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勢いが止まらない『シン・ゴジラ』 エヴァファン取り込み支持層拡大

クランクイン! 8月20日(土)5時50分配信

 映画『シン・ゴジラ』が大ヒットを記録している──。公開まで、多くのことがベール包まれていた本作だったが、7月29日に封切られると、17日間で観客動員230万人、興行収入33億8297万円を記録し、すでに2014年に公開されたハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』を上回るヒットを遂げている。口コミサイトでは軒並み高評価が並び、リピーターも続出。完全に夏休みの映画界を席巻した。もちろん作品としてのクオリティの高さは言うまでもないが、そこに浮かび上がってくるのが“庵野秀明”というキーワードだ。(以下、一部ネタバレあり)

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 まず触れておきたいのが、『シン・ゴジラ』という映画に内在されているメッセージ性の強さだ。ゴジラという存在への哲学的な解釈や問題定義は、1954年に公開された『ゴジラ』のイデオロギーを踏襲しつつ、現代の日本の政治体制、災害に対する防衛的問題点をえぐったストロングメッセージを内在。その脚本の素晴らしさに感嘆の声が上がった。それにプラスして庵野秀明が総監督を務めたということが、『エヴァンゲリオン』のファンを取り込み、さらに大きな波を作り出している。

 映画が公開されると、『エヴァンゲリオン』を想起させるシーンやカメラワークは作品のいたるところにちりばめられていることが話題になった。実際、多くのまとめサイトで『シン・ゴジラ』と『エヴァンゲリオン』の共通点というトピックスが乱立。怪獣映画“ゴジラ”にそれほど興味がないが『エヴァっぽい』という意見に反応する人たちが目立つようになってきた。

 こうした公開後の大きな波を作り出したのは、本作の情報統制にも起因している。映画というメディアにおいて、口コミの影響力は非常に大きい。そのため、公開前に何度も試写会を行って作品情報を広めるというのは宣伝活動の常とう手段だ。しかし『シン・ゴジラ』は徹底的な情報統制が敷かれた。


 一般試写ばかりか、マスコミ試写もほとんど開催されず、数少ない鑑賞者にも、作品内容に関する情報開示や漏えいは固く禁じられた。庵野総監督の「先入観なく作品を鑑賞してもらいたい」という意図もあるが、「ゴジラ最終討伐作戦の名称や内容」や「ゴジラの形態が変化すること」、「劇中使用楽曲」など、公開前にネタバレ厳禁項目に上がった内容は『エヴァンゲリオン』を想起させるものが多かった。不確かな状態で、いたずらに『シン・ゴジラ』と『エヴァンゲリオン』をリンクさせたイメージを植え付けることを嫌ったのだろう。

 公開後、エヴァンゲリオンを想起させる内容は、エヴァファンからも興味深い考察と共に賞賛の声が上がり、これまで『シン・ゴジラ』に興味がなかった庵野ファンの劇場鑑賞欲求を高めた。もし、公開前に多くの情報が開示され、イメージだけが一人歩きしたら、こうした流れは違った方向に進んでいった可能性も大いに想像できる。

 日本伝統の怪獣特撮映画という側面プラス、“『エヴァンゲリオン』を素材に庵野秀明が新作の実写映画を作り上げた”という二重構造が、リピート者を続出させる大きな要因となっている。往年のゴジラファンは本作により、エヴァンゲリオンに興味を持ち、エヴァンゲリオンファンは過去のゴジラに知的好奇心をくすぐられる……。こうした相乗効果は、新しい層に作品をリーチさせ、非常に高い注目度を集める結果になっている。

最終更新:8月20日(土)5時50分

クランクイン!