ここから本文です

『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV』発売直前インタビュー――開発秘話からアップデート情報、懐かしのネオジオ話まで!

ファミ通.com 8/22(月) 12:02配信

文・取材:編集部 豊泉三兄弟(次男)

●開発秘話からアップデート情報、懐かしのネオジオ話まで!
 2016年8月25日にSNKプレイモアより発売予定のプレイステーション4用『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV』(以下、『KOF XIV』)。本作はSNKプレイモアを代表する人気対戦格闘ゲームの最新作だ。発表当初、ファミ通.comでは、プロデューサーである小田泰之氏に本作のコンセプトや開発に向けての意気込みをうかがった。今回は、いよいよ発売を迎える本作の開発スタッフに開発秘話をお聞きした。※取材:8月上旬

●約2年間におよぶ開発を終えて
――前回のインタビューで小田さんはおなじみですので、まずは黒木さん、副田さん、安藤さんそれぞれの自己紹介をお願いします。

黒木 もともと旧SNKにデザイナーで入社しまして。小田とは同期で、学校も同じでした(笑)。『餓狼伝説』や『龍虎の拳』シリーズを作っていて、最後は『餓狼MOW』のモーションを担当していました。その後はディンプスに移り、さまざまなタイトルに関わって、『KOF XIV』のアートディレクターとしてSNKプレイモアに戻ってきました。

副田 『KOF XIV』ではキャラクターアニメーションを担当させていただいてます。もともとネオジオが発売した年に旧SNKに入社しました。初代『餓狼伝説』開発当時でしたので、デビュー作は『餓狼伝説』です。その2年後に小田らが入ってきて、以後はほぼ同じチームで『餓狼MOW』までいっしょに。その後は同じくディンプスに入り、そこでは格闘ゲームの3Dキャラクターモーションを担当していました。

安藤 私は皆さんとは違って、『KOF 94’』が出た当時は小学生でした(笑)。SNKプレイモアに入る前は、ガラケー時代から現在のスマホまでモバイルゲームを作っていました。たまたまその会社は元SNKの方々が作った会社だったこともあり、モバイルゲームで格闘ゲームを作る機会が多々ありました。本作ではおもにバトル部分のプログラムを担当しました。

――では開発を終えての心境をお聞かせください。

小田 開発自体は終えたのですが、メディア対応やイベントであったりと発売に向けた準備がありますので、まだ終わった感じはしていません。

黒木 僕は、正直よく終わったなという感じです。最初の状況が状況だっただけに、グラフィックを担当したデザイン側からはそういった気持ちですね。

安藤 プログラマーとしてもほっとしています。でも振り返ってみると、早かったなと思うのと同時に、発売が近づいているのでドキドキしています。体験版が配信されていろいろな反響をいただいているのですけど、まだ7キャラクターだけなので製品版が発売されたらどうなるのだろうと。

――開発期間は約2年とのことですが、長かったですか? 短かったですか?

安藤 私が開発に参加したのは2014年9月ころだったので、短かく感じました。私がおもに担当したバトル部分がそのころからスタートでしたのですが、発売まで1年半くらいしかなく、50キャラクターで単純計算すると1キャラクターあたり11日くらいしかないので、間に合うんか? と(笑)。

――そう考えると50キャラクターはものすごい数ですね(笑)。

安藤 ちょっとした仕様変更や調整を加えるにしても、1か所につき×50の確認が必要になるんですよ。何をやるにしても×50がつきまとうので……数の暴力ですよね(笑)。もちろんツール上で処理できるようにはしているのですが、『KOF』は個性的なキャラクターが多いので、個別対応せざるをえないキャラクターが開発を進めるといくつも出てきまして、開発の最初のころは50キャラまで後何キャラやれば……という状況でしたね。

――グラフィックを担当した黒木さんとしてはいかがでしたか?

黒木 2年間、長いようで短かったですね。小田と私は最初から開発チームにいたんですけど、デザイナーが3、4人しかいないのに「50体作るぞ!」と小田がとんでもないことを言いだして、「おかしいだろ!」と(笑)。

――(笑)。個人的なイメージですけど90年代は毎年出していてたいへんだったと思うのですが、あの当時に比べるといかがでしたか?

