ここから本文です

日本からGoogle、Facebookが誕生? 大学発ベンチャーは日本経済に貢献するのか

ZUU online 8/22(月) 19:10配信

ユーグレナ、サイバーダイン、ペプチドリーム等など、大学から生まれたベンチャービジネスの盛況が続いている。個人投資家の間での人気も高く、大きなキャピタルゲインを得るチャンスも、増えているという。

■大学の特許を企業の開発に 大学発ベンチャーを支えるファンドとTLO

慶応大学と野村ホールディングス <8604> が、2015年12月に共同ではじめたベンチャーキャピタル「慶応イノベーション・イニシアティブ(KII)」は、8月に資金総額を当初計画より50%増加して150億円規模にすると発表した。この背景には、多くの大学発ベンチャーの成功によって、新たな成長分野に挑戦する投資ニーズが急拡大していることがあげられる。また最近の低金利下において、メガバンクだけでなく地銀・生保・事業会社も、大きな投資リターンが期待できる、大学発ベンチャーへの関心を高めている。

経済産業省によれば、大学発ベンチャーは15年12月末時点で1773社。黒字は全体の56%と前年の43%から増加している。ブルームバーグのデータによれば、東証マザーズ市場に上場する時価総額の上位10社のうち半数が、大学発の技術系ベンチャーが占めているという。

実際、大学発ベンチャー企業に投資する、民間のベンチャーファンドは増加し続けている。もともとは東京大学や京都大学などへの、政府からの官製ファンドが呼び水となった。その後、民間のベンチャーファンドも加わり、多くの大学でファンドが組成されている。

大学発ベンチャーが増加している理由のひとつとして、TLO(Technology Licensing Organization=技術移転機関)の存在があげられる。TLOとは、学内の研究成果を特許化し、その特許技術を企業に移転する法人のことだ。このサイクルで得られた収益を再び、研究開発にフィードバックすることを目的としており、産学連携による「知的創造サイクル」の中核をなしている。

きっかけとなったのは、98年に施行された「大学等技術移転促進法」。01年には「大学発ベンチャー1000社計画」が発表され、以降TLOが促進した大学発ベンチャーは14年までに1112社。売上げ1600億円、雇用者1万1000人という実績を上げている。

■3つの投資メリットと「象牙の塔」のビジネス感覚

大学発ベンチャーには、民間のベンチャーへの投資とは異なる、3つのメリットと研究機関だからこそのリスクがある。

(1)優秀人材が集まっている
研究開発に必要な人材がそろっているという点だ。優秀な科学系・技術系人材は、大手企業でもそう簡単に採用することはできない。大学発ベンチヤーであれば、指導教諭も学生も、専門分野に特化した人材が、最初から集まっている。

(2)研究開発の初期費用がかからない
研究開発に必要な設備などの技術シーズは、大学内で長年の研究開発で生まれた成果であり、そのための予算も当初から大学内で配分されたものだ。一般企業であれば、研究開発そのものに、多大な費用が必要になるのに比べて、初期費用がかからないというメリットは大きい。

また大学という自由な雰囲気で生まれる成果は、コストを意識するあまり、萎縮しがちな民間企業の研究開発部門に比べて、より先端的であることも指摘できる。

(3)上場の可能性
投資面から見ても、大学発ベンチャーはキャピタルゲインだけにとどまらない、大きな投資効果が期待できる点が見逃せない。それがIPO(新規株式公開)だ。すでに現在までに、大学発ベンチャー24社がIPOを達成しており、今後投資件数の3割が上場すると予測する投資会社もいる。

資金を投入するファンドにとって、アクションが早ければ早いほど、大学発ベンチャーへの投資妙味は大きいといえるだろう。

懸念すべき点は大きく2つある。第一に、大学発ベンチャーの経営者や取締役の多くが、大学教員や学生で占められ、ビジネス経験が不足している点。第二に収益化に関する意識が低く、なかなか黒字化しない点。さらにいえば、IPOを急ぐあまり財務体質の健全化を疎かにし、結果的に一般投資家の信頼をなくしてしまいかねない点もリスクといえるだろう。

資金面だけでなく経営アドバイザーとして、こうした状況に陥ることを防ぐことのできる、ベンチャーファンドの多角的な支援は、さらに重要性を増していくだろう。

■米国にあって日本にないもの それは大学発ベンチャーを成熟させる仕組み

大学発ベンチャーの先進国、米国の事例から日本に必要な物を考えていこう。同国には世界的企業になった、大学発ベンチャーがいくつかある。たとえばGoogleはスタンフォード大学発の、Facebookはハーバード大学発のベンチャーだった。これらの大学発ベンチャーの企業価値や雇用創出が、近年の米国経済に果たした貢献は、はかり知れない。

成功事例の背後には、ベンチャーファンドからの多額の資金投入があった。米国でもとりわけベンチャー起業数が多いといわれる、カリフォルニア工科大学で誕生したアプライド・バイオシステムズという会社の例を見てみよう。80年代から、DNA配列を調べる装置を開発していた同社は、ベンチャー・キャピタリストから数百万ドルの資金提供を受けたことを飛躍のきっかけにした。最終的には93年に、3億3000万ドル(当時のレートで約396億円)という高額で買収されるに至った。

高い企業価値を持った大学発ベンチャーが、経済に貢献している米国と比較すると、日本の大学発ベンチャーはまだ発展途上だ。米国での大学発ベンチャーの設立数は、80年以降累計5000社を超え、2000年以降で年間400社ある。日本2015年時点で約1800社と米国の半分以下、今後の飛躍的な増加と設立・成長のためには、それを支援する仕組みづくりやその強化が必要不可欠だ。

TLOの整備、政府からの資金援助、民間のベンチャーファンドの増加などを背景に、大学発ベンチャーは、今後ますます増加していくことが予想される。ただし、それには、「研究→事業化→大学発ベンチャー→IPO→キャピタルゲイン→再投資」というエコシステムの確立が必須だ。

エコシステムが実現できれば、投資対象として魅力的というだけでなく、産業力強化の切り札として、日本の経済再生にも大きく貢献していくことが期待できるだろう。(ZUU online編集部)

最終更新:8/22(月) 19:10

ZUU online

チャート

野村ホールディングス8604
770.6円、前日比+35.6円 - 12/9(金) 15:00