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ブラックホールは黒でなく、やがて消える。「ホーキング放射」実証の本命現わる

ギズモード・ジャパン 8月22日(月)22時40分配信

「ブラックホールは完全に黒ではない。微量の放射をしながら、やがては消える」という、スティーブン・ホーキング博士が1970年代に唱えた奇想天外な仮説が急に実証性を帯びてきました。

イスラエルの物理学チームが、この説を裏付ける本命キター!!な新論文をNature Physicsに発表したのです。えらいこってす。

「ブラックホール」は、重力があまりに強く、ある地点を超えると、もはや光さえも脱出できなくなることから命名されたものです。この後戻りできなくなる理論上の臨界が「事象の水平線(event horizon)」です。しかし、それに異を唱えたのが知の巨人ホーキング博士で、理論上はブラックホールから量子力学的プロセスで粒子は放出されうると論じました。俗に言う「ホーキング放射」ですね。

量子力学の世界では、真空さえも完全に空っぽではなく、そこでは「仮想粒子(virtual particles)」なるものが生成しては消滅しています。その生成消滅がものすごーーーーく短期間に起こるため、既存の物理法則には何の影響も与えません。

ところがそこには例外も。もし仮に1組の仮想粒子がブラックホールの外縁に現れて、うっかり片方がブラックホールに引っ張りこまれたとすると、どうでしょう? ブラックホールからフォトン(光子)が放射され、ブラックホールの質量が減っちまうんです。で、ブラックホールがブラックホールじゃなくなってしまう。ブラックホールがデカければデカいほど、消滅にかかる時間は長くなります。逆に大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で物理学者たちが実現しようとしてる「ミニ・ブラックホール」とかのちっこいやつだと、1秒の何分の1とかで消えちまうんだそうな。

なんとも途方もない理論ですが、このホーキング博士の説は理論物理学、特に「ブラックホール情報パラドックス」にとても大きな影響を与えるものと言われています。

ただ問題は証明ですよね。ブラックホールなんてそんな簡単に作れない。どう証明しろっちゅーねん!というところでみな悶々としていたわけです。

1981年にはブリティッシュコロンビア大学の物理学者Bill Unruh氏が、音でブラックホールを説明する思考実験を提案し、これをとりあえず「dumb hole(馬鹿ホール)」と呼ぶことにしました。フォトン(光子)ではなくフォノン(音量子)のペアの片割れを引きずり込むブラックホール、ね。

Unruh氏が引っ張りだしてきたのは滝のアナロジーです。滝では、崖で水の流れがどんどん急になり、しまいには水中で音が伝わる速さを超えてしまいます。そうすると、フォノン(音量子)が水から逃げようといくらもがいても急流に攫われて逃げられなくなってしまう、まるでブラックホールそのものではないか、と。

無論、ダムホール(馬鹿ホール)なんてものは自然界には存在しませんけど、Unruh氏は「ぐるぐる回る風呂でもブラックホールに近いものは見れるぞ!」と発表で言いました。水を落とすと表面波ができるが、水位が十分浅くなると、表面波より水が落ちていくスピードの方が速くなってしまう、まさにブラックホールじゃないか、というんですね。いやあ、物理学者ってーやつは風呂の水を落とすときも、そこに壮大なブラックホールを見ているわけですなあ…。

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最終更新:8月22日(月)22時40分

ギズモード・ジャパン

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