小田 当時は開発期間が短かったですけど、対戦部分を作ればいいだけですし、イチから作っているわけではないですからね。一方、『KOF XIV』は家庭用のゲームモードやネットワークまわりがあったり、開発期間は長いけどその分ボリュームがすごいですから。とはいえ、当時はシリーズを重ねるごとに発売日がドンドンズレ込んでいたからたいへんだったのかな(笑)。

――確かに、チュートリアルやコンボのチャレンジが入ってたり、通信対戦があったりと、家庭用ならではのモードが多いですもんね。

小田 それがモードだけではなく、ローカライズもたいへんなんですよ。これは書いておいてほしいんですけど、皆さんが想像しているよりはるかにローカライズはたいへんなんです(笑)。

――そう考えるとよく終わりましたね。

黒木 本当ですよ。当初は開発環境がまだ整っていなかったんです。弊社はゲーム開発からしばらく離れていたので、グラフィックまわりを作るシステムがまったくなく、それをゼロから構築しながらの作業だったので、本当によく終わったなと。

副田 『KOF XIII』の素材を使ったんじゃないのか? という声を耳にすることがあるんですけど、まったく使っていないんですよ。

小田 使えるなら使わせて欲しいですね(笑)。

副田 まったく流用ができなかったので、すべてをゼロから。

小田 キャラクターは顔のモーションを作るのが手間だと思ったので、じつは作業を減らすために仮面など表情のないキャラクターを3人入れたんです。僕のささやかなやさしさです(笑)。

黒木 実際、開発が軌道に乗り出したのが、2015年末にアメリカのサンフランシスコで行われたPlayStation Experience(PSX)で発表させていただいたころなんです。あのときは、まだ何もできていない状態だったので、世界中からいろいろな反響をいただきました(笑)。

小田 大きい会社だと“バーティカルスライス”なんて呼ばれる手法で開発を進めることもあるんです。たとえば、1ステージと2キャラクターだけを初めに完成させて、それを使ってプロモーション展開する手法なんですけど、それを格闘ゲームでやると開発に無駄な時間が生じてしまうんですよ。それにうちは大規模な会社ではないので、従来通りすべてを並行して開発を進めてクオリティーを上げていき、最後に完成版ができあがるという作りかたをしていました。だから最初に発表させていただいたものは、本当に開発初期段階のものだったんです(笑)。

副田 PVがが公開されていく過程でグラフィックが変化していたのは、開発側も試行錯誤している途中だったからなんですよ。

――2015年9月に最初のムービーを公開したときは、グラフィック面でいろいろ言われることがあったと思うんですけど、それについては?

黒木 正直、言われるだろうとは思っていました。さきほども言いましたが、グラフィックのシステムがまったくなかった状態ですので、当然そうなるだろうと。まだまだクオリティーアップは図れると思うんですけど、いまの我々ができる中での精一杯のものは作れたと思っています。

小田 2015年の東京ゲームショウは映像出展だったので、ファンの皆様から不安の声もありましたが、PSXで試遊台を出展したら評判がよくて、方向性は間違っていなかったという手応えはありました。

●『KOF XIV』はシリーズのいいとこ取り
――発表当初は映像だけなので、3Dグラフィックになったから操作感が変わってしまっているのではないか? という不安もあったと思うんです。

安藤 そうですね。操作感は変わらないように注意しました。システム面からすると、ゲームデザイナーの渡邉君と話し合って「まずこれが『KOF』や」というものを目指そうと。それで自分の中で「『KOF』とは何?」と考えてみたとき、『KOF』は作品によってシステムがガラっと変わっているので、その時代その時代でやり込んだ人によって『KOF』がどんなものなのかというのは違うと思ったんです。『KOF XIII』をプレイしていた人は『KOF XIII』が『KOF』という人もいれば、『KOF 98’』が『KOF』だという人もいるでしょうし、それで今回はいいとこ取り。シリーズでも人気の高い『KOF 98’』、『KOF 2002』、『KOF XIII』のいいところを取って、現役でプレイされているユーザーさんはもちろん、昔プレイしていたユーザーさんが触ったときに、「『KOF』や!」と言ってくれるようなものを目指そうと考えました。そこから『XIV』らしさが出せればと。

――『XIV』らしさとはどういったところなのでしょうか?

