで法定賃金以上をもらえる場合が多い。つまり、夫婦で共有育児休暇を利用すれば、経済的に損をすることになるのだ。

 企業による子育て支援の取り組みを推進している「マイ・ファミリー・ケア(My Family Care)」の理事、ベン・ブラック(Ben Black)氏は、企業が母親手当と同じぐらいの父親手当を出すようにならなければ、現状はほとんど変わらないだろうと指摘する。

 ジェームズさんの場合、ダメージを受けたのは家族の大黒柱としてのプライドだった。「きつかったのは自分の預金残高が底を突いたときです」とジェームズさんは説明した。「プライドを捨てて、サラに金欠だと言わなくてはなりませんでした」

 一方で、フルタイムの育児がどれだけ過小評価されているかという認識も強めたという。「以前は、仕事から帰ってきて家が散らかっているとサラをとがめていました。基本的な家事がなぜできていないのか理解できなかったから。でも今は、それがいかに大変かが分かる。自分のための時間はないんです」

 ジェームズさんが仕事に復帰する日は訪れなかった。2人の娘のために専業パパを続けることにしたのだ。後悔はない。

「娘たちとたくさんの時間を過ごせることかけがえのないもので、これ以外は考えられないと思うことも多いです。求人サイトは今でも毎日見ていますが、それは好条件の仕事を見逃したくないという気持ちからです。どうしても仕事に戻りたいというわけじゃありません」とジェームズさんは語った。「実際のところ、仕事に復帰するのは気が進まないんです」【翻訳編集】AFPBB News

最終更新:8/20(土) 11:00

The Telegraph