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目先の財政再建に拘ると中長期的な財政リスクを高める

ZUU online 8/22(月) 14:20配信

現在、目先の財政再建に拘ると、中長期的な財政規律と安定感が失われてしまう。そんなねじれた状態にあるようだ。

■求められるのは「ネットの資金需要を復活させる財政拡大」

一つ目は、財政政策と金融政策との関係である。

財政政策は金利上昇と為替高をもたらすために効果がない。デフレは貨幣的現象であり、需給ギャップも金融緩和のみで解消できると、いたずらに金融緩和だけを拡大していった、日銀の行動はクライマックスに来た。

企業の貯蓄行動(デレバレッジ)が顕著である中で、デフレ完全脱却のモメンタムをつけるためには、財政拡大によりネットの資金需要(企業貯蓄率と財政収支の合計で、マネーを膨らませる力であり、アベノミクスのデフレ完全脱却への推進力)を復活させ、それを日銀が間接的にマネタイズすることにより、マネーを循環・拡大させる必要がある。

現在、デフレ完全脱却のモメンタムを強くするために必要なのは、ネットの資金需要を復活させる財政拡大である。ネットの資金需要(アベノミクスの最大でもGDP対比3%程度)対比で、マネタリーベースの増加幅(GDP対比16%程度)は既に圧倒的に大きい。

■歳出の膨張を招くと、失われる財政規律

金融政策に過度に依存した結果として行き着いた、マイナス金利政策への評判は、金融機関だけではなく、国民の間でも芳しくないく、「金利」の手段も使えなかった。言い換えれば、財政拡大と金融緩和の適度なポリシーミックスで、デフレ完全脱却を目指していれば、これほど金融市場に負荷をかけないでもよかったはずだった。

目先の財政再建に拘るあまり、これまでのような緊縮財政が継続してしてしまえば、ネットの資金需要が復活せず、円高とデフレ完全脱却へのモメンタムが弱い状況が続き、日銀に更なる負荷がかかる恐れがある。そうなってしまうと、マーケットで日銀の直接的な財政ファイナンス(ヘリコプターマネー)への期待が、膨張するリスクとなるだろう。

政府支出が日銀のファイナンスでまかなわれれば、税という概念自体が希薄となり、予算は、歳出と歳入の編成ではなく、単純な必要経費の会計的な処理になってしまうだろう。歯止めが利かない歳出の膨張につながり、財政規律は失われてしまう。

■目先の財政再建にこだわると、デフレに逆行するリスクも

二つ目は、財政政策と社会保障との関係である。

財政債務残高や高齢化を恐れる過剰な悲観マインドにより、目先の財政再建に拘り、増税などの財政緊縮を過度に進めてしまうと、需要不足と過剰貯蓄に陥ってしまうことになる。もともと需要不足である中で、高齢化の進行以上に貯蓄が大幅に前倒され、財政が緊縮的であることは、総需要を破壊し、短期的には更に強いデフレ圧力につながってしまう。

デフレにより実質金利が実質成長率を上回る状態が継続してしまい、企業活動は更に萎縮し、家計の雇用・所得環境を更に悪化させる。企業の意欲と活動が衰えると、イノベーションと資本ストックの積み上げが困難になる。その結果、高齢化に備えるためにもっとも重要な生産性の向上が困難になってしまう。

デフレと景気低迷を放置しておくと、生産性の向上が限界になり、生産性が低下し始めたところで、一転してインフレと景気低迷の同居のリスクとなる。生産性が低下してしまえば、高齢化の負担の増加が、所得の増加をいずれ上回り、国内貯蓄は減少していく。

国際経常収支の赤字が続くとともに、日本は債務超過国となり、インフレ圧力が強くなる。国債金利は急騰していき、それが企業活動を更に抑制し、雇用・賃金が減少していく。税収が落ち込む一方で、金利コストは増加し、高齢化の負担もあり、財政赤字は膨らんでいき、財政の安定感が失われてしまう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

最終更新:8/22(月) 14:20

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