安藤 ゲームデザイナーは細かいところまで考えていると思うんですけど、個人的には“ふっとばし攻撃”ですね。地上の相手にヒットさせると、相手を吹き飛ばして壁に張り付けられるので、これまでとは違った使いかたができるかと思います。あとは、“直前ガード”。成功するとパワーゲージが増加して、ガードゲージの減少量が少し減るくらいの効果ではあるのですが、いままでの『KOF』にはなかったスパイスになり得るのかなと。

――個人的には『KOF XIII』はシステムが多くて難しかった忙しいイメージがあったのですが、『KOF XIV』はかなり整理された印象があります。

安藤 そうですね。自分も格闘ゲーム自体はずっとやってはいるんですけどうまくはないので、『XIII』はちょっと難しかったかなと。でも今回はかなりわかりやすくなっていると思いますよ。咄嗟に何をやったらいいのかわからない人は、Aボタン連打の“RUSH”でコンボを決めてもらえればいいですから。

小田 RUSHはバランスというか、位置づけが難しかったですね。やっぱり便利すぎると、上級者がうまいこと利用してえぐいことができちゃうかもしれないので、かなり気を使って調整した部分ではあります。

安藤 技の判定のつけかたも苦労しましたね。まず2Dの場合、このポーズを3フレーム表示したらつぎのポーズを表示するといったように、数フレームごとに絵が切り換わっていくので、切り換わる絵1枚1枚に判定をつけていくような感じでよかったんです。でも3Dの場合は、モーションがヌルヌル動くので、見た目通りに判定をつければいいわけじゃないんです。見た目通りに判定をつけると、技が当たるキャラクターと当たらないキャラクターが出てきてしまったり、その辺の調整はしんどかったですね。

小田 細かいところでは、キャラクターの座標のつけかたも苦労しましたね。2Dは絵が動いても座標をコントロールしやすいのですが、3Dはモデルの見た目通りにつけていると不具合が生じることもあるんですよ。

副田 あとはやっぱり50体いるので、身長差もたいへんでした。チャンとチョイなんかぜんぜん違うじゃないですか(笑)。ドット絵ならそこまで気にならなかったんですけど、3Dモデルだとリアルな身長差が出てしまって絵的なウソをつけないんです。たとえば、脚の長いキャラクターで旧作と同じ蹴り技を作ると、蹴りが長くなってしまうんです(笑)。そういった調整がたいへんでしたね、50体もいるので。

――50体というのはいろいろなところで苦労につながっているんですね。

副田 僕たちがぶつかった壁のひとつが、武器を所持したキャラクターですね。棒や扇子、剣やら鷹、こういった固有のギミックを持つキャラクターは、他のキャラとは違う仕組みで作る必要があるので相当苦労しました。

黒木 たとえば、ネルソンは義手があるので、1P側と2P側でモデルを反転させると義手の位置が逆になってしまうんです。そうならないようにモデルを2個作ってあるんですよ。

安藤 すごく手間がかかるので、「もう両方義手でええんちゃう?」と(笑)

副田 ダメージ演出も、技を食らう相手の「身長や武器」の都合に合わせる必要があるので、不具合が出ないようにカメラを調整するのに苦労しました。

黒木 デザイナーやモーションチームはこういうモーションいいねとのびのびやってるんですけど、プログラマーチームは地獄だったと思います(笑)。

●秒間60フレームのこだわり
――初のプレイステーション4タイトルということで苦労したことはありますか?

黒木 グラフィック的にはものすごいんですが、処理が難しかったですね。いまは可変なしの秒間60フレームで動いていますけど、最初のころは常時60フレームを保てなかったんですよ。

――常時60フレームを保つのは難しいんですか?

小田 メチャクチャたいへんでしたね。デザイナーには申し訳なかったけど、常時60フレームを保つためにエフェクトだとかグラフィックの要素はかなり削りました。

安藤 プログラムもできるだけ軽く軽くと、ひたすら最適化する作業が続きましたね。

黒木 プログラマーさんが軽量化すると、デザイナーが重くして、またプログラマーさんが軽量化して……いつ終わるねんと(笑)。

――やはり格闘ゲームでは、60フレームを維持することが最優先に?

小田 演出シーンなど、操作が介入しないところは多少落ちてもいいかなと思うんですけど、通信対戦とかは処理の変動が通信の負荷になってしまうので、できるだけ軽くするようにしました。

安藤 今回は通信対戦のルームに12人入って、テキストを打ったりできるんですけど、誰かひとりが1フレーム落ちるだけでも相当な負荷になりますからね。

――やはり通信対戦の品質には相当なこだわりを持って開発が進められたのでしょうか?

