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<イラク>ヤズディ教徒虐殺の現場で ハルダン村住民500人がISに殺害(写真3枚)

アジアプレス・ネットワーク 8/22(月) 6:00配信

◆イスラム教への改宗を拒否した男性たちは銃殺

イラク北西部シンジャル郊外のハルダン村を訪れたのは今年3月。昨年まで武装組織「イスラム国」(IS)の支配下にあった場所だ。地元クルド兵とともに草原が広がる丘を上る。そこには黄色い菜の花が咲いていた。ヤズディ教徒が虐殺された現場だ。花は目印にするためにクルド兵が植えたという。土にまみれた服やサンダルが散らばり、地面をかき分けると、骨がいくつも出てきた。

<イラク写真報告>ヤズディ教徒襲撃から2年(1) ISによる集団虐殺の悲劇

今から2年前の8月、ISは、シンジャル一帯の町や村を一斉に襲撃。大混乱のなか、数万人がクルド自治区などに避難した。包囲されて脱出できなかった地域では、殺りくが始まった。5000人がいたハルダン村では、500人が殺害された。小さな村では家族や親戚の誰かが犠牲となった。

避難先から一時、村に戻ってきた男たちが虐殺現場を訪れていた。親族82人が殺されたというハッジ・スケンデルさん(45)は、携帯電話を取り出し、画面に残された男たちの写真を見せた。「ヤズディ教徒というだけで、みんな殺された」。

ISは少数宗教ヤズディ教を「悪魔崇拝」と決めつけ、住民にイスラムへの改宗を迫り、受け入れなかった者や見せしめに、次々と銃殺した。女性は「戦利品」として拉致していった。ヤズディ団体の調べだけでも1200人以上が殺害されている。数百人がなお不明のままで、虐殺数はさらに多いとみられる。

ハッジさんは村の小学校の教師だった。全児童43人のうち、40人の行方が分からない。ISは子どもたちも支配地域に連れ去った。拉致され、その後、命がけで脱出してきた女性は、多数の幼い女児がIS戦闘員と強制結婚させられていると、ハッジさんに伝えてきた。

シンジャルの中心地は昨年11月、クルド部隊によって解放された。住民は帰還を望むが、近郊では今も激しい戦闘が続き、ときおり砲弾も撃ち込まれる。数万人におよぶ避難民のテント生活は困窮を極め、生活再建のめどはたっていない。

ISは村を襲撃する際、隣村のイスラム教徒に情報を求めた。どの地域がヤズディの村で、検問所はどこか。誰が有力者か、脱出を阻止するにはどの道を封鎖すればいいか。

「たとえここに戻れても、昔のようには暮らせない」と、看護師だったメルザ・ハイダルさん(50)は話す。地元の病院で、宗教や民族に関係なく患者に接してきた彼だが、イスラム教徒がもう信じられなくなった、と言う。

誰もが銃を突きつけられて協力を強いられた。それでもヤズディ住民には「隣人に裏切られた」という思いが渦巻いている。これまでコミュニティーで共に暮らしてきた人びとの関係も、粉々に破壊されていた。

今年6月、国連の独立調査委員会は、一連の殺りくなどの行為を「大量虐殺」と認定した。ハルダン村の近郊にはまだISが布陣し、虐殺現場の調査は進んでいない。村人たちは土のついた骨を手にとり言った。「犠牲者の墓を作ってやれないのが申し訳ない」【玉本英子】

(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」8月9日付記事を加筆修正したものです)

←【写真】イラク北西部ハルダン村、住民虐殺の現場。ここで500人がISに殺され、衣類の下からは人骨が出てきた。(2016年3月撮影・玉本英子)

最終更新:8/22(月) 6:00

アジアプレス・ネットワーク

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