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悲願の25年ぶりリーグ優勝へ前進…通算201勝の黒田博樹が抱く広島への愛

Full-Count 8月22日(月)19時28分配信

14年土砂災害後は被災地で復旧作業に参加、黒田が広島にもたらした“元気”

 20日のヤクルト戦に先発し、7回無失点の好投で今季8勝目を挙げた広島・黒田博樹。7月23日に日米通算200勝を達成して以来、自身4試合ぶりの勝利となったこの日は、黒田にとって特別な日だった。

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 2014年8月20日、広島市は豪雨による土砂災害に見舞われた。死者77人という大災害の被災地に、当時ヤンキースに所属していた黒田がシーズン終了後の10月に訪問し、復旧作業に参加していたことが、複数のメディアで紹介されている。被災地に自ら出向き、住民やボランティアとともに汗を流した黒田は、自らの存在に気づいて「メジャーで頑張っていますね」と声をかけた被災者に対して、「本当に頑張っているのは皆さんです」と返したという。

 試合前には、広島県出身で青山学院大学陸上競技部の原晋監督の始球式が行われるなど、普段と変わらぬ雰囲気で始まったこの日、黒田は「グラウンドでしっかり野球と向き合って、広島を元気づける手助けができれば」という意気込みでマウンドに上がった。「ここ何試合は試合で調子がいいと感じたことはない」という黒田は、「ブルペンから体が重かった」という言葉通り、初回から2安打を許す苦しい立ち上がりとなった。

 それでも、このピンチを無失点に切り抜けると、2回以降は「テンポよく低めに投げられた」という持ち味通りの投球で内野ゴロの山を築き、7回までヤクルト打線を無安打に抑えた。5回に四球で許した唯一の走者も、内野ゴロ併殺打でピンチを広げることはなかった。

日米通算200勝から4戦ぶりの勝利「広島を元気にできたならよかった」

 試合後、報道陣に囲まれた黒田は、災害についての質問に対して「頭にはあったが、マウンドに上がれば、それ以上に考えなければいけないことがたくさんある」と感傷的になることはなかった。思えば、8月6日、平和を祈念するピースナイターの試合も、先発は黒田だった。この試合では5回3失点で負け投手となり、「特別な意識はなかった。いつだろうと、マウンドに上がったら勝ちたいのは変わらない」と話したが、降板時にはベンチでグラブを叩きつけるなど、珍しく感情を露わにする場面もあった。

 今季2度目となった特別な日の登板で、チームを勝利に導いた黒田は、「結果的に勝てて、広島を元気にできたならよかった」と表情を緩めた。オリンピックイヤーの今夏、世間的には日本代表のメダルラッシュに注目が集まる中でも、広島での話題は、まずはカープだ。4年に一度の祭典よりも25年ぶりのリーグ優勝と、広島ではプロ野球が他の地域では考えられないような盛り上がりを見せている。

 70年前、原爆で何もかもがなくなってしまった街で、生き残った市民が最初に行ったのが路面電車を走らせること、そしてその次が、広島にプロ野球球団を創設することだったという話があるほど、広島でカープは特別なものだ。カープが勝てば、広島の街は盛り上がる。黒田の日米通算201勝目は、間違いなく被災者、そして広島を元気にしたはずだ。

大久保泰伸●文 text by Yasunobu Okubo

最終更新:8月22日(月)19時28分

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