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「航空大国ロシア」復権なるか 次々登場の新旅客機、その実力、そして勝算は

乗りものニュース 8月21日(日)15時0分配信

自国の航空会社も不採用 没落の「旅客機大国」

 2016年6月8日、ロシアの航空機メーカーであるイルクート社が、新開発のジェット旅客機MS-21をロールアウトさせました。MS-21は年内にも初飛行し、2018年には航空会社への引き渡しが行われる予定です。

 昨今ロシアでは、MS-21よりもひと回り小さいスホーイ「スーパージェット100」が登場するなど、新型旅客機の開発を加速させつつあります。ロシアの思惑は一体どこにあるのでしょうか。

 かつて冷戦時代、ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)はアメリカや西ヨーロッパに次ぐ「旅客機大国」でした。おもに大型機の設計を得意とする「イリューシン」「ツポレフ」らふたつの試作設計局が開発した旅客機は、ソ連をはじめ東側諸国に供給され、なかにはツポレフTu-154のように生産数が1000機を超えるベストセラーとなった機種も存在します。

 ところが、ソ連の崩壊によって東西冷戦という政治的、経済的な垣根が取り払われた結果、エアバス社やボーイング社など西側諸国のメーカーが開発した航空機との自由競争にさらされ、騒音が大きく燃費が悪く、乗り心地にも劣るロシア機はまったくといっていいほど売れなくなってしまいました。現在ではロシアのフラッグキャリアであるアエロフロート航空ですら、Tu-154の後継機として開発されたTu-204を使用せず、エアバスA320などを導入しています。

MS-21、すでに約300機を受注 しかしその実情は

 こうした状況を打破し、ロシアが再び航空大国へと返り咲くための尖兵が「スーパージェット100」と、このたび登場したMS-21であるといえます。特にMS-21は、エアバスA320、ボーイング737によって完全に支配されている座席数150~200のナローボディ(単通路)旅客機市場へと乗り込みます。

 MS-21の優位点は、まず主翼などに世界で初めて「真空樹脂含浸製造法」による「炭素繊維強化複合材」を使用したことです。従来の炭素繊維強化複合材は、炭素の糸でできた織物にプラスチックを浸透、硬化させるため「オートクレーブ」と呼ばれる巨大な圧力釜で熱処理をする必要がありましたが、真空樹脂含浸製造法ではこれが不要となり、工数を大幅に削減できます。

 さらに双発搭載するエンジンに、アメリカのプラット・アンド・ホイットニー社製PW1000Gを選定。PW1000Gは三菱航空機のMRJにも搭載されている、非常に燃費効率に優れた「ギヤードターボファン(GTF)」エンジンです。

 MS-21はこうした先進的なテクノロジーの採用によって、初飛行前ながら175機の確定受注を含む、およそ300機のオーダーを得ることに成功しています。

 しかし問題は、これらの受注はもっぱらロシアのエアラインまたはリース会社で占められているということです。今後、外国へのセールスが大きな課題となります。

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最終更新:8月22日(月)11時32分

乗りものニュース