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「殺人事件」が起きた土地売却、告知義務は? 50年前の事件で認められたケースも

弁護士ドットコム 8月24日(水)9時55分配信

いわゆる「事故物件」をめぐっては、過去に起きた殺人事件や自殺などの「告知」がなくてトラブルに発展することが多い。買い手や借り主が「いわく付き」ではない物件を望むのは当然だろう。一方、いつまでたっても「事故物件」のままというのも、持ち主には酷な話だ。

告知の有無をめぐっては、神戸地裁で今年7月、こんな判決があった。ある不動産会社が2013~2014年に計5575万円で、神戸市灘区の土地を購入。しかし、購入後、この土地にあった建物内で2006年に強盗殺人事件が起きていたことが分かったのだ。不動産会社は、事件の説明がなかったとして、売り主に3300万円の損害賠償を請求。神戸地裁は、売り主に1735万円の支払いを命じた。

ネットでは「賃貸部屋の事故物件ならまだしも、土地はいいんじゃねか」という声もあったが、「事故物件」をさら地にしても、告知しなくてはいけないのだろうか。また、事件後、どのくらいまで告知する必要があるのだろうか。久保豊弁護士に聞いた。

●判断基準は明確ではない

いわゆる物件の「心理的瑕疵」の問題ですね。心理的瑕疵とは、自殺があったり、近所に暴力団事務所があったりと、土地や建物に買うことをためらう事情があり、通常あるべき「住み心地の良さ」を欠いていることを言います。売買契約では、瑕疵(欠陥)を告知しないで物件を売却すると損害賠償義務を負い、場合によっては契約が解除されることとなります。

基準は「通常一般人がその瑕疵の存在を認識したならば、購入を断念するか又は値段を安くしないと買わない」と社会通念上、言えるかどうかです。裁判例では、事件の重大性や経過年数、買主の使用目的などが総合的に判断されています。

したがって、単純に期間だけで、何年経過すれば瑕疵に該当せず、告知義務はないと決めることはできません。たとえば、50年前に殺人事件があった土地の売買で、近隣住民の記憶に未だ残っていることから告知すべき瑕疵であるとした裁判例もありますし、逆に2年前に首つり自殺した中古住宅で告知すべき瑕疵にあたらないとしたものもあります。

今回のケースでは、強盗殺人事件があった建物は既になくなっており、土地の売買であるという点では、嫌悪すべき事情が多少和らいでいるという評価にはなると思います。しかし、事件の重大性から、約7年程度経過しても未だ嫌悪すべき事情が消滅していないと判断されたのでしょう。

判断基準が明確ではない以上、何か心配な事情があれば何年経過していても告知した方が安全でしょう。それが嫌悪すべき事情にあたるのであれば、売買の交渉で減額されるでしょうし、あたらないのであれば価格には影響しないということになるかと思います。



【取材協力弁護士】
久保 豊(くぼ・ゆたか)弁護士
大学卒業後、旅行会社、一部上場IT企業を経て弁護士に。弁護士に転身後、不動産、建築・建設、法人破産、相続などを中心に多数の案件に精力的に取り組む。2008年弁護士登録
事務所名:鎌倉総合法律事務所

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:8月24日(水)9時55分

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