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【リーガ開幕展望】レアル・マドリード 異例の大型補強なしも戦力は充実。“監督”ジダンの真価が問われる

SOCCER KING 8月21日(日)17時0分配信

 終わりよければすべてよし。昨シーズンのレアル・マドリードは、そのことわざが最も似合うチームだった。ラファエル・ベニテス体制はわずか半年間しか持たず、大失敗。今年1月にクラブレジェンドのジネディーヌ・ジダンを急遽、新監督に任命したときでさえ、現地では賛否両論が渦巻いていた。しかし、フロレンティーノ・ペレスが打った一手は、結果的にチャンピオンズリーグ制覇という最高のご褒美をクラブにもたらした。よほどの幸運の持ち主なのか、それとも未来を読む達人なのか。いずれにせよ、スポーツディレクターの役職を設けていないレアル・マドリードというクラブにおいて、人事権を持っているのは、この69歳の会長である。

 ところが、今夏はここまで、そのペレス会長が非常におとなしい。ここまで移籍金を支払って獲得した選手は、昨シーズンまでユヴェントスでプレーしていたFWアルバロ・モラタ、ただ1人。そのモラタにしても、クラブのカンテラーノであり、買い戻しオプションを行使したに過ぎない。過去数年間に、ルカ・モドリッチ、ギャレス・ベイル、ハメス・ロドリゲス、トニ・クロースなど、国外から旬のスター選手を乱獲してきたことを考えれば、現状は異常事態とも言える。

 なお今年1月、18歳未満の補強に関してのルール違反があったとしてFIFA(国際サッカー連盟)から言い渡された補強禁止処分は、撤回されたわけではない。FIFAへの異議申し立てを行ったために今夏の処分執行は見送られただけで、2017年冬と2018年夏には一切の補強ができなくなることが濃厚だ。だからこそ、今夏の移籍市場では大型補強を行うとみられていたが、その予想は全く裏切られた。

 たしかに、ポール・ポグバ(マンチェスターUへ移籍)やエンゴロ・カンテ(チェルシーへ移籍)を“取り逃した”という事実はある。いずれもジダン監督が希望した選手たちだが、マドリードにはやってこなかった。だが、それをもって現地のメディアやファンが「補強の失敗」と騒いでいないのは、チームがすでに十分な戦力を有しているからだ。

 昨シーズン、計算できるバックアッパーが不在だったのは、左サイドバックとセンターフォワード。ただ今夏に、ファビオ・コエントランがレンタル先のモナコから復帰し、さらにモラタも帰ってきたことで不安は解消された。モラタはウイングとしても起用できるため、先日パリ・サンジェルマンに放出されたヘセ・ロドリゲスの代役を務めることもできる。そしてマルコス・アセンシオの復帰で、中盤の層も厚くなった。唯一の不安要素は、カゼミーロと似たタイプの守備的MFがいないことだが、ジダン監督はプレシーズン中に4-4-2のシステムを試しており、いざとなれば自陣のバイタルエリアを2人のMFでカバーすることで一定の守備力を保つ考えのようだ。

 戦力バランスという点では、大きな穴はなく、リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの“MSN”にかかる比重が大きいバルセロナを上回って、リーガナンバー1。何より、彼らはCL優勝チームである。勝っているチームを大きく変える必要がない、と考えるのは当然のことだ。

 そんなレアル・マドリードだが、チーム内の雰囲気も良い。8月9日には、延長戦の末にセビージャを3-2で下して、UEFAスーパーカップを制覇。その試合後、ジダン監督が記者会見に応じている最中に、優勝を喜ぶ選手たちが会見場に乱入して、指揮官に水を浴びせて勝利を祝う一幕があった。選手と監督がいかに良好な関係を築いているのか、それを象徴するようなシーンだった。地元のファンも、英雄ジダンが率いるチームを全力でサポートしている。

 もっとも、順風満帆に見えるレアル・マドリードであっても、この先の成功が保証されているわけではない。特に今シーズンは、ユーロ2016とコパ・アメリカ・センテナリオが終わった直後のシーズンであり、12月には日本で開催されるFIFAクラブワールドカップにも参加する。年末までの過密スケジュールをどう乗り越えるかは、大きな課題だ。

 過去を遡れば、前回CLで優勝した直後の2014-15シーズンには、FIFAクラブワールドカップで優勝を達成するまで連勝街道を歩んでいたものの、年明け以降にパフォーマンスレベルが急降下。最終的には主要タイトルを1つも取れず、シーズン終了後にカルロ・アンチェロッティ監督がクラブを去った。同じ轍を踏まないためにも、初めてプレシーズンからトップチームを指揮することになるジダン監督には、年間を通したチームマネジメントが要求されるだろう。

 そしてそれは、“監督”ジダンとしての真価を問われることにもなる。昨シーズンは抜群のカリスマ性でクラブを取り巻く空気を一変させ、良い流れのままにゴールテープを切れば良かった。だが、長いシーズンを乗り切るためには、より戦略的なマネジマントが必要になってくる。ここまでは、モチベーターとして優れた能力を披露しているが、戦術面に関してはコーチ陣に一任しているという声もあり、まだ絶対的な評価を確立したわけではない。就任半年足らずで欧州の頂に到達することはできたが、それが偶然でなかったことを証明しなければならないのだ。

 今のところ選手はジダンについてきている。だが、補強がほとんどなく、選手の顔ぶれがここ数年間変わらないため、チーム内にマンネリが生じたとしても不思議ではない。ベンチ降格に伴って、移籍の噂が絶えないハメス・ロドリゲスとイスコが反乱分子となる可能性も否めない。また、クラブと代表で共に欧州王者に輝いたC・ロナウドの今後も気になるところだ。彼の性格上、ビッグタイトルを取ったことによるモチベーション低下は考えにくいが、ユーロ2016決勝で痛めた膝の状態は心配である。来年2月で32歳を迎えるエースがもしフル稼働できない場合、ジダンはどのように対応するのか。監督としての本格デビューとなる今シーズンもまた、ジダンの一挙手一投足からは目が離せない。

 なお新シーズンも、クラブが狙うのはCL制覇になるだろう。最後にリーグ優勝を成し遂げたのは、ジョゼ・モウリーニョ体制の2011-12シーズンまで遡り、それ故、「リーグ奪還が目標」という声は当然聞こえてくるはずだが、常にサッカー界のトップを走ってきた“白い巨人”にとって、「史上初のCL連覇達成」という目標ほどモチベーションをかきたてられるものはないからだ。

 そして、仮にFIFAの補強禁止処分が確定し、その状況下でCL連覇を達成することができたら……。その時、ペレス会長はいつも以上に得意げな顔でビッグイヤーを眺めているはずだ。

(記事/Footmedia)

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最終更新:8月21日(日)21時43分

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