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もし職人肌アラフォーエンジニアが「管理職にならないか」と打診されたら

@IT 8月24日(水)8時10分配信

 先日、アラフォーのITエンジニアNさんが、こんな話をしてくれました。

 「ソフトウェア開発のエンジニアになって10数年。これまで、いろいろな経験をしてきました。大変なこともたくさんありましたが、なんだかんだいっても開発の仕事が好きで、楽しくやってきました。けれども、先日上司から『キミもそろそろ管理職になってくれないか』と打診されました。ずっと現場で仕事をしたかっただけに、管理職になると思うと、『今まで、何のために働いてきたんだろう』と、モヤモヤしてしまうんです」

【「視点を上げるとは?」の解説画像】

 Nさんのこの気持ち、エンジニアなら、いや、エンジニアに限らず、いわゆる「専門職」や「現場の仕事が好きな人」なら「分かるー!」と思われるのではないでしょうか。

 「四十にして惑わず」は、孔子が晩年に言った有名な言葉ですが、現代のアラフォーは、迷いがなくなるどころか、迷いが始まる年代ですよね。

 今回の「仕事が『つまんない』ままでいいの?」は、アラフォー世代の仕事とキャリアを考えます。「ずっと現場で仕事をしたい」という理想と、「そろそろキミも……」と管理職へのキャリアチェンジが求められる現実。どのようにしたら、このギャップが埋められるでしょうか。

●職人肌のエンジニアほど迷う「管理職へのキャリアチェンジ」

 職人肌の人ほど管理職へのキャリアチェンジに抵抗感を抱くようです。なぜなら、「その道を極めたい!」と切に願っているので、意識が他のキャリアに向きづらいのです。

 Nさんと同じく、ソフトウェア開発のエンジニアだった筆者もそうでした。ずっと最新のIT技術を追い求めていたかったし、美しいコードを書いていたかった。管理職へのキャリアチェンジをかたくなに拒んでいました。

 また、当時の筆者には、管理職は煩わしい仕事に見えました。お金や人の管理、わがままばかりで言うことを聞かない部下との関わり、無理難題を言ってくる顧客との交渉ごとなど、とにかく「面倒くさそう」だったのです。

 このように感じている人、多いのでは?

●キャリアチェンジ、3つの選択肢

 この状況で選択肢として考えられるのは、「管理職を受け入れる」「『管理職には絶対にならない』と固辞する」「転職・独立する」の3つです。

 管理職を受け入れれば、エンジニアの仕事ができなくなり、これまで過ごしてきた時間を無駄にするような気持ちになるかもしれません。管理職を固辞すれば、上司の評価が下がり、若手の視線も変わるでしょう。転職・独立すれば、エンジニアの仕事はできるかもしれませんが、アラフォーからの転職は一般的に楽ではありませんし、準備なく独立すれば、収入が激減するリスクがあります。

 何を選んでも思い通りにならないし、選ぶとしたら相当のリスクを取らなければならない……このような状況の中で、「どれか1つ」を選ぶのはなかなか困難。「迷うな」という方が無理です。

 その結果、「今まで、何のために働いてきたんだろう」とモヤモヤしてしまうのです。

●視点を上げれば、迷いは解消できる

 「どれか1つ」を選ぶのではなく、「今までのキャリアを次のキャリアに生かす」ことができれば、迷いを解消できる可能性があります。それが「視点を上げる」という方法です。

 分かりやすくするために、イラストにしました。

 複数の選択肢で悩んでいる状態は、それぞれを同じ視点で見ています。これでは、それぞれのメリット/デメリット間で葛藤が生じたり、どれかを選んだらどれかを手放さなければなかったり、選ばなかった選択肢の今までの経験をゼロにしなければならなかったりと、モヤモヤしてしまいます。

 そこで、視点を上げてみます。「視点を上げる」とは、「エンジニアとして働くことによって得ている、『目的』『意味』『価値』を考えてみる」ことです。

 よく「『手段』と『目的』は違う」といいますよね。エンジニアの仕事が「手段」だとしたら、「エンジニアとして働く『目的』は何か」を考えてみるのです。

 「働く目的や意味、価値は何か?」とストレートに問われると答えが出にくいです。そこで、「それによって、何を得ているのか?」という質問を使いましょう。エンジニアの仕事が楽しいと感じるということは、エンジニアの仕事によって、得ている何か(目的)があるはずです。

 その答えは、「新しい技術を“追求する楽しみ”」かもしれませんし、「美しいコードを書いて、“丁寧な仕事をする満足感“」かもしれません。ひょっとしたら、「無から有を生み出すクリエイティビティ」かもしれません。「難しいロジックを“組み立てる探求心“」かもしれません。

