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Windows 10無料アップグレードで結局シェアはどこまで伸びたのか?

ITmedia PC USER 8月22日(月)7時25分配信

 2016年7月29日にWindows 7/8.1からWindows 10への無料アップグレードキャンペーンは終了したが、その成果はどうだったのだろうか。

【画像】Windows 10のシェア推移

 8月初旬には、新聞各紙に「ウィンドウズ10の更新限定的 シェア2割にとどまる」との見だしが躍って話題になった。「あれだけ強引なアップグレード誘導をしておきながら、ほとんどのユーザーはWindows 10に移行していないじゃないか」という意図が伝わってくるが、筆者は若干の違和感を抱いている。

 これらはほぼ共同通信が配信した記事で、文中に引用されている「Windows 10の世界シェア21%」という数字の根拠は米Net Applicationsの調査報告を基にしているという。Net Applicationsがインターネット上で公開している「NetMarketShare」のデータは本連載でも度々引用しているが、これは「あくまで参考値」だ。実際のシェアを正確に反映しているとは言い難いので注意したい。

 特にWebブラウザのシェアについては、ライバル(?)とも呼べる「StatCounter」と大きく異なったデータが出ることが知られている。数字そのものよりはむしろ、NetMarketShareで示されるデータをどのように分析するかが重要だ。

 実際、Microsoft関係者からは「(NetMarketShareなどで出てくるデータは)実際に社内で把握している数字と異なる」という話を度々聞いている。テレメトリーを通して正確な各Windowsバージョンのシェアを把握しているMicrosoftからすれば、「数字の単純比較はちょっと……」という感覚のようだ。

 そこで筆者の推測にはなるが、2016年8月時点におけるWindows 10の本当のOSシェアと、今後さらにWindows 10への移行を促す際の「ハードル」について考察する。

●2つの調査報告データでOSシェアを比較

 まずはNetMarketShareのデータを見ていこう。

 NetMarketShareでは、デスクトップOSのシェアについて「単月」と「トレンド」での比較が可能だ。円グラフは単月でのシェア、折れ線グラフはトレンドを示している。トレンドの比較にあたって、開始月をWindows 10がリリースされた2015年7月、終了月を2016年7月としてみた。

 Windows 10の提供開始が7月29日ということもあり、2015年7月は1%に満たないシェアだが、翌8月には一気に5%まで増え、その後も少しずつ順当に数字を伸ばしている。なお、共同通信で引用された21%というデータは「2016年7月」の「21.13%」という数字から来ている。

 NetMarketShareのトレンドで注目してほしいのは、2015年7月時点でWindowsの4つのバージョン(7、10、XP、8.1)を足したシェアと、2016年7月時点の同4バージョン合計のシェアでそれほど誤差がない点だ。このデータを見る限り、Windows 10は7と8.1からのシェアがほぼそのままスライドして増加していると考えられる。

 言うまでもなく、これは無料アップグレードの提供によるスライド効果だと考えていい。昨今、PC市場全体が停滞傾向にあることを考えれば、世界で稼働するPCの総数はここ2~3年ほど大きく変動しておらず、既存PCのOSアップグレードまたは買い換えによってWindows 10のシェアが増加していると予想できる。

 また、NetMarketShareが提供するデータのサンプリングに偏りがあるとしても、同調査内での数字は矛盾していないと考えられる。少なくとも「(NetMarketShareの集計分については)無料アップグレードの提供によって2割のユーザーを移行させることに成功した」と言える。

 参考のために、同じ時間軸でStatCounterのデータについても見ていく。StatCounterのOSシェア調査では「デスクトップ」「タブレット」「モバイル」(さらにいえば「コンソール」)の3つのチェックボックスが用意されており、単純に「デスクトップOS」でシェアを比較する場合でも「タブレットを含むかどうか」が選択できる。

 この最大の違いは「iPadが含まれるかどうか」だ。もし「タブレット」にチェックを入れた場合には、iPadのシェアが加算されてWindows OSのシェアが落ちる。今回は純粋に「デスクトップ」のみにチェックを入れて比較してみると、NetMarketShareと比較してWindows 7のシェアはやや低めに、Windows 10のシェアはやや高く「23.48%」となる。

●Microsoftが無料アップグレードで描いていた内部目標を予想

 今度は少し別の視点からWindows 10のシェアを予測してみる。筆者が6月初旬にCOMPUTEX TAIPEI 2016でMicrosoftの基調講演を取材したとき、壇上のテリー・マイヤーソン氏はWindows 10の稼働台数を「3億台以上」と表現していた。

 ところが同月末にWindows 10の大型アップデート「Anniversary Update」の提供日を発表した際には、「3億5000万台以上」へと上方修正している。仮にNetMarketShareとStatCounterのシェア報告を信じるとして、上記2つのタイミングの稼働台数の根拠となる2016年5月と2016年6月では、5000万台程度の差が出るシェアの推移はみられない。

 恐らく、COMPUTEXの時点で3.3億~3.4億台程度の稼働台数は達成していたのだろう。ここから予想できるのは、7月の無料アップグレード終了前の追い込みでWindows 10のシェアが急増したとしても、7月末時点で3.7億~3.8億台前後の数字にとどまるということだ。

 しかも8月以降は無料アップグレードが既に終了していることもあり、Windows 10プリインストールPCの購入による移行、または企業ユーザーによる乗り換えを期待するしかない。どうしても移行ペースは落ちるだろう。

