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ファミマ王国・沖縄に切り込むセブン-イレブン どうなるコンビニ戦争!

ZUU online 8月24日(水)18時10分配信

「いよいよか」-日本経済新聞がセブン-イレブン(以下、セブン)の沖縄進出を報じた6月28日、多くの関係者や沖縄県民は思ったに違いない。実現すれば同社が進出していない、いわゆる空白県が全て埋まる。

人口減少・高齢化で縮みゆく国内小売市場で、数少ない成長地域と目される沖縄では、既に540以上のコンビニ店がひしめいている。市場の8割以上を占める大手3社が繰り広げる、コンビニ戦争はひときわ激しくなりそうだ。

■業界トップのセブンが20年遅れで沖縄進出?

直接取材に基づく今回の報道で、セブン-イレブン・ジャパン社長に就任したばかりの古屋一樹氏は「2~3年のうちに沖縄に進出する」と述べたという。これとは別に、かねてからセブン参入の可能性を指摘してきた、地元紙の沖縄タイムスもセブンが2018年に沖縄に進出し、300店舗体制を目指すと報じている。会社は正式にコメントしていないが、これらの報道を否定しないところをみると、実際に進出を決めた可能性が高い。

セブンは14年に愛媛、15年に高知、16年に青森と鳥取に初出店し、現在は沖縄が唯一の空白県だ。これに対し、ファミリーマート(以下、ファミマ)とローソンはかなり前から全国展開している。業界トップに君臨してきたセブンが、ようやく全国制覇にこぎつけるというのは意外な感じもするが、これは同社が「ドミナント戦略」を取っているからだ。

ターゲット地域に出店を集中させ、サプライチェーン(商品の製造・配送網)や広告・集客の効率を上げることで、新規店の黒字化・採算向上を早める「ドミナント戦略」は、セブン創業時から収益成長の原動力となってきた。沖縄進出はファミマが1987年、ローソンは1997年とほぼ20年以上も前。セブンは過去に何度もほのめかしながら、これまで進出を見送ってきた理由はなにか。

■「沖縄らしさ」を取り入れたのが、ファミマの勝因

理由はいくつか考えられるが、ひとつは沖縄という土地柄にありそうだ。ご存知の方も多いと思うが、現在の沖縄は1879年(明治11年)までの450年間、独立国家の琉球王国として東シナ海の中継貿易で大きな役割を果たしていた。その後1895年の日清戦争の結果、琉球全域に対する日本の領有権が確定した。

島によっては台湾が肉眼で見えるほど近く、同じ亜熱帯気候で伝統や食文化の類似点は多い。沖縄では他の46都道府県におけるやり方が通用するとは限らないのである。また、鹿児島からの距離が600km以上あるため、隣県のサプライチェーンを活用する形のドミナント方式は使えないため、県内で新たに独自網を構築する必要がある。

実際、沖縄の独自性に対応できず苦労したのがローソンである。1997年、一挙に20店舗を出店し、高らかに「全国制覇」を宣言したが先行するファミマを追い上げるには至らなかった。「本土」のやり方をそのまま持ち込み、県民に受け入れられなかったからだ。

これに対しファミマは、現地流通大手「リウボウグループ」とエリアフランチャイズ方式(リウボウ51%:ファミマ49%の2社合弁)で「沖縄ファミリーマート」を立ち上げている。現地を知り尽くした同グループのネットワークとノウハウを活用して、「タコライス」や「ゴーヤ弁当」など独自の商品開発・品揃えを展開し、順調に成長していた。

■ファミマのおかげで、Tポイントはビッグウェーブに乗り続ける?

ローソンに転機が訪れたのは、沖縄進出12年目の2009年。県内最大手スーパー、サンエーと提携してエリアFC「ローソン沖縄」(サンエー51%)を設立し、本部主導から現地主導型に移行してからである。その後は着実に店舗網を拡大し、2016年2月時点で191店を展開している。

もちろん、こうした状況を踏まえずにセブンが沖縄に進出するとは考えにくい。入念な調査を行って綿密な戦略を立てた上で、満を持して決断したはずだ。実際、古屋社長は日経の取材で「複数の地元企業と出店の際のパートナーとしての交渉を進めている」と明かし、弁当などの専用工場や、店舗の開発・運営を行う会社、物流・配送網を現地企業の協力を得て立ち上げる可能性を示唆している。

だが、セブンの沖縄進出には意外な落とし穴がありそうだ。買い物をするともらえるポイント制度である。沖縄では同社のnanaco(ナナコ)ポイントは知名度が低い。セブン系列のイトーヨーカドーやデニーズはひとつもなく、ポイントを使える店舗が少ないためだ。

沖縄はTポイント王国である。Tポイント・ジャパンの昨年3月のリリースによると、県民の55%に当たる78万人が利用しており、提携店舗は902店あるという。これには「ファミマTカード」が大きく寄与しているとみられ、リウボウグループも2015年5月に全店でTポイントを採用してシナジー向上を狙っている。

現在、沖縄に出店するコンビニチェーンはファミマ、ローソン、ココストアの3つ。2016年2月末時点の店舗数はそれぞれ269、191、81だが、ファミマは2015年12月にココストアの全店を吸収合併したている。ココスの店舗がファミマに衣替えすることから、沖縄では全店舗541のうち2/3近くを占める断トツの1位になる。

■セブンの「沖縄戦略」は既存策の応用?独自策の誕生?

セブンが全国各県で目標とするシェア35%から逆算すると、出店のメドは300店舗、沖縄のコンビニ総数は現在の1.6倍近くになる計算だ。そうなれば県の人口1万人当たり5.9店舗となり、全国平均の4.3店舗はおろか、最激戦地の東京の5.6店舗をも上回ることになる。

2015年国勢調査速報によると、沖縄の人口は5年間で3.0%増と東京(+2.7%)より伸びが高く、東京のように他県からの転入でなく自然増によるものだ。14歳以下の子供の割合は18%近くあり、全国平均の約13%を大きく上回る。このほかにも、台湾や中国・香港から近いこともあり、旅行客のインバウンド需要が増えている。

しかしいくら沖縄が成長地域であるとはいえ、コンビニがこれだけ増えれば競争激化は目に見えている。セブンの沖縄進出を歓迎する県民は若者を中心に多いが、既存店オーナーは顧客を奪われるのではないかと、早くも戦々恐々しているという。

この2年間、コンビニ業界は大型M&Aに沸いた。ファミマは15年ココストアを買収し、16年2月にはサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループHDと経営統合で合意した。ローソンも14年に中国・四国が地盤のポプラ、15年は首都圏のスリーエフと相次いで資本・業務提携を発表している。他方、セブンはこの4年間、毎年1100店前後のペースで黙々と自前の店舗数を増やし、このようなM&Aとは一線を画してきた。

7月の既存店売上高が、48ヶ月連続で前年比プラスの好調を続けるセブンが、沖縄でいよいよ合弁によるエリアFCを立ち上げるのか、あるいはやはり自力で行くのか。また電子マネー・ポイントの囲い込みをどう行っていくのか。迎え撃つファミマとローソンの戦略や如何に。これから沖縄で繰り広げられるであろう、熾烈なコンビニ戦争の行方からは目が離せない。(シニアアナリスト 上杉光)

最終更新:8月24日(水)18時10分

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