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どうなる? コンビニのたばこ販売

ITmedia ビジネスオンライン 8月23日(火)6時50分配信

 2016年4月、JT(日本たばこ産業)が主力ブランドの「メビウス(旧マイルドセブン)」と、旧3級品(※)と呼ばれるカテゴリーのたばこを値上げした。たばこの値上げは2010年10月以来、6年ぶりである。段階的ではあるが、筆者のような愛煙家にとって、値上げは悩ましい問題だ。

【たばこの売り上げなどを見る】

 今回は、たばこの値上げがコンビニの売り上げにどう影響するのかを分析してみたい。

※旧3級品=専売納付金制度下において3級品とされていた紙巻たばこのこと。エコー、わかば、しんせい、ゴールデンバット、バイオレット、うるまの6銘柄がある。

●たばこ販売は減少傾向

 少し過去にさかのぼって、前回のたばこ値上げ時はどうだったのかを振り返ってみよう。当時、筆者はコンビニのオーナーをやっていて、たばこ値上げの様子をブログに書いている。

 以下のグラフをご覧いただきたい。数値は2010~2011年当時、筆者が経営していたコンビニ1店舗当たりのものである。

 たばこの販売推移のグラフを見ると、値上げ直前に買いだめした人が多かったようで、値上げ直後の10月の販売数は激減している。一方、金額ベースでは、値上げ幅が大きかったこともあってか前年を上回る結果となった。

●値上げと増税に左右されるたばこの販売数

 値上げは、たばこ本体だけではない。2014年4月、消費税が5%から8%に改正されたことにより、たばこも10~20円高くなった。そして、2年後の2016年4月、旧3級品とメイン銘柄のメビウスが値上げとなった。なかでも旧3級品はタールもニコチンもバンバン含まれているが、値上げ後も300円以下で比較的安価ということもあってか他銘柄から乗り換える愛煙家も少なくないようで、一定の支持を得て売り上げを伸ばしていた。

 次に、過去3年の販売数を見てみよう。

 値上げ前のまとめ買いで伸びた時期もあるが、トータルで見ると年々販売数が下降しているのが分かる。2010年は値上げ効果で売上高が伸びていたが、直近はどうなっているのだろうか。JTの収益をベースで見てみよう。

 これも販売数と同じく値上げ前の需要で伸びている月はあるものの、2014年以降の値上げ収益アップの効果はないようだ。

●喫煙率の減少がさらなる値上げを生む可能性も

 年々喫煙率が減少すれば、当然、販売数も比例する。喫煙人口の表を見ると、2015年から2016年にかけては57万人も減少している。

 「たばこは税金のかたまり」と揶揄(やゆ)されることがあるが、国の借金が増えている日本は、どこかでその穴を埋める財源を確保しなくてはならない。とはいえ、あれもこれも税金を上げてしまうと国民の理解を得られないので、酒やたばこなどの嗜好品(しこうひん)にそのシワ寄せが来るのは仕方がないのかもしれない。喫煙人口は今後も減少するとみられるだけに、たばこの値上げを食い止めるのは正直難しいだろう。

 コンビニの売り上げも同様、喫煙人口の減少が進めば、多少の値上げ程度では売り上げをカバーしきれなくなってしまうのだ。

●「ついで買い」ではない独自のサービスで集客を

 コンビニにとって、たばこの売上減少は何を意味するのだろうか。筆者は、2つのことが言えると考えている。

利益増になる

 1つめは利益だ。実はコンビニは、商品ごとに利益を計算していない。ほとんどの店舗が、コンビニチェーン独自の計算方法を用いて全体の売り上げから原価率を求めて粗利益を計算している。つまり、たばこの売り上げが減るということは、粗利益率が上がることを示している(粗利益率が高いほど、収益力、競争力が優れていると判断される)。

 1日当たり5万円の売り上げに差がある場合を例に計算してみよう。

 (1)の「売り上げの70%が粗利益30%、売り上げの30%が粗利益10%のたばこ」と、(2)の「売り上げの85%が粗利益30%、売り上げの15%が粗利益10%のたばこ」がある場合、(2)の方が粗利益率が高くなることが分かる。

 実際の店舗利益計算はこんなに単純ではないが、値上げなどで多少売り上げが落ちたとしても利益ベースでは増えることになる。

「ついで買い」メリットを失う

 そして、もう1つは「ついで買い」だ。実は、たばこのついで買いで一番多いのは、コーヒーやジュースなどの飲み物である。この飲料カテゴリーは利益率も売り上げも高いので、コンビニ経営者にとっては生命線であるとも言える。

 人間は、暑いと汗をかく。暑い夏にコンビニの収益が上がるのは、この飲料カテゴリーによるところが大きいのだ。逆に、暖冬で売り上げが上がるのは、必然的に飲み物を飲む量が増えるからだ。

 たばこはライセンスがないと売ることができない。長い間、コンビニはたばこライセンスによる恩恵を受けてきた。逆に、たばこライセンスがないばかりに潰れていった店も、筆者は多く見てきた。

 このまま喫煙者が減っていくと、たばこのついで買いもなくなり、粗利益の優位性が保てないほど売り上げが落ちる可能性もある。

 先のグラフが示す通り、もはや、たばこの値上げによる売り上げアップの効果が望めないことは明らかだ。コンビニが、集客をたばこに頼る時代は終わりに近づいている。「●●なら、このコンビニ」――そんな何かを新たに見付ける必要がありそうだ。

(川乃もりや)

最終更新:8月23日(火)6時50分

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