 仮にWindows 10の現在の稼働台数を3億7000万台とした場合、デスクトップOSの世界シェアを算出するには、現在世界で稼働しているPCの台数で割ればいい。このWindows 10のシェアには「Windows 10 Mobile」も含まれるが、誤差の範囲として考えて問題ない。単純ではあるが、ある程度の指標にはなるだろう。

 ところが、意外と現在の全世界でのPC稼働台数について触れたデータがなく、ところどころで「20億台未満」という数字が散見される程度だ。

 1つ参考値となるのが、若干古いデータではあるものの、Business Insiderが紹介しているアナリストのベネディクト・エバンス氏による予測で、「2013年半ばで17億台」程度という数字が読み取れる。過去2~3年のPC市場の推移から2016年現在の稼働台数は17億~18億台程度と予想できるが、これで先ほどの3億7000万台という数字を割ると、20.56~21.76%というシェアが出てくる。これは、ちょうどNetMarketShareとStatCounterのデータの間くらいの数字だ。

 筆者の予想だが、Microsoftが内部的に把握しているテレメトリーによるWindows 10のシェアの数字は、これよりもさらに高い値が出ていると考えている。Microsoftの提供範囲外のOS、例えばMac OS X(macOS)やLinuxは同社の集計には含まれず、恐らくデスクトップOSシェアもWindows内の集計に収まっていると考えられる。

 NetMarketShareが発表した2016年7月時点のデータによると、Windows OS全体のシェアは89.79%、macOSが7.87%、Linuxが2.33%となっている。約9割という計算だ。母数を90%でそろえて21~24%というシェアを再計算してみると、23.33~26.67%という数字になる。

 かなり大ざっぱではあるが、Microsoftが内部的に把握しているWindows 10のシェアは「3割弱」程度だと予想しており、同社が無料アップグレードで当初目標にしていた水準(これが「3割」だと筆者は考える)は大体達成したのではないだろうか。

●次のハードルは企業ユーザーのWindows 10への移行

 問題は、この「3割」という水準をどのように捉えるかだ。NetMarketShareの数字によると、Windows 7のシェアはまだ47%以上ある。少なくとも、Windows OSの世界だけでみても世界のPCの半数はWindows 7ということになる。これは、無料アップグレードが提供されても、Windows 10へと移行しなかったWindows 7ユーザーがそれだけ残っているということなのだろうか。

 NetMarketShareのデータがどのように収集されているかは不明だが、恐らくここで残っているWindows 7ユーザーの多くは「企業ユーザー」だ。しかも、ボリュームライセンス契約等で統一的なポリシー管理の影響下にあるWindows PC群だと考える。

 Windowsユーザーには3種類の属性があり、「一般」「SMB(中小企業)」「大企業や組織」に大別される。今回Windows 10無料アップグレードの対象となったユーザーは「一般」「SMB(中小企業)」の2つで、「大企業や組織」が利用するEnterprise Editionやポリシー管理下にあるPC群には適用されない。

 台数ベースで考えれば、この「大企業や組織」の比率は4~5割程度で、SMBを含む企業ユーザーは全体からみて6割以上と考える。「朝出社したら自分のPCのWindows 10へのアップグレードが開始されていた」という話があったが、これは例外としても、今回無料アップグレードでMicrosoftがWindows 10へ引き上げようと考えていたのは、企業以外の主に「一般」ユーザーが対象だろう。前述の3割という目標数値予想の根拠は、一般ユーザーの6~7割程度の移行が行えればいいとした場合の水準だ。

 Microsoftが一般ユーザーを対象にしたアップグレードでおおよそ予想通りの成果を得られたとしても、次のハードルは「企業ユーザー」の中でも特にボリュームライセンスを契約するような大規模ユーザーだ。

 同社は87%の企業でWindows 10の導入に向けた検証が進んでおり、早ければ2016年7月~2017年6月の同社会計年度で何社かの移行プロジェクトがスタートすると説明するが、Windows 7の延長サポートが終了する2020年1月まで3年半程度の期間しかなく、なかなか困難な道のりだ。恐らくNetMarketShareのWindows 7とWindows 10のシェアが逆転するまでには、現時点から2年以上の期間が必要だというのが筆者の予想だ。

 もう1つ、Microsoftが推進しているのがSMBユーザーへのEnterprise Editionの浸透だ。本来ポリシー管理下にあるPCでは、前述のような「勝手にWindows 10へアップグレードしてしまう」といったことは発生しない。無料アップグレードを巡る一連の騒動で再確認できたのは、購入したPCを適切に管理しないまま企業ネットワークに接続して運用しているケースが非常に多いということだ。専任の管理者がいないというSMB特有の事情もあるが、セキュリティ的にもライセンス管理的にもあまり好ましい状況ではない。

 先日紹介した「Windows 10 Enterprise E3」は、こうしたSMBユーザーを対象にした管理機能とOSライセンスをセットにした月額7ドルのサブスクリプションサービスだ。実際、ボリュームライセンス経由で提供されるEnterprise Editionを利用するSMBユーザーは全体の0.5%未満という話もあり、大部分は前述のような「野良運用」のケースとみられる。

 Windows 10への移行へと同時に、企業ユーザーの場合は「適切に管理されたPC環境」を推進していくのが、2020年のタイムリミットをにらんだMicrosoftの狙いとなる。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

最終更新:8月22日(月)7時25分

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