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政府・日銀の物価と名目GDPのハイブリッド目標が有効

ZUU online 8月24日(水)11時40分配信

9月20・21日の日銀金融政策決定会合での総括的な検証では、デフレ完全脱却を目指し、財政政策、成長戦略と構造改革による企業活動の活性化で生み出したネットの資金需要を、ポリシーミックスとしての日銀の金融緩和の継続で、間接的にマネタイズしてサポートするというスタンスに転換すると考えられる。

■政府・日銀の共同目標が金融緩和策の限界を取り払う

金融政策においてネットの資金需要の役割は、これまでほとんど意識されてこなかったし、財政を含めた何らかの資金需要を間接的にマネタイズする(ヘリコプターマネー的な直接的なものではないが)という形になることを躊躇しないことは、これまでの日銀の政策スタンスまたは哲学からの大きな転換となる。

政府との協働をより強くするための枠組みとして、物価と名目GDP成長率を合わせたハイブリッド目標への動きもあるかもしれない。内閣府の中長期の経済財政に関する試算では、経済再生ケースで安定的な名目GDP成長率は3.5%-4.0%となっている。

日銀がコミットメントする2%の物価目標と、政府がコミットメントする+1.5%の実質GDP成長率を合わせて、+3.5%程度の名目GDP成長率を目指す目標が加わってもおかしくはない。ポリシーミックスを意識した政府・日銀の共同目標として、日銀単独で物価目標を達成しようとする、これまでの金融緩和策の効果の限界を払拭する有効な方法となろう。

■名目GDPの拡大こそ、政府の重要課題

日銀は現行の金融緩和策を粘り強く継続していき、政府は短期的には財政拡大で、中長期的には成長戦略と構造改革による潜在成長率の引き上げで、そのハイブリッド目標を目指すことになる。

2%の物価が困難でも、成長率が予想以上に加速すれば政策目標は達成にしっかり向かっていると考えることができる。原油価格が下落し物価が下がっても、交易条件改善は名目GDP成長率の押し上げ効果があるため、原油価格の下落に悩まされることもない。

名目GDPを縮小から拡大に転換させたのが、アベノミクスの最大の成果であり、骨太の方針の表題が「600兆円経済への道筋」とされ、名目GDPの拡大が政府の最重要課題であることと整合的だ。名目GDP(=総賃金)の拡大へのコミットメントが弱く見える中、政策により物価だけ押し上げて家計に余計な負荷をかけるという、インフレ政策が不人気である側面も、是正することができる。

■マイナス金利政策による長期金利の低下幅は日銀の予想以上

政策決定会合には内閣府と財務省からの参加者もいるため、これまでのような形式的な論評ではなく、より深い議論ができる枠組みは既にある。金融政策に過度に依存した結果として行き着いたマイナス金利政策への評判は、金融機関だけではなく、国民の間でも芳しくない。

マイナス金利政策が金融機関の体力を低下させ、貸出や投資に消極的になってしまえば、景気刺激を目指した日銀の意図に逆行する。実際に、マイナス金利政策による長期金利の低下幅は、日銀の予想を上回るものであっただろうし、イールドカーブが大きくフラットニングしてしまったのは誤算だっただろう。

マイナス金利政策が景気刺激効果があり、インフレ期待を上昇させ2%の物価目標をより容易に、そして早期に達成することを可能にするものであれば、理論的にはイールドカーブはスティープニングするはずだ。

イールドカーブのフラットニングは、金融機関の収益を更に圧迫してしまうことになる。しかし、国債不足の中、イールドを求める金融機関の行動を考えれば、日銀の国債買い入れオペには負荷がかかり続け、日銀にはイールドカーブをスティープニングさせる力はない。

■物価目標と名目GDP目標の達成には政府・日銀の協業が不可欠

名目GDP成長率目標のもとでの政府の財政拡大は、インフレ・成長期待を持ち上げ、長めの国債の発行も増えれば、それを可能にする。

それでも長めの金利の上昇幅は、日銀の力により、インフレ期待の上昇幅以下にとどまるだろうから、長期の実質金利の低下は続き、景気・マーケットには更なる刺激効果があるはずだ。更に、原油価格の上昇などでテクニカルに物価が2%に上昇しても、名目GDP成長率が弱ければ、マーケットが日銀の早期引き締めを警戒することもなくなる。

または2%の物価目標を達成した後も、潜在成長率が上昇しておらず、名目GDP成長率の上昇が不十分で持続的でないのであれば、金融政策が緩和的な状況は継続することになる。結果として、緩和政策の長期化による時間軸効果が作り出せることになろう。

政府・日銀の物価と成長へのコミットメントがより強く、長期にわたることをマーケットが認識すれば、インフレ期待を刺激したり、それによる実質金利の更なる低下が企業を刺激することができよう。その企業活動の活性化が、イノベーションへの投資につながり、実際に生産性の向上による潜在成長率の上昇を可能にし、日本経済の好循環を引き出すことができるかもしれない。

政府・日銀が協働して、物価目標と名目GDP成長率目標を合わせた、ハイブリッド目標の導入など、金融緩和の効果をより強くする方法に踏み出せるのかが注目である。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

最終更新:8月24日(水)11時40分

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