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橋下維新の8年間を振り返る(6)高校の卒業式で「君が代」を起立斉唱せずに減給処分を受けた元教員(矢野宏/新聞うずみ火)

アジアプレス・ネットワーク 8月21日(日)7時22分配信

◆「君が代強制条例」 橋下知事時代に成立

大阪府立高校の卒業式で「君が代」を起立斉唱しなかったとして減給処分を受けた元教員の志水博子さん(63)が府に処分取り消しを求めた訴訟の判決が7月6日、大阪地裁であり、内藤裕之裁判長は「処分は裁量権の範囲内で違法ではない」として志水さんの訴えを退けた。

教職員に君が代の起立斉唱を義務付ける「君が代強制条例」は、橋下徹氏が知事だった2011年6月に成立。翌12年には3回の職務命令違反で分限免職とする「職員基本条例」も成立しており、これらの条例が憲法の保障する思想・良心の自由などを侵害するかどうかが争点だった。

「『君が代強制条例』は禁じ手だ」と、志水さんは訴える。

「君が代について、20年以上にはなるでしょうか、ずっと議論し続けて来たのです。それを一切無視して、法で縛ることは、『議論しない・させない』ことにつながります。案の定、職務命令が出ると、学校内でものが言えない空気が生まれました。これは学校にとっても、生徒たちにとっても一番よくないことです。私は、この条例は思想・良心を認めた憲法に違反するものであり、従えないと思いました」。

さらに、志水さんは提訴した理由について、こう話している。
「日本に憲法裁判所があったなら、きっと多くの人がこの条例の憲法違反を訴えたでしょうが、残念ながら日本にはありません。違憲性を訴えるには、不利益を受けた者しか裁判を起こせないのです」。

志水さんは12年4月の入学式で起立斉唱せずに戒告処分を受け、定年前の13年3月の卒業式でも繰り返したとして減給処分を受けていた。それゆえ、定年後にもかかわらず、あえて提訴に踏み切った。

定年退職する教職員が年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用希望者を再任用するものとするとの決まりがある。にもかかわらず、府教委は志水さんの希望を受け付けなかった。明らかな嫌がらせである。
現在、志水さんは中国・大連で日本語を教えている。

大阪地裁の判決は、「君が代」に抵抗を持つ人に起立斉唱させる職務命令は「憲法で保障された思想・良心の自由を間接的に制約する面がある」と指摘。志水さんが起立しなかったことで式典が妨害されたわけでもないと認めながらも、「起立斉唱は儀礼的な所作で許される程度の制約だ」と判断した上で、「公務員としての規律より自らの価値観を優先させたとして減給が相当」と結論づけた。

同じように、東京で懲戒処分を受けた公立学校の先生たちが都に処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁は「不起立のみによる停職と減給は違法」と明確に示していた。

志水さんは「減給なら取り消されるに違いない。条例と憲法の関係についても裁判所は何らかの判断をせざるを得ないだろう」と考えたというが、減給は取り消されず、条例についてもまともな検証は行われなかった。

その「違い」に、志水さんは危惧を抱く。

「時代はそこまで悪くなっているのかもしれませんね。それゆえ、諦めるのではなく、たとえ一度成立した条例でも、間違っていることに対しては、『間違っている』と、声をあげていかなければいけないと思っています」【矢野 宏/新聞うずみ火】

最終更新:8月21日(日)13時36分

アジアプレス・ネットワーク