小田 通信まわりは発売してみないとわからないのですが、チェック段階ではsteam版『KOF XIII』より快適にしてあるので、一般的なクオリティーは保っているはずです。

安藤 ただ、通信対戦はそれぞれの環境によって大きく変わってくるものなので、もしかしたら相性の悪い環境が出てくるかもしれません。

小田 もしもそういったことがわかったら、早めに対応できるようにしたいと思います。まずは不具合がでないことを祈っています。

――さきほどルームに12人は入れるとありましたが、みんなでワイワイやれるのは楽しそうですね。

小田 MAXで12人入れるのは楽しいと思いますよ。観戦者がガヤを入れられるので、そういうのも含めて楽しんでほしいですね。最近はゲームバーなどでお酒を飲みながらエンジョイプレイすることも多いじゃないですか。ああいった雰囲気がネット上でもできれば理想かなと思います。

●ロックはなぜ『KOF』シリーズに登場しないのか?
――今回は新キャラクターが非常に多く、新旧の割合はどうやって決めたのでしょうか?

小田 う~ん、結果的にこうなったという感じですね。超保守的なラインアップと、何だこれ!? というようなラインアップを作ってみて、それを比べながら置き換えていきました。あとは、南米や中国での『KOF』人気を加味して、そのあたりのチームを加えようと。じつは、サイコソルジャーチームが中国チームだと、中国のファンに認知されていないんですよ(笑)。

――それでサイコソルジャーチームと別で中国チームを作ったんですか?

小田 そうですね。伝統的な中国系だと少林寺拳法とかあるじゃないですか。ああいうのはもうありふれているので、違う切り口にしようと。それに実際に中国に行ったら、もうお洒落な人しかいないですからね。だから伝統的な中国スタイルというよりは、カッコイイキャラクターを。

――そうなんですね。

小田 たとえば海外の人が、伝統的な日本のスタイルというと、お相撲さんとかチョンマゲとかをイメージすると思うんですけど、京や庵は違いますよね。だからそういったイメージで作るのはよくないかなと。だからボクサーキャラのネルソンも、マイクタイソン系ではなく、主人公に匹敵するようなカッコイイキャラクターにしてありますし。

――確かにカッコイイですね。でもSNKさんのゲームってボクサー多いですよね(笑)。

小田 うちはボクサー多いですね。最終的にはボクシングゲームを作るかもしれません(笑)

――(笑)。キャラクターは小田さんが中心になって作ったのでしょうか?

小田 僕というよりは、プランナーが中心になってアイデアを出して、デザイナーチームと調整しながら設定やデザインを作りあげていきました。

黒木 じつは50体のデザインを作るときに、キャラクターをカテゴライズしたんですよ。ゲーマー向け、ライト層向け、女性向け、動画を見て楽しむ人向けなど。それでテリーだったらこのカテゴリーとかね。

――どのカテゴリーに入るかでキャラクターのイメージが大きく変わりそうですね。

黒木 どのキャラクターがどのカテゴリーとは言えませんが、カテゴリーによってデザイナーを変えることはありました。

――上がったデザインに対するスタッフの反応はいかがでしたか?

黒木 最終的な判断は小田が下すのですが、デザイナーチームが上げたデザインに対して、メンバーからあれは嫌だ、これは嫌だと言われたことはなかったですね。

――イメージ通りのデザインだったんでしょうね。またキャラクター選出の話に戻すのですが、個人的には『餓狼伝説』シリーズの人気キャラクターである、山崎やブルー・マリーが登場しないのは意外だと感じたのですが?

小田 ふつうに人気どころをラインアップしていったら、そのへんのキャラクターは絶対に入ってくるんですよ。もっと言えば、牙刀やジェニーも入れて……と。そうすると僕の中では、「あれ『餓狼伝説』作ってる?」となってしまうんですよ(笑)。それよりはもっと『KOF』感が欲しくて、べつのキャラクターを入れようと。

――そういうことだったんですね。

小田 ただ、作っているときは気づかなかったんですけど、新キャラクターのシュンエイと明天君をタンフールーの弟子にしたら、これ『餓狼伝説』のキャラちゃうん?と(笑)。

――(笑)。『龍虎の拳』シリーズからの登場も意外と少ないですよね?

小田 じつは、『龍虎の拳』からジャック・ターナーやジョン・クローリーも出したかったんですけど、「誰ですかそれ?」と言われそうで(笑)。

黒木 過去には藤堂香澄や如月影ニも出ましたけど、いま出したら如月影ニが『龍虎の拳』のキャラクターだと知っている人が何人いるのか……。それもあって、今回はキャラクターのデザインを大きく変えたというのもあります。タイトル自体が20年以上前のものなので、若いユーザーは『KOF』自体を知らない人もいますから。シュンエイや明天君なんかはそういったユーザーを意識したデザインに。

――『龍虎の拳』を知らないとは残念ですね。ドンドン続編を出さないと、ほかのタイトルも忘れられてしまうのでは?

