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レッドハットCEOらに聞く「コンテナとその背後にある事業戦略」

@IT 8月23日(火)7時10分配信

 オープンソース関連企業の中で、レッドハットは興味深い存在だ。インフラを中心としながらも、ビジネスルール管理まで、さまざまな分野をカバー。独特なビジネスモデルを築き上げている。

 同社はそれぞれの分野で有力なオープンソースプロジェクトの主要コントリビューターとなり、あるいはこうしたプロジェクトのリーダー的存在となっている企業を買収する。さらに場合によってはクローズドソースの製品ベンダーを買収し、その製品をオープンソース化する。

 オープンソース企業の中には、管理ツールなど、クローズドソースのコンポーネントを含む「エンタープライズ版」を製品化することにより、付加価値を発揮しているところもある。一方、レッドハットは基本的にクローズドソースの部分を持たず、完全なオープンソースで製品を構成する(Ansibleの管理ツールであるAnsible Towerは、現在のところ有償)。

 レッドハットはこれらのソフトウェアを単体で販売する他、複数を組み合わせた製品を構築。企業に対し、導入と運用を支援し、サポートサブスクリプションの形で収益を得る。「こうしたビジネスモデルは、他社にとってまねがしにくい」と指摘する業界関係者は多い。

 レッドハットは2016年6月に米サンフランシスコで同社が開催したRed Hat Summitでコンテナ関連製品群を発表し、8月にはこれを国内発表した。このコンテナ関連製品展開には、上記の基本戦略が反映されている。

 この発表の要点は3つだ。

・コンテナ技術「Docker」とコンテナオーケストレーション技術「Kubernetes」を、引き続きレッドハットのコンテナ/PaaS関連製品の中核技術として位置付ける。
・個々の開発者のPC、開発ラボ、本番環境と、コンテナ環境の利用ステージ全てをカバーする製品群を提供する。
・本番環境については、これまで「Red Hat OpenShift Enterprise」と呼ばれていたPaaS基盤製品(「Red Hat OpenShift Container Platform」)を提供する。

 これが本連載のテーマでもある、企業としての導入にターゲットを当てた製品だ。この企業向けの製品については特に、Linux OS「Red Hat Enterprise Linux」、ソフトウェアストレージの「Red Hat Gluster Storage」、運用自動化ツールの「Ansible」、ミドルウェア製品群「Red Hat JBoss Middleware」などとの連携を強め、アプリケーションの開発・運用を支える環境を、一体として管理できるようにしていく。この製品では、コンテナ環境を企業として運用するために考慮せざるを得ない、永続ストレージ、セキュリティ/ガバナンス、動的な拡張などの問題を、統合的に解決することを目指している。「コンテナに最適化したネットワーキングをどう提供するか」という問題については、現時点では特定の解決策を提示していないが、いずれ何らかの発表があるものと考えられる。

 レッドハットのコンテナ戦略における潜在的リスクとして考えられるのは、Kubernetesだ。コンテナオーケストレーションは、オープンソースプロジェクト間の競合が激しい分野の一つだ。現在のところ最有力なコンテナオーケストレーション技術として認識されているものの、明日どうなるかは未知数だ。そこで筆者はRed Hat Summitで、米レッドハット 製品およびテクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデント/プレジデントのPaul Cormier(ポール・コーミエ)氏に、「コンテナのオーケストレーションに関する選択肢はどんどん増えているが、レッドハットはKubernetesのみを推進していくつもりなのか」と質問した。

 この質問を、Cormier氏、およびレッドハットのバイスプレジデント兼プラットフォーム担当ゼネラルマネージャーであるJim Totton(ジム・トットン)氏は、後で「とてもいい質問だった」と話した。これは、コンテナオーケストレーションの世界が流動的であり、リスクが高まっていることを、同社自身も認識している証拠だと考えられる。

 Cormier氏は、同じ質問に対して、次のような答え方もしている。

 「私たちはオープンソース企業ではない。私たちはオープンソース開発モデルを備えたエンタープライズ向けソフトウェア企業だ。オープンソースプロジェクト間の競合は今に始まったことではない。レッドハットは、多数のオープンソースプロジェクトの中から、当社の顧客基盤に適した技術を選択し、製品化する。いったんコミットした技術が顧客ニーズを満たせないと分かった場合は、この技術を強化するために影響力を行使することがあるし、他の技術も併せて提供することがあり得る。最終的には、特定のオープンソースプロジェクトにこだわるわけではない」

