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ミュージカル俳優の山崎育三郎が名曲カバー、歌声から見えた人間力と多彩な表現力

MusicVoice 8/21(日) 17:43配信

 俳優の山崎育三郎が24日に、音楽アルバム『1936 ~your songs~』を発売する。存在力のある演技と甘いマスクで“ミュージカル界のプリンス”とも謳われる彼が挑むのは「愛燦燦」(美空ひばり)や「桜坂」(福山雅治)など日本名曲のカバー。今やミュージカルの世界のみに留まらず、高視聴率ドラマ『下町ロケット』(TBS系)の真野役をはじめ数々のドラマで存在感を放ち、バラエティ番組出演などマルチな活躍を見せている。こうした活動の原動力となる魅力は歌にも表され、このカバー作品からは彼の、ミュージカル色だけではない多彩な表現力と器用さ、届ける事へのこだわり、そして人間力が覗く。

【写真】東京国立博物館を深夜に貸し切って撮影をおこなったというMVの一コマ

■ミュージカル俳優としての屈強な基礎体力

 「ミュージカル界のプリンスが歌う日本の名曲」というと、どうしても「ミュージカルのような歌い方」という印象が先行する。物語を全力で表現するとともに、情熱的に訴えかけるような、ものすごく安直に表現をすれば「ラアァ~!!」という会場の隅々まで届かせるに必要な目の覚めるような声量だ。「サラッと歌い上げる」とは少し異なる。

 しかし、本作で聴く山崎育三郎の歌唱はそうではなかった。そして、そこには彼の様々なバックボーンや活動の幅から形成される「山崎育三郎の人間性」がそのまま表現されたように感じられる。先のような、ミュージカル調の歌唱法ではないが、その芯にはしっかりとミュージカルで培った屈強な基礎体力が垣間見える。

 ポップス歌手やロックボーカリスト、ソウルシンガーとは発声方法からして違うミュージカルの歌唱は、歌としての基礎から、滑舌、声量、ブレスなど、様々な基礎的要素に強靭なものが求められる。舞台で培ったそれらの歌唱スキルは、今作での収録曲、古くは美空ひばりさんの名曲「愛燦燦」、90年代の大ヒット曲であるKANの「愛は勝つ」、福山雅治の「桜坂」、そして、近年のゴールデンボンバーの楽曲「女々しくて」など、それらへのフレキシブルな対応を可能にしている。

 そして、山崎育三郎のボーカルの特性は、(1)バラード曲では繊細な説得力(2)アップテンポ曲では力強く伸びやかな艶と瞬発力(3)歌声の音域はどこかに偏るわけでもない――、と挙げられる。言うならば“トータル的バランス”が非常に優れたものであり、それであって個性もある。「強いて言えばこの歌手っぽい」と紹介したいところだが、驚くほどに「似ている歌声が出てこない」ということに気づかされる。

■フィーリングで実感する山崎の歌の魅力

 ミュージカルという彼の中心的な活動で培った技術、そして、その魅力に加え、バラエティ番組などで見せる器用な立ち回りや上品な愛嬌、ドラマで演じる時の存在感など、表現や演じる事に対するスキルが、本作では山崎育三郎の持つそれらの魅力とともに「歌唱」に落とし込まれているように思える。

 そういった総合的な“味”を歌で表現し、一つのパッケージに収める事は、技術や様々なキャラクターを持つ人物ほど難しい。伸びしろの深い才気溢れるタレントほど、「自分にある色のうちのどれか」を選択し、色濃く出す事が多い。それは、自身の武器を先攻させる事の重要さを誰よりもよく理解している為ではないだろうか。

 一方、山崎育三郎は本作で、自身の「数ある色のなかでも強めの色」を突出して出すのではなく、それら“色=持ち味”をバランス良く取り出して、トータル的に人間力をもって歌唱に落とし込んだように思える。

 それで「具体的にどういう歌になったか」というのは、言葉では説明が出来ず、その人間性を、その人間と接する事でフィーリングを得る事と等しく、その歌唱を聴く事でしか実感が出来ないのではないだろうか。そうでない場合は「ミュージカルの人が歌ったカバー集」の一言で片づけられてしまう。

 山崎育三郎は、あくまでもミュージカル俳優という確固たる根の部分があるからこそ、多方面で様々な能力を発揮しつつも、“山崎育三郎の芯の部分”がブレる事はなく歌唱に人間力が滲み出せるのではないだろうか。所帯を構えた男は強い、という言葉にも似ている。迷いがなくどっしりと構える、そこへの安心感にも通じる。

■山崎育三郎の人間力が感じられる本作

 自身初の自叙伝『シラナイヨ』では彼の意外な過去と体験が綴られている。ミュージカル俳優としての実績。ドラマ、TV出演でも活躍するマルチな面。ミュージカル俳優としての歌唱力、表現力を感じる事も出来れば、役者としての演技力や対応力、さりげない個性の滲み出し方、聴き手を突き放さず、落としどころを理解しているタレント性、トータル的なバランス感――。

 それらはしっかりと歌唱として落とし込まれ、「日本の名曲カバー集」として仕上がっている。これら名曲に押しつぶされない、しっかりとした個性と人間力があって歌いこなすことができる。そして、彼は自身のバックボーンをもって歌い切り、更に「山崎育三郎を表現した作品」という感じにも仕上っている。

 山崎育三郎の“芯”と言えるミュージカル俳優としての実力、歌唱、表現力。これらを充分に響き渡らせている本作は「ミュージカル俳優がカバーした歌唱」というただの一色では染まっていない。山崎育三郎の多方面の活動や、これまでの経験や挫折、葛藤を経て培われた“人間力”こそが彼の歌声の倍音として滲み出ている。(文・平吉賢治)

■収録曲

収録曲
1:青春の影
2:君は薔薇より美しい
3:TOKIO
4:Forget-me-not
5:愛燦燦
6:愛は勝つ
7:糸
8:桜坂
9:奏(かなで)
10:女々しくて
11:僕こそ音楽<ミュージカル「モーツァルト!」より>※ボーナストラック

最終更新:8/21(日) 17:43

MusicVoice

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