小田 続編を作るならみんな忘れている前提でイチから作って、完全新作として売り出しますよ(笑)。

安藤 私は当時ユーザーだったので、『ART OF FIGHTING龍虎の拳 外伝』もネオジオCD版を買いましたよ。ロバートのコインがついてる限定版を(笑)。

――僕も兄がネオジオCDを持っていたのですが、あれで『KOF』をやるとロードがキツかった記憶が……。あと、『真サムライスピリッツ』なんかは起動に何分かかるみたいな(笑)。

安藤 ソフトを立ち上げて2分くらいはロード中に出てくる猿を見続けないといけないという(笑)。

――ネオジオCDで遊んでる時間の半分は、あの猿を見る時間でしたよね(笑)。

副田 あの猿が作られる過程を僕らは見てましたよ。『龍虎の拳2』のリー・パイロンを描いた人です(笑)。

黒木 ネオジオCDのデバッグはロードが長くて本当にきつかったんですよ。当時は言えませんでしたけど、もう眠くなってヤバかった。

副田 ロードが始まるたびにいま何をチェックしようと思っていたか忘れてしまう(笑)。あの時代だったからなんですけど、作業が基本的に夜中だったので、そりゃああのロード時間だったら寝落ちもしますよ。

黒木 副田とふたりでデバッグしていると、バトルが始まって相手のキャラクターがずーっと前に歩き続けたりするんですよ。最初は“タメてる”のかと思ったら寝ているだけで(笑)。

――“前方向タメ”は『ファイターズヒストリー』くらいしかないですよ(笑)。話の脱線ついでに聞くんですけど、ドットでどのキャラがいちばんたいへんでした?

黒木 たいへんなのは『餓狼MOW』でしたね。アニメーションパターン数がメッチャ多かったんですよ。僕がロックを作った時は、だいたい1000パターンはあったと思うんです。たいへんでしたね、あれは。

――そう考えると3Dのほうが楽なんですか?

黒木 3Dではそういった苦労はないですね。ですが、1キャラクターを画面に出すまでに携わる人の人数が多いんですよ。モデル、モーション、プログラマーなど、全部違う人がやっているのでまとめるのがたいへんだと思います。スタッフロールを見比べていただけるとわかるはずです。RPGとかと比べると少ないですけどね。

――では話を戻しまして、いま話題にも上った『餓狼MOW』の人気キャラクターであるロックが『KOF』に登場しないのには理由があるのでしょうか?

小田 いままで選ばれてない理由は詳しくはわからないのですが、『餓狼MOW』を出したときに開発レベルでは、「いきなり消費するのはもったいないから1回目は飛ばしてほしい」と言ってたんですよ。だから最初は出ないにしても、それ以降は出ると思っていたんですけど出なかったんですよね。

――なるほど。では『XIV』に出なかったのはなぜでしょう?

小田 まず、ギースを入れることが最初から決まっていたので、いきなりふたり出ると少しややこしいかなと。今後ロックの登場はあるかもしれないし、ないかもしれないです(笑)。まあ『KOF』はもともとお祭りゲームだから、色々で出たほうがいいとは思っていますし、格ゲー以外のタイトルからも出したいですよね。

――今回初めてプレイアブルキャラクターとして『サムライスピリッツ』のキャラクターが登場しましたが、ようやくの参戦ですね。

小田 最初は、そもそも出す発想がなかっただけなんですけど、その後は設定がややこしくなるだとか、コストがかかるとかで難しかったんだと思いますよ。

――『サムライスピリッツ』からナコルル以外のキャラクターを登場させる予定はなかったのでしょうか?

小田 そもそも、検証から始めないといけないのでナコルルですら出せるかどうかがわからなかったんですよ。たとえば、「モーションを100個作る必要があります」であれば、スケジュールが組めるんです。ですが、検証の場合はいつ終わるかわからないのでスケジュールが組めませんし、検証した結果ムリでしたということもありますから。

安藤 新しいことをやろうとすると、大抵は想定外のことが起きますからね。

――なるほど。今回『XIV』を作るにあたって想定外だったことは何かありますか?

小田 う~ん、パチスロ撤退ですかね。パチスロから来ているラブ・ハートはどうする?と(笑)。

――(笑)。今回から新章がスタートするということですが、『XIV』で完結するのでしょうか?

