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「21世紀の建築は“柔らかい素材”の時代となる」隈研吾氏

スマートジャパン 8月23日(火)6時10分配信

 東京大学工学部建築学部 隈研吾研究室と小松精練が2013年から実施している共同プロジェクト「サステナブル・プロトタイピング・ラボ(SPL)」は、新国立競技場の設計も手掛ける隈研吾氏(東京大学教授)と東京大学准教授の小渕祐介氏らが中心となり、「素材、構造、歴史、環境」という研究課題を、今後の都市や建築へ活用することを目指す研究チームである。環境問題に力を入れる、素材メーカーである小松精練がサポート企業として入っている。

 2013年の活動開始から毎年、シンポジウムなど研究発表の場を設けてきたが2016年8月22日には3回目となる研究発表とシンポジウムを実施。「素材・都市・環境」をテーマとし、小松精練との協力で実現したファブリック・ラボラトリー「fa-bo(ファーボ)」の価値と、繊維による建材の大きな変化について紹介した。

●炭素繊維で耐震性を実現する

 「ファーボ」は、世界で初めて熱可塑性炭素繊維複合材料を耐震補強材として使用した建築物である。小松精練旧本社棟を改築し、繊維産業に新しい価値を創造する場として施工された。炭素繊維の糸を建物から地面に張り、耐震性を保つという斬新な設計が特徴。設計は隈研吾建築都市設計事務所が担い、施工は清水建設が行った。

 使用した耐震補強材には、小松精練が開発・提供している熱可塑性炭素繊維複合材料「カボコーマ・ストランドロッド」を使用している。この素材は、先端素材の炭素繊維を芯地に使用し、外層を無機繊維でカバーリングしたもので、熱可塑性樹脂を含浸させ作製した熱可塑性炭素繊維複合材料となる。

 特徴は、曲がることだ。炭素繊維複合材量は既に航空機や自動車産業など、さまざま環境で利用されているが、基本的には鉄など鋼材の置き換えに使うため、硬く曲がらないものが多い。しかし、「カボコーマ・ストランドロッド」は曲がるため、ロールで持ち込むことができ、施工での作業性を大幅に向上することが可能だ。

●耐水性・保水性の高いリサイクル素材

 ファーボは屋上には、小松精練が展開する産業の廃棄物(余剰バイオマスケイク)を有効利用し開発された超微多孔性の発泡セラミックス基盤「greenbiz(グリーンビズ)」を採用。小松精練では2009年から展開している素材で、耐水性と保水性が高く、屋上の緑化などに活用している他、内装材としても利用している。

 小松精練の代表取締役会長である中山賢一氏は「炭素繊維により耐震性が強く震度7でも耐えられる建築物を作ることができる。この炭素繊維と木材を組み合わせることで木材を補強する使い方なども可能だ。既に重要文化財で使用する動きも出ており、繊維の建材メーカーとして、耐震材だけでなく天井などにも製品を広げていく」と述べている。

●木やカーボンが建材の主役に

 隈氏らが設計した新国立競技場は、木材を中心として設計されていることが特徴だが、隈氏は「鉄やコンクリートによる建築は20世紀で終わり、21世紀は『柔らかいものの時代』が来る。その際には木やカーボンが建材の中心になる」と強調する。

 隈氏は「炭素繊維の強度に加え、小松精練の『カボコーマ』では、『曲げられる』ということが技術革新の意味でジャンプしたと考えている。施工の作業性や使いやすさに加え、高い自由度で耐震補強を行うことができる」と先進炭素繊維の可能性について述べている。

●複合材がもたらす新たな価値

 木材とカボコーマを組み合わせた複合材についても期待を寄せる。伝統文化財の耐震補強などでは、制約の大きな木造建築であることから耐震補強をなかなか行えないという事情もあるが「木材と炭素繊維の複合材では、木材の質感や軽さを損なわない形で、炭素繊維の強度を足し合わせることができる。木材とカーボンの組み合わせには大きな可能性を感じている」と隈氏は語る。

 加えて「熊本地震では、在来木造建築の地震への弱さが明らかになった。木造建築の簡易な耐震補強は今後必要性が高まってくると見ている。木材と炭素繊維の複合材はその主役となる可能性がある」と隈氏は強調する。

 先進繊維の可能性について隈氏は「現状では法制度が整っていないので使用できる領域は限られているが、まずファーボで実績を作ることができた。こうした実績を多く作っていけば、法制度も進んでくる。また、量産効果により素材価格も下がってくる。大きな可能性があると考えている」と述べている。

最終更新:8月23日(火)6時10分

スマートジャパン

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