 考えづらかったら、「エンジニアの仕事の何に、『楽しい』『面白い』『好き』と感じるのか」と考えてもいいでしょう。

 つまり、エンジニアの仕事は、「あなたが本来、働くことによって得たいと思っている目的や意味、価値を得るための手段である」ということです。あなたが本来得たい目的や意味、価値を感じる要素がエンジニアの仕事の中にあるから、「楽しい」「面白い」「好き」と反応していると言ってもいいでしょう。

 このように、視点を上げて、上位にあるより大きな目的、意味、価値を考える思考法を「抽象化」といいます。

 続けて、さらに上位にある目的、意味、価値を考えてもいいでしょう。

 「新しい技術を“追求する楽しみ”を得ることによって、何を得ているのか?」「丁寧な仕事をする満足感を得ることによって、何を得ているのか?」「無から有を生み出すことによって、何を得ているのか?」「難しいロジックを組み立てることによって、何を得ているのか?」と考えを深掘りします。その答えは、「充実感」「やりがい」「幸福感」「自分という存在」といった、さらに抽象的な言葉に集約されていくはずです。

 キャリアチェンジのときに限らず、普段から働く目的や意味、価値を考える習慣を持つと、「自分にとって大切なことは何か」が見えてきます。抽象化思考の具体的な方法は、連載第1回「仕事とは? 働くとは?――『働く意味』を見いだすロジカルシンキング」を参考にしてください。

●仕事をする目的、意味、価値を次のキャリアに生かす

 仕事をする目的、意味、価値が見えてきたら、それを次のキャリアに生かせないかを考えます。

 例えば「管理職にならないか」と打診されたとき。上司や同僚の視線や、家族のことを考えたら、「管理職になることを受け入れる」を選ぶ人も多いでしょう。しかし、「これからはエンジニアの仕事ができなくなるな」と思うと、やはり「今までの時間は何だったんだろう」と、悲しい気持ちになります。

 けれども、エンジニアの仕事で得ていた「追求する楽しみ」「丁寧な仕事をする満足感」「無から有を生み出すクリエイティビティ」「組み立てる探求心」のような感覚が、エンジニアの仕事以外でも得られれば、これまでのキャリアを生かしながら、やりがいを得られる可能性があります。

 なぜなら、エンジニアの仕事は前述のように、働く目的や意味、価値をかなえる「手段」だからです。

 このように、何かに「楽しい」「面白い」「好き」と感じるということは、その上位には、働くことで得たい、何かしらの目的、意味、価値があります。大切なのは、エンジニアの「仕事そのものに対するこだわり」から、エンジニアの仕事の何に「楽しい」「面白い」「好き」と感じるのかを知り、それを次のキャリアに生かすことです。

 例えば、「仕事をスムーズに進める仕組みを“追求する”」「部下から“丁寧にヒアリング”する」「部下といい関係ができる仕組みを“ゼロから考える”」「顧客から満足される“仕組みを組み立てる”」のように。

●管理職をかたくなに拒んだ筆者はどうなったか

 ところで、エンジニア時代かたくなに管理職になることを拒んだ筆者は、転職を選びました。しかしその後、紆余(うよ)曲折があり、管理職になり、今はエンジニアから離れています。

 けれども、キャリアチェンジした後悔は全くありません。数多くの仕事を経験しましたが、それらはエンジニア時代に想像していたよりも、やってみたら楽しかったのです。こうして記事を書く仕事も、エンジニア時代に培った「論理性」や「コードを美しく書く」性分が生きているので、「キャリアはつながっているな」と感じます。

 筆者の働く目的は「仕事を楽しくすること」です。それは、エンジニアでなくても実現できます。というより、働く「手段」はこれからも変わっていくかもしれません。けれども、働く「目的」は生涯変わることがないだろうと、現時点では思います。

 今回紹介した「視点を上げる」思考をすると、エンジニアとして働く目的や意味、価値が明確になります。そして、エンジニアの何に「楽しい」と感じているのかが分かります。

 とはいえ、「こっちはキャリアの選択で真剣に悩んでいるのに、そんな、表面的な“思考”で物事が解決すれば苦労しないよ」という読者もいるかもしれません。その気持ちもとてもよく分かります。

 一方、その場にとどまっていても、何も変わらないのも事実です。

 それならば、「そろそろキミも管理職に……」という上司の打診に恨み節で過ごすよりも、エンジニアの仕事に感じていた「働く目的」をあらためて考えた方がよほど建設的です。これまで歩んできたキャリアを、これからのキャリアに生かしていけば、未来を自分の意思でデザインできるはずです。

●今回のワーク

 大切なのは、「なるほどね」で終わらせないことです。静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。

1 エンジニアの仕事で、「それによって、何を得ているのか?」を自分に問い、考えてみましょう。複数あれば、思いつくままに書き出してみましょう
2 もし、キャリアチェンジを選ぶ場合は、エンジニアで感じている仕事の目的や意味、価値を次の仕事に生かせないかを、考えてみてください

最終更新:8月24日(水)8時10分

@IT

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