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追い返される北朝鮮からの派遣労働者 金政権に打撃か

ニュースソクラ 8/24(水) 13:00配信

武器輸出に続き、外貨稼ぎの主力失う

 北朝鮮の有力な外貨稼ぎの手段である、労働者の海外派遣事業が縮小している。受け入れていた国々が、派遣労働者が苛酷な環境で働かされている事情を知り、労働ビザの延長に応じなくなったためだ。

 最近報道されたのは、地中海に浮かぶ人口40万人ほどの小さな観光の島国・マルタだった。同国政府は、7月末、ビザの満期が来た北朝鮮労働者の再延長を認めず、事実上の追放措置を取った。 

 報道によれば、マルタでは北朝鮮勤労者30人ほどが建設や縫製関係の仕事に就いていたが、雇用業者が長時間勤務労働や、最低賃金保障義務違反などの疑いで警察の手入れを受け、廃業を決めた。

 マルタに北朝鮮労働者がいることは、地元紙が報道されていた。北朝鮮に関心を持つ私の友人の1人が、今年4月マルタに遊びに行くついでに北朝鮮労働者を探した。一般の人の目に付かない奥まった場所で働いており、警備員に阻まれ確認できなかったという。それだけ後ろめたい雇用だったということだろう。
 
 北朝鮮労働者に厳しい対応を取るのは、マルタだけではない。

 東欧の国で、北朝鮮と近い関係にあったポーランドも、今年初めから北朝鮮勤労者に対する入国ビザの発給を停止している。昨年は156件あったという。

 主に港で建設労務に就いていたが、現地のメディアが劣悪な労働環境を告発する番組を作り、当局も人権問題として対策に乗り出した。

 アフリカ南西部に位置するナミビアは、資源開発や軍需工場の建設で北朝鮮の協力を受けていた。今年6月、ナミビア政府は北朝鮮企業との取引停止を発表している。国際的な批判を意識した措置とみられる。

 北朝鮮からの派遣労働者は、冷暖房施設さえない劣悪な環境と粗末な食事、1日15時間以上の長時間労働を強いられている。

作業中に負傷、または病気にかかった時も十分な治療を受けられない。一方で、給料はその9割を北朝鮮政府が取り、残りが本人に渡されているに過ぎない。

 米国務省は6月30日、世界の人身売買をめぐる2015年版の報告書を公表した。世界188カ国・地域を対象に、人身売買や強制労働などの実態を調べ、4段階にランク付けしているものだ。

 この中でも北朝鮮の労働者派遣がやり玉に挙げられた。

 報告書によると、北朝鮮は中国やロシアのほか、中東やアフリカなどの国々と契約を結んで労働者を派遣。最長3年の契約で、劣悪な環境下で安い賃金で働かせる。1日の平均労働時間は12~15時間、長い場合は20時間にもある。ひと月の休みは1日かせいぜい2日だろという。不平を漏らし、脱出を図ると、本国の親族を含め厳しく罰せられる。

 報告書は、「政府による人身売買」であると北朝鮮を厳しく批判し、派遣の中止を勧告した。

 韓国政府は、北朝鮮への経済制裁の決定打として派遣労働者問題に注目している。
「北朝鮮の海外派遣労働者は少なくとも5万5000人で、年間2億ドルほどを稼いでいる。その給料が大量破壊兵器開発に流れている」(尹炳世外相)と、国連などの場で訴えており、理解が広がっているようだ。

 大口の受け入れ国である中国(約1万9千人)や、ロシア(約2万人)も、ゆくゆく見直しが行われる可能性がある。

 危機感を抱いた北朝鮮は、労働者ではなく、人材派遣に切り替えようとしている。米メディアによれば、伝統的友好国のパキスタンに対して、卓球、レスリング、テコンドーといったスポーツ交流の拡大を提案。スポーツコーチの派遣を提案しているというが、パキスタンは乗り気ではないという。

 有力な外貨稼ぎ手段だった「武器取引」は、国際的な制裁の影響で多くの国がやめている。労働者派遣が減っていけば、北朝鮮は今後、深刻な外貨不足に悩まされ、金正恩政権への打撃にもなるだろう。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にしたが、現在は連絡が途絶えている。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

最終更新:8/24(水) 13:00

ニュースソクラ

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