小田 いえ、ストーリーは『XV』に続きます。ただ、『XV』がいつ出るのかはまったくの未定です(笑)。

――なるほど。ストーリーを追加配信するわけではなく、『XV』に続くんですね。

小田 位置づけとして、時間が進まないならナンバリングはそのままにしておきたいですね。

――アレ、『KOF』シリーズは時間の経過があるんですね。ということは、年々キャラクターは年を取っている? あれ、『KOF 94’』から『KOF 95’』は1年経っていましたよね?

黒木 それ以降は年齢設定を消してあるはずですよ(笑)。

小田 当時のインタビューで『KOF』チームの偉い人が、『KOF』はサザエさんと同じですと明言していたのでそういうことです(笑)。

●発売後のアップデートで“F式”を修正へ
――発売後のアップデートや追加配信されるコンテンツなどはあるのでしょうか? たとえばキャラクターの追加やバトルバランスなどの調整などは?

小田 バランスは大きく崩れている部分があれば直さないといけないと思っていますが、それはバランス調整というよりは不具合対応に近いですね。追加キャラクターについては、いまの時点でダウンロードコンテンツの予定はありません。ただ、要望があれば考えようと思いっています。

――ファンの声が集まれば追加もあり得ると。50キャラクターもいるのにまだ追加となるとすごいですね。

小田 そうなんですよ。モデルを作って、モーションを作って……とそこまでは想像つくんですけど、キャラクターセレクト画面に空きがないんですよね。まずはその問題から解決しないと(笑)。

――最近ではあとからキャラクターを増やしていくパターンも多いですが、本作の場合は本当に追加予定がなかったんですね。

小田 30キャラクターでスタートして、20キャラクターを追加するのはどうかという話はありましたが、30キャラクターだとインパクトが薄いんですよね。それならもう最初から50でええやんと。あとは、前もって作ってあるものを小出しにするのも嫌ですしね。

――確かに50キャラクターのインパクトはすごい。

小田 あと、これはぜひ書いておいてほしいのですが、体験版の配信以降に一部のファンの間で話題になっている“F式”(※)と呼ばれているテクニックは、修正する予定です。

※F式:ガード硬直中の仕様を利用して、通常であればしゃがみガード状態にヒットしない
昇りジャンプ攻撃などの中段攻撃をヒットさせるガードが難しい連携のこと。


安藤 あれは意図して入れたわけではなく、今回システムを変えたことでそうなってしまったので、修正しないといけない問題と捉えています。ただ、冒頭でも話した通り、ひとつ直すだけで×50の作業がついてくるので慎重に作業を進める予定です。

小田 すでに修正に向けた検証は進めています。じっくりチェックして、大丈夫そうであればパッチで対応したいと思います。

――格闘ゲームの場合、どこかを変更すると別の部分に影響が出てしまうこともありますし、そもそもそのテクニックができるできないでゲームが変わってしまいますから、慎重に進めるのは賛成です。アップデートタイミングも大きい大会の直前だとマズイでしょうし。

小田 もちろん、そういった部分は考慮して進めようと思います。

――ちなみに、体験版と製品版でキャラクターの性能は変わっているのでしょうか?

小田 体験版から調整は入っていますのでまったく同じではありませんが、大幅に変わっているわけでもありません。また、開発が意図していなかった部分が体験版でも見つかっているので、そこは発売当日のアップデートで修正いたします。そのアップデートでは、レガシーコントローラーにも対応するようになります。

――公式全国大会の開催はあるのでしょうか? 格闘ゲームをやり込むうえでそういった大会はモチベーションの維持に重要だと思うのですが。

小田 リリース後のプロモーションプランについてはまだ確定していない状況ですが、大規模な大会は開催する予定です。

――今回は家庭用オンリーなので、プレイヤーがオフで集まれる場があるといいと思うのですが、対戦会のようなものは企画されるのでしょうか?

小田 いろいろなプランを練っている段階です。どちらにしてもユーザーがゲームを盛り上げていきやすいようにサポートしていきたいと考えています。オフィシャルとしてどういったサポートができるかなどは、なるべく早い段階で告知したいと思います。

――ちなみにアーケード版の予定は?

小田 本当は儲からなくてもいいから出したいんですけどね。

――アーケードがないと、プレイしている人の姿が見えないから、盛り上がりが伝わりにくいですよね。アーケード版があると、大会もやりやすいですし、コミニティーが育ちやすいですよね。ぜひ、アーケード版もよろしくお願いします。


■アップデートまとめ
発売日当日のアップデート
レガシーコントローラーに対応しつつ、体験版にあった不具合を修正。

F式について
慎重に検証を進めながら、なるべく早い段階で修正パッチを配信する。ただし、ビッグトーナメントの影響を考えてタイミングは見極める。

●過去のネオジオ作品の復活は?
――『KOF』がひと段落したら、過去のネオジオ作品の復活や続編の開発はあるのでしょうか?

