ここから本文です

五輪でみそぎは済んだ?世界の大手金融機関はブラジル経済に熱視線

ZUU online 8/23(火) 8:10配信

ブラジル・リオデジャネイロで開催されていたオリンピックが8月21日、幕を閉じた。日本人選手の史上最多41個のメダルラッシュが報じられる影で、藻の繁殖によるプールの淀みや、米国人選手の盗難狂言事件などのネガティブなニュースも聞かれた。こうしたなか、「深刻な経済の悪化が、五輪が終わった後のブラジルにやってきそうだ」とする声がある。

■五輪ロスは後遺症にまで悪化する?

短期的には一部関係者に、雇用や観光収入をもたらしたオリンピック。一方で、構造的に原油など資源輸出依存度が高い同国はかねてより心配される話題も多かった。世界的資源安や米利上げの開始による資本流出、ブラジル石油公社の賄賂事件に代表される、政治の腐敗などに起因する経済の不調を転換させるまでには至らなかった。

ただ、「もう、これ以上は悪くなりようがない」「悪材料は出尽くした」との声も聞かれる。2月頃から好調なブラジル株式市場は勢いを増し、利上げに踏み切れない米国や企業負債問題に揺れる中国などと比べ、比較的傷の浅いブラジルなど新興国が投資先として有望になってきたとするエコノミストもいる。実際は、どうなのだろうか。

■うまみの少ない五輪でスランプ状態?

ここ数年、2桁台で推移する失業率が悪化する一方、消費者心理も冷え込むブラジル。景気後退が3年目に突入するなか、中央政府や自治体は今回の大会インフラに約200億ドル(2兆円)もの公金を投入した。賃金停滞や貧困などにあえぐ多くの人々の間では、「自国民の救済より、外国人のため投資したのか」との声がふつふつと噴火の時を待つマグマのように、溜まってきている。

期待された五輪観光も、ジカ熱流行で多くの外国人が来訪を控えるなどの影響もあり、当初予想の半分にも満たない13億レアル(約422億円)の収益しか生まなかった。取引信用保険大手の仏ユーラーヘルメスによると、観光による実質成長率は0.02%しか押し上げられておらず、インバウンドの面で五輪効果は無いに等しとの予想も出している。オリンピック関連全体でも、ブラジル経済は0.05%しか成長しなかったという。

ユーラーヘルメスの南米担当エコノミスト、ダニエラ・オルドネス氏は、「オリンピックは、以前からブラジル経済を悩ませてきた数々の問題を埋め合わせるには不十分だ」と指摘。さらに、「オリンピックによって、(今年7.3%増に達すると予想される)インフレがさらに加速する可能性さえある」と述べた。

同社はさらに、大会開催地リオデジャネイロ州の企業の会社再建申請が、昨年に比べて5%増加し、中小企業の債務不履行が12%上昇すると予想している。自治体に目を転じると、リオデジャネイロ州の財政赤字が、インフラ投資と公共支出により17%も増加している。インフレが悪化する五輪後は、どうしても緊縮財政に舵を取らざるを得ず、国民の恨み節が爆発して、政治が不安定にならないか、懸念するエコノミストも多い。

米ジョージ・メイソン大学のエコノミスト、クリストファー・クープマン氏などがまとめた「リオ五輪の経済損失」と題された研究は、「オリンピック開催による利益は、極めて大きく誇張されていた」と結論付けている。

■五輪で膿を出し切った?ブラジル経済底打ちと見る専門家たち

オリンピックが経済成長をほとんどもたらさず、損失さえ生むというのは皮肉な話だが、大会に至るまでが、ブラジル経済の真の危機であったため、五輪後は回復に向かうとする主張もある。トンネルは抜けたというわけだ。

スイスに本拠を置く世界有数の金融会社UBSは、「ルセフ大統領の追放などで、政治が安定化してきた今年の後半に、ブラジル経済は目に見えて回復する」と予測する。

このためUBSは、「高金利国ブラジル通貨のレアルをロングにして、低金利の欧州通貨ユーロや米ドルをショートに据え、金融資産などで運用し、運用益に加えて金利の利ざやを獲得しようとする、2桁台も夢ではないキャリートレードが魅力的に見えてきた」とする。「レアルの夢よ、再び」である。

米投資会社フランクリン・テンプルトンの著名な新興国専門家、マーク・モビアス氏は最近のツイートで、「最近の指標を分析すると、ブラジル経済は底打ちしたようだ」と述べ、投資意欲を見せた。

また、米JPモルガン・アセット・マネージメントのグローバル市場ストラテジスト、ガブリエラ・サントス氏も、「ブラジルの景気後退は出口に一歩近づいたようだ。すでに最悪の時期は過ぎたかもしれない」との見解を表明している。

さらに、米ゴールドマン・サックスも、「五輪で盛り上がったブラジルのオリンピック精神が、同国経済のアニマル・スピリットをも持ち上げ、ブラジルは再び経済のトップ・パフォーマーの地位に返り咲くだろう」と強気だ。

UBSは、実際にブラジルのマクロ経済が回復してゆけば、「新興国への投資が興味深い投資機会になる」と前置きし、「ブラジル中央銀行が実行すると予想される金融緩和で、同国の国債やレアル建て債が強いパフォーマンスを見せるだろう」としている。

このように一時期、投資家から敬遠されていたブラジルに、再び熱い視線が注がれているのは、見逃せない。

ブラジルの株式市場は、そうした投資家期待を先取りしているかのような動きを見せている。レアル建てでは、年初来35%も上げており、米ドル建てにすると、さらに上げ幅は大きくなる。有力なMSCI ブラジル指標は 71%も成長している。

もちろん、これだけ大きく上げられるのは、上昇に転じる前の3年間の下落があまりに悲惨だったからだ。それでも、五輪後のブラジル経済がより深い危機に陥るか否か、市場ははっきりと語っているように見える。(ZUU online編集部)

最終更新:8/23(火) 8:10

ZUU online

なぜ今? 首相主導の働き方改革