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【リーガ開幕展望】バルセロナ 欧州王座奪回へ各ポジションの“アップデート”を図る

SOCCER KING 8月20日(土)17時0分配信

 王者は研究されるが故に、“アップデート”を求められる。それがトップレベルで勝ち続ける秘訣であるからこそ、バルセロナは今夏の移籍市場で積極的に動いた。

 ここまでの新戦力は4人。マルク・バルトラとトーマス・ヴェルマーレンが去ったセンターバックには、ユーロ2016で鮮烈な代表デビューを果たしたサミュエル・ユムティティをリヨンから獲得。さらに、左サイドバックのバックアッパーとして、ユムティティ)と同じくフランス代表の一員として自国開催のユーロ2016に臨んだリュカ・ディニュを確保した。一方、中盤では、リーガファンにすっかりお馴染みのデニス・スアレスとアンドレ・ゴメスの引き抜きに成功した。

 彼らは選手としてのポテンシャルが高いのはもちろんのこと、移籍発表時点での年齢がいずれも22歳と若く、「戦力底上げ」と「チームの若返り」という二重の意味で効果的な補強と言える。既レギュラー奪取とはならなくても、チーム内の競争力を高めてくれる存在であり、4人の獲得に費やした8000万ユーロ以上という投資も決して高いものではない。

 一方、今も未解決のままであるのが、リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールによる“MSN”のバックアッパーの確保だ。第一候補としてリストアップしていたケヴィン・ガメイロとルシアーノ・ビエットの2人は、すでに交換トレードのような形で、アトレティコ・マドリードとセビージャへの移籍を決めた。その他にも、ドイツ代表FWのマリオ・ゴメス(フィオレンティーナ)やフランス代表FWアンドレ・ピエール・ジニャク(ティグレス)など実力者の名前が挙がっているが、なかなか交渉まで至らない。

 とはいえ、“MSN”のサブに甘んじながら、ピッチに立った時は彼らと同等の結果を残す、という過酷な労働条件を好んで受け入れる選手を見つけるのは至難の業だ。ルイス・エンリケ監督はついに、「素晴らしいメンバーが揃っているし、このままでも構わない」と発言したが、“第4のFW”の獲得が実現しないことも半ば受け入れているふしがある。

 だからこそ注目されるのが、その指揮官の手腕である。昨シーズンはリーガ・エスパニョーラとコパ・デル・レイの2つの大会で連覇を達成したものの、3月から4月にかけて起きた突然のスランプの影響で、尻すぼみの結末を迎えた。ファンの間でも、「成功の1年」というイメージはあまりない。

 そして、その主因が“MSN”を筆頭にメンバーを固定しすぎた指揮官の采配にあったのは、誰の目にも明らかだった。同じ失敗を繰り返さないためにも、今シーズンはローテーションを積極的に採用する必要があり、主力選手たちに対しては、ベンチスタートも受け入れるよう説得しなければならない。2015年1月に起きたメッシとの衝突事件以降、放任主義を貫いているルイス・エンリケ監督だが、選手の声を素直に受け入れるだけではない“厳格なボス”としての姿を披露することが求められている。

 そのうえで、戦い方にも新たなバリエーションを加える必要があるだろう。ここ数シーズンを振り返ったとき、バルセロナの成功の裏には、新たな戦術の登場があった。ペップ・グアルディオラ時代には、“偽9番”を用いた究極のポゼッションサッカーを武器に数々のトロフィーを獲得。そしてルイス・エンリケ監督も、“MSN”による高速カウンターを新しいオプションに加えることで、就任1年目での3冠を達成した。しかし、“MSN”へ過度に依存することの弊害は昨シーズン中に明らかになったため、戦い方にさらなるバリエーションを加える必要に迫られている。

 とはいえ、ルイス・エンリケ監督は決して戦術家という訳ではない。昨シーズン序盤戦には、セルジ・ロベルトの右サイドバック起用が大きな話題を呼んだ。だが、それもダニエウ・アウヴェスとドウグラス・ペレイラという本職2人の怪我を受けて、苦肉の策として用いられたのがうまくいったに過ぎない。その後、S・ロベルトがスペイン代表デビューを飾るまでに成長したことは、指揮官の功績の1つとして称えられるべきだが、システムやメンバーを頻繁に入れ替えていたグアルディオラと比較すると、どれほど戦術に長けているのか、その判断は難しい。

 冗談とはいえ、過去には“MSN”がゴールを量産する秘訣について、「『アブラダカブラ』という呪文を唱えていれば、勝手に魔法がかかる」とコメントしたような男である。そんな指揮官が果たして、戦術面で新機軸を打ち出すことができるのか。ルイス・エンリケ監督自身もまた“アップデート”を求められている1人だと言えるだろう。

 なお、ポジション別に見ていくと、まだ少なからぬ不安を残すのは右サイドバックかもしれない。昨シーズンまで不動のレギュラーに君臨してきたD・アウヴェス退団の影響は小さくない。実際のところ、彼はメッシに最も多くのアシストを供給していた選手であり、エースとのホットラインはバルセロナの大きな武器の1つだったからだ。

 今シーズンからは、セルジ・ロベルトやアレイクス・ビダルが右サイドバックに入ることが予想されるが、彼らは前任者に近いレベルでの攻撃力を求められると同時に、サイドの広範囲なスペースを要領よくカバーするインテリジェンスも求められる。プレシーズンマッチでは、特にA・ビダルが何度も背後のスペースをとられる場面が目立ったが、ここが安定しなければ、その前方に位置するメッシの歯車も狂ってくるかもしれない。それはチームにとっても大きなマイナスである。

 ルイス・エンリケ体制3年目を迎える今シーズンは、リーガ3連覇はもちろんのこと、チャンピオンズリーグ奪還が最大の目標となる。欧州王者の称号を奪われたのがレアル・マドリードであるため、なおさらビッグイヤー獲得にかける意気込みは強いはずだ。そのための下準備(=補強)は、まずまず。あとは、どれだけチーム力を向上させられるか。それが成否の分かれ道となる。

 確固たるスタイルを持っているだけに、大胆なモデルチェンジは必要ない。だが、バルセロナが再び最強の座に君臨するためには、各所での“アップデート”が求められるだろう。そういう意味では、我々の予想を良い意味で裏切るサプライズの提供を期待したいところだ。

(記事/Footmedia)

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最終更新:8月20日(土)17時19分

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