小田 可能性はありますが、僕は動けないです(笑)。海外メディアが「小田はすでにつぎのゲームを作っている」と記事にしていましたが、まったくそんなことはありません。そんなに人がいませんから(笑)。

副田 当然だけど、まずは『KOF XIV』が売れないとね。

小田 そうですね。『KOF XIV』の結果も考慮しないといけないですし、気合いだけでは作れませんからね。でも本当に人がいないんですよ。開発会社さんにお願いするという考えもありますけど、社内でキッチリ作りたい思いがあるのでそれは考えにくいです。

――いまは開発チームの数がいくつもあるわけではないのでしょうか?

小田 モバイルゲームもありますし、チーム自体はたくさんあるんですけど、スタジオはふたつしかないんです。そのひとつが『KOF』を作っているスタジオで、いまは『KOF XIV』を作るだけで手いっぱいの人数しかいないですね。

――ではつぎの格闘ゲームを作るとなると、ひとつのタイトルに全員で全力投球する形に?

小田 開発環境は年々整備されていくので、整備されていったらいろいろできる可能性はあります。

――なるほど。では、たとえば過去作品の続編を好きに作っていいと言われたら何を作りますか?

副田 初代『餓狼伝説』をリブートしたいですね。いまだからできるものを、いまのユーザー目線で作ってみたいというのがあります。

――もうアイデアがあるんですか?

副田 僕の担当はモーションなので、モーションチームとしてやりたいことはいくつか浮かんでいます。

黒木 僕は『餓狼MOW』の続編が作りたいですね。そもそも途中まで作ってはいたので、キッチリ最後まで作ってあげたいんですよ。それに『餓狼』だったらこうしたいというイメージはあるんですけど、小田が言っていたようにまずは弊社の軸である『KOF』を何とかしないと。

――続編のイメージはあるんですね。

黒木 後はやっぱりうちに入ってくれる人が増えて欲しいですね。学校説明会とかに行ってもSNKプレイモアのことを知らない人ばかりなんですよ。やっぱり格闘ゲームはユーザーが固定されてしまいますし。

――じゃあそこで『サムライスピリッツ』のRPGですかね。

副田 アレはロード時間が長いですよねえ(笑)。

黒木 やっぱりネオジオが強いのは30代以上ですね。20代だと全然。

安藤 昔はネオジオのMVS筐体が駄菓子屋なんかに置いてあったりしたじゃないですか。駄菓子を買いに行ったついでにおばちゃんに電源を入れてもらって遊んだり。それに比べたら気軽に格闘ゲームに触れられる場所が減りましたよね。

――確かに、ゲームショップはもちろん、駄菓子屋やスーパーの店頭なんかにもネオジオが置いてありましたもんね。

副田 90年代当時は本当にNEOGEOは盛り上がっていたので、あの年代のユーザさんは今でも応援して下さっているんですよ。とくにキャラクター愛の強い方が多くてうれしいです。愛情ありきできびしい意見も頂きますが、本当にありがたいです。

●昔と変わったところ変わらないところ
――かつてのネオジオ時代と現在で変わったことはありますか?

副田 メンツはあんまり変わった感じがしないですね(笑)。人数はだいぶ増えたんですけどね。いちばん最初に入ったチームは、10人くらいだったんですけどね。ドンドン規模が増えて、作業を細分化するようになりましたね。ドット時代はデザイナーはいろいろな作業を兼任することがありましたが、いまはデザイナーやプログラマーでも役割が細かくなりましたね。

小田 でもやっぱり当時のスタッフが現場に残っているのは少ないですよ。だいたい業界を離れたり、あるいは経営者になっていたりしますから。

副田 いまも残っている連中はみんなものづくりが好きなだけのバカかもですね(笑)。

――当時から現場にいると、使う技術も変わってくるじゃないですか。当時はドットで、いまは3Dグラフィック。3Dになることによって作業がガラっと変わったんじゃないんですか?

