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「ブランドビジョン」を構成する“7つの要素”とは

ITmedia ビジネスオンライン 8月22日(月)6時10分配信

 「独自性=(らしさ)」こそ「ブランド」の源泉であること。「独自性」を発見し、「独自性」を磨きあげていくことが、その企業が成長し続けるために不可欠であること。その「独自性」は、常にビジョンとして現在から未来へ向かって思い描かれ、実行されるべきこと。そして、すべての照準は“社員と会社がお互いに幸福である状況”に定められなければならないこと。

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 これが、前回まで述べたことです。

 では、この「ビジョン」をどのように設定していけばいいのか、より具体的に、「ビジョン」の構造について考えながら説明したいと思います。つまり、思い描くべき“ブランドビジョン”を構成する要素とは何か、ということです。

 この要素は、次のようになります。


1. そのブランドのポテンシャル/強み(潜在的能力)
2. ブランドのもつ人格(パーソナリティー)
3. 象徴的なことがら(シンボル)
4. ブランドが具体的に提供するもの(機能的価値)
5. 喜んでもらいたい人の価値観(ターゲット価値観)
6. ターゲットがいだく喜び(情緒的価値)
7. ブランドとターゲットが築くべき関係性(関係性)

●ブランディングがうまくない企業はパーソナリティーが曖昧

 まず、1の「潜在的能力」とは、そのブランドの背景の力です。「機能的価値」が形に具体的に表れた価値であるのに対し、潜在的にそれを支えているファクトのことです。その会社にしかない技術や特許、その商品ならではの強み、その地域にしかない特徴といったものです。会社であれ、地域であれ、その歴史であったり、そこで育まれてきた風土や精神性というようなものも、ここに含まれるでしょう。個人であれば、生まれ持った特性や、これまでの経験、育った環境というようなことです。

 「パーソナリティー」は、7の「関係性」とも密接につながってきますが、言うまでもなくブランドが持つ性格や人格です。ブランドの体現する独特な気風(きっぷ)であり、お客さまにとってどんな雰囲気の存在でありたいかということです。

 個人を相手に顧客の要望に迅速な対応力が求められる不動産会社や保険会社であれば「フットワークの軽い御用聞き」が理想的かもしれませんし、食通に愛される一流レストランなら「あくなき追求を続ける料理人」というようなパーソナリティーを形成するべきでしょう。

 ブランディングがうまく進まない企業は概して、このパーソナリティーが曖昧です。その会社の“風貌”が思い浮かばない。根強い人気のあるブランドやお店というのは、技術や商品の確かさだけでなく、世の中から見た“風貌”がハッキリしているはずです。

●何を約束し、何を保証するのか

 「シンボル」は、文字通りそれを“象徴”するものであり、それを見るとそのブランドを想起することがらです。一番分かりやすいのはロゴマークでしょう。ただ、これは簡単な話ではありません。なんとなく会社のロゴマークの一つもあったほうがいいのかなという感覚でマークを設定し、取りあえず自社製品につけてみた、ということでは困るのです。

 商品に付与されているシンボルとしてのマークは、A社が製造したからA社のマークをつけましたよということだけではありません。そのマークが与えられていることによって、お客さまや社会に“何を約束し、何を保証するのか”という意味合いが重要なのです。誰もが知っている有名なものを挙げれば、ルイ・ヴィトンのあのLとVを組み合わせたロゴマークや、アップル社のリンゴのマークです。

 サービスを提供するような会社であれば、そこで働いている「人」がシンボルになる場合もあるでしょう。運送会社である佐川急便のイケメン「セールスドライバー」を扱った『佐川男子』という書籍がずいぶんと話題になったそうですが、営業先でお客さまとやりとりする現場においては、まさに「人」こそがシンボルになるのです。

 あるいは、経営者がその会社のブランドを背負ったシンボルとして世の中に露出する場合もあります。「ジャパネットたかた」の創業者・高田明氏もそうですし、美容関係や飲食業界でも、そうしたケースはしばしばあります。経営者が持っている優れた技能や、雰囲気、人柄、バックボーン、信頼などがその会社を際立たせていくのならば、経営者自身がシンボルになることもあり得るでしょう。

 いずれにせよ、それがロゴマークであれ、社員や経営者という「人」であれ、シンボルというのは単についていればいいとか、カッコよければいいとか、目立てばいいというものではありません。シンボルとは、“ブランドがターゲットと共有することがら”そのものなのです。iPhoneやiPadについている、あの小さなリンゴのマークがそれだけで人々の心をザワザワとさせるのは、そこにスティーブ・ジョブズの卓抜した発想を想起するからなのです。

 1の「潜在的能力」、2の「パーソナリティー」、3の「シンボル」を背景にして、そのブランドが提供する具体的なモノやコトが4の「機能的価値」です。そのブランドを通して得られる体験や経験といった具体的な価値です。

(井尻雄久)

最終更新:8月22日(月)6時10分

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