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21歳、今季最年少優勝の大物ぶり【舩越園子コラム】

ゴルフ情報ALBA.Net 8月22日(月)10時41分配信

ウインダム選手権は松山英樹が好発進を切り、米ツアー3勝目に期待を抱かせてくれた。

 松山は全米オープンでも全英オープンでも予選落ちを喫し、6月7月は振るわなかったが、全米プロでは4位に食い込み、今週も「ショットは0%から5%へ戻った感じ」と復調しつつある。しかしパットは「初日50だとしたら、それが日に日に無くなって、今日は3%ぐらい」と苦しみ、「今のパットでは(優勝は)話にならない」。

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 その言葉通り、2日目に首位に浮上した韓国の21歳、キム・シウに3日目も最終日も迫ることはできず、優勝は若手に譲り、松山は3位に終わった。

 もっとも絶好調だったキムに迫ることができなかったのは、松山のみならず2位のルーク・ドナルド、松山と並んで3位に終わったブラント・スネデカーなど他の上位選手も同じだった。逆に言えば、突出したキムの“一人旅”ぶりがあまりにも見事すぎた。

 そう言えば、米ツアーにはメンバーになるための年齢制限があるんだった――そんなことをキムを眺めながら久しぶりに思い出した。米ツアーのQスクール(予選会)は2013年からは下部ツアーへの登竜門に変わったが、以前はずっと米ツアーへの一発勝負の登竜門だった。

 その“最後の一発勝負”となった2012年のQスクールにキムは17歳で挑み、20位に食い込んで翌年の米ツアー出場権を獲得。しかし、18歳に満たなかったために米ツアーメンバーにはなれず、2013年6月の18歳の誕生日を待って、シーズン残りの8試合に出場した。しかし、予選落ち7回、棄権1回の惨憺たる成績でシード落ち。2014年と2015年は下部ツアーで腕を磨いた。

 そして昨年、下部ツアー23位となって今季の米ツアー出場権を獲得。初めてフル出場が叶い、ソニーオープン4位、バーバソル選手権はプレーオフで負けて2位と上位入りを経験し、今大会でついに初優勝を飾った。

 幼いころからゴルフの指導をしてきたのは父親だが、練習を強いられたことは一度もなく、「すべては自主的」。その中で、韓国ジュニア選手権を4年連続で制覇した。

 年齢制限で米ツアーメンバーになれないことを知りながら2012年のQスクールに挑んだのも「いい経験になる」と思い、キム自身が決意したという。

 師と仰いでいるのは同じ韓国出身の大先輩、崔京周。今年のバーバソル選手権で惜敗した後、崔から「負けたっていい。次に勝てば、それでいい。キミにはこれからたくさんのチャンスがあるんだよ」と励まされ、悔しさを噛み締めながら「はい」と答えた。

 今日の最終日。2位に6打差を付けて折り返したが、後半に入ると10番、13番、14番と続けざまにボギーを重ね、表情が険しくなった。そのときもキムは自分自身にこう言い聞かせたのだそうだ。

「いいんだ。この後にまだパー5が残ってる。そこでバーディーを取れば、それでいい」

 起こってしまった事実。叩いてしまったスコア。済んでしまったことにクヨクヨするのではなく、その後に残されているチャンスに気持ちを集中する。そんな姿勢をキムはあのQスクールや今年の惜敗、師の教えから学び取り、実践した。

 まだパー5が残ってる――その言葉通り、15番のパー5でバーディーを奪い、72ホール目はダメ押しのバーディーまで奪って、2位に5打差を付けて圧勝した。

「フェデックスカップ125位にすでに入っていたから失うものはないと思って攻め続けた」

 淡々とした様子に度胸の大きさが感じられる。初優勝を挙げた今、次なる目標は、この優勝で得たシードが切れる前の「あと2年のうちに、もう1勝挙げてさらなるシードを獲得すること」。

 地に足の付いた21歳。おそらくは大物だ。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

(撮影:GettyImages)<ゴルフ情報ALBA.Net>

最終更新:8月24日(水)12時29分

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