副田 かなり違いますね。ドット作業当時に培った技術とはまったく異なるので、3D技術の取得はたいへんでした。下地となるセンスやアニメーション技術が必要なのは2Dと同じですが、作業自体はまったく違いますね。

――そういうのを覚えなおしたんですね。すごい。

黒木 僕が思うのは、人がふつうになりましたね。昔は、ちょっとおかしい人がけっこういたんですよ(笑)。いまは大学を出てちゃんと勉強してくるので、みんなしっかりしてる。

小田 あとは社内環境がちゃんとしましたね。書きにくいと思うんですけど、まっとうな時間に働くようになった(笑)。昔は会社に寝泊まりするのがふつうで、1週間に1回だけ服を取りに自宅に帰る感じでしたから。

副田 会社にパンツを干してる奴とかいましたからね(笑)。

小田 あとはしっかり予算を管理するように(笑)。

――え!? どういうことですか?

小田 昔はお金の管理をする人がいなかったので、出ていくお金と入ってくるお金がわからなくて、どこから給料が出ていたのかなって(笑)。プロデューサー的立場の人はいましたけど、そういった役職があったわけではありませんでしたし。そう考えると本当にしっかりした会社になりましたよ。

黒木 だからちゃんとした人間が入ってくるようになったんじゃないですか? いま会社に布団敷いて寝ますとか言ったら変人扱いされますよ(笑)。

小田 ネオジオ時代は自社ハードでやっていたから何でも融通が効くので、無計画だったのかもしれませんね。でもいまは他社さんのハードで作っているので、キッチリ計画を立てて進めないといけないから、そもそも泊まりが発生するような計画を立てるわけがありませんよね。だからちゃんと計画を立てて進められるようになったのが、いちばんの進化だと思います。

副田 モーション系の話だと、机の前とかでモーションのポーズを取っていましたよ。いまもそうですが、技を作成するときは体を動かして作っていましたね。

――体を動かすというのは?

副田 実際にパンチしたり投げ飛ばしたりと、技を決めてみるんですよ。

小田 僕なんてブルー・マリーを作るときに、実際にコマンドサンボの絞め技を食らいましたからね(笑)。

副田 本当に痛い思いをして、新しい技のアイデアを出していましたから、まさに産みの苦しみですね。3D開発になったいまでも鏡の前で実際に動くことはありますが、さすがに締め技を食らわせるようなことはしなくなりました(笑)。

――(笑)。

黒木 少しマジメな話をすると、海外のファンがフェイスブックやツイッターでリスペクトしてくれるんですよ。昔は海外を意識して作ることなんてなかったんですけど、そういった方々がいてくれてうれしかったですね。

小田 確かに、海外を意識するというのは昔にはなかったことですね。ふつうに徹夜もなく働きやすい環境になりましたので、これからゲーム業界を目指す方はぜひSNKプレイモアへ!

――では最後に発売直前ということで、ファンへのメッセージをいただけますか?

副田 本作から参戦する新キャラクターに注目してほしいですね。旧来のキャラクターたちに負けないように、いろいろな新しい試みをしていますので。PVだけではなかなか伝わらないと思いますので、ぜひ製品版に触れてほしいです。

黒木 僕の中で3ヵ年計画というのがあって、小田に話したら「お客さんはそんなに待ってくれへん」と言われたんですけど、もし続編があったらあと数回は確実にユーザーさんを驚かせられるような変化をつけられると思いますので、今後にもご期待ください。

安藤 ひとり用モードもぜひ遊んでいただければと。CPUの動きを担当したんですけど、最高難度のレベル5は相当遊び応えがあると思いますので、ぜひレベル5にして楽しんでくれたらうれしいですね。超反応な部分もあったりしますが、人間ぽい動きも入れてありますので、どう動かせばいいかわからないキャラクターは、“VERSUS”モードでレベル5のCPUどうしの対戦を観戦すれば戦いかたの参考にもできると思います。

小田 昔ネオジオで遊んでいたお父さんと親子で遊んでもらいたいですね。ぜひ『KOF XIV』をよろしくお願いします。

ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV
メーカー:SNKプレイモア
対応機種:プレイステーション4
発売日:2016年8月25日発売予定
価格:7200円[税抜](7776円[税込])
ジャンル:対戦格闘

最終更新:8/22(月) 12:02

ファミ通.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

失うことで不完全さの中に美を見出した芸術家
画家のアリッサ・モンクスは、未知のもの、予想しえないもの、そして酷いものにでさえ、美とインスピレーションを見出します。彼女は詩的で個人的な語りで、自身が芸術家として、そして人間として成長する中で、人生、絵の具、キャンバスがどう関わりあってきたかを描きます。 [new]