●統合の先に、どんな付加価値があるのか

 コンテナ戦略の3つ目の要点で述べた、複数レイヤにまたがる製品・ツール間の統合による付加価値の提供は、レッドハットの事業戦略に直結する。米レッドハット プレジデント兼CEOのJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)氏は、同社の現在の事業テーマを、次のように説明している。

 「今、ITの世界は急速に変化している。しかもその変化は、あらゆるIT分野で一度に起こっている。中核にあるのはオープンソースだ。レッドハットは、それぞれの分野でパズルのピースを埋めることで、これら全てを一括して変えようとしている。もはや、ITインフラ変革を、アプリケーション開発インフラや管理インフラの変革なしで進めても、機能しない。このため当社は、全ての分野で活動し、これらの分野が連携して変わっていけるように取り組んでいる」

 では、「全ての分野」とはどこまでを指すのか、レッドハットが進出しないと決めている分野はあるのか、とWhitehurst氏に聞いてみた。答えは次の通りだ。

 「当社のビジネスモデルに合うような市場の条件がある。全てを満たす必要はないが、いくつかは満たす必要がある。

 1つ目は、多数の人々がコードをコントリビュートする場が実質的に機能していることだ。私たちの仕事は、自分たちで書いたソフトウェアをオープンソース化することではない。オープンソースに関与することだ。例えばERPやCRMを開発する大規模なオープンソースコミュニティは存在しない。一般的にいって、アプリケーションレイヤではうまくいかない。

 2つ目として、私たちのソフトウェアのレイヤの周りに、『多対多』の関係が築けるものなら、最もうまくいく。例えばRed Hat Enterprise Linuxを人々が選択する理由の1つは、このOSを挟んで、全ての主要ハードウェア製品、全ての主要ソフトウェア製品が認定されていることにある。この認定の仕組みがなければ、多くの人が『レッドハットのサポートはありがたいが、無料のCentOSを選ぶよ』と言っていただろう。ストレージ分野も当社にはピッタリだ。ハードウェアベンダーは多数存在するし、アプリケーションやファイルシステムのベンダーも多い。同様に、仮想化、OpenStackは、全てハードウェア、ソフトウェアを抽象化する役割を担う。JBossのようなミドルウェアも、多数のアプリケーションを支えることができるため、当社は好んで提供している。

 3つ目は、機能面での付加価値だ。人々は、コストが低減することだけを理由として、利用製品を切り替えることはない。低コストに加え、付加価値をもたらす機能がなければならない。例えば『レッドハットはリレーショナルデータベースをやらないのか』といつも聞かれる。いつでも、PostgresやMySQLを提供することはできる。だが、Oracle Databaseより圧倒的に優れているとは言い難い。当社としては、機能面で他社よりも優れている選択肢を提供したい」

●Hadoopには取り組まないのか

 では、例えばHadoopはどうなのか。今さらながら、いずれかのディストリビューションベンダーを買収するということは考えられないのか。これについてのWhitehurst氏の答えは下記の通りだ。

 「確かにHadoopは、先ほど述べた条件に当てはまる。だが、(Hadoopの)ベンダーはほとんど利益を出していない。このため、利益を目的に買収することはあり得ない。また、オープンソースであるため、知的財産のために買収するわけにもいかない。ブランドを理由に買収することもあり得ない。(確立しているHadoopの)ブランドはオープンソースプロジェクトのものであり、企業のブランドではないからだ。

 当社が企業を買収するとき、目的はアップストリームプロジェクトへの影響力を持つエンジニアの獲得であることが多い。例えばCephプロジェクトに大きな影響力を持つInktankの買収を見れば分かりやすい。だが、重要なのは、エンジニアたちがレッドハットに来たいと思ってくれること、そして投資家が、(エンジニアの価値に見合う金額で)会社を売りたいと考えてくれるかどうかということだ」

 Whitehurst氏はこう続ける。

 「レッドハットは『オープンソースソフトウェアを製品化するのがうまい』と自己評価している。だが、製品化は一度で終わるものではない。技術を育てる努力を継続しながら、その時々の一般企業顧客における課題を解決するように、進化させていかなければならない。課題の最たるものは運用・管理の複雑化だ。当社は製品間の連携を進めることにより、運用をシンプルで機動的なものに変えていくことができる」

[三木 泉,@IT]

最終更新:8月23日(火)7時10分

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