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大学ランキングは“知の序列”なのか

ニュースイッチ 8/24(水) 8:34配信

石川真由美阪大教授に聞く「書籍の価値についてはほとんど考慮されていない」

 ―世界の大学を同じ基準で比較・評価するランキングに対して、大学関係者の違和感は強いですね。
 「大学は多種多様なもの。それを同じ尺度で数値化、序列化するのはおかしい―と関係者の多くが感じている。そもそもランキングは、学術論文雑誌の出版やデータベースのビジネスを手がける機関が出している。指標も測定可能なものだけが使われている。それにもかかわらず、本質的な大学の研究教育の評価と混同され、国の政策ツールに使われるケースも出ている」

 ―とはいえ、ランキングの存在感が大きくて無視するわけにいきません。
 「急速に国際化が進んでいく中で、留学生や外国人教員の獲得競争などを考えると影響は大きい。これは他国でも共通の悩みであることから、本書の企画につながった。本書は、今の大学ランキングに対して各国、各分野の専門家が『本質は何か』『どう改善していけばよいか』を論じた学術書だ」

 ―学問分野による違いが大きいそうですね。
 「ランキングの指標となるデータベースは、米国のトムソン・ロイターが提供する『ウェブ・オブ・サイエンス』と、オランダのエルゼビアが提供する『スコーパス』といったものが有力だ。どちらも欧米を中心とする学術論文雑誌が対象となっており、書籍の価値についてはほとんど考慮されていない」

 「日本をはじめ多くの国で、生命科学などの研究成果発表は英語論文が浸透している。一方で人文・社会科学系は、自国語の論文や書籍が大半で、ランキングではほとんど評価されていないという課題がある」



 ―この書籍も日本語で執筆されています。
 「知識に基づいた健全な議論を国内で展開するために、文系では自国語での情報発信が重要だ。もっとも理系でも自国語で議論する場は欠かすことができない。本当に斬新なものは、いきなり国際論文に出しても受け付けてもらえないためだ。国内で数年間もまれることにより、はじめて新たな知として浸透するという具体例がある」

 ―大学ランキングは実のところ、研究しか見ていないのでは。
 「そうだ。教育の指標はごく一部のみだ。他の研究者らによる『評判』という指標も怪しい。しかし、学生の留学先選びに役立つものにするなら『どれだけきちんと面倒を見てくれるか』という教育の質を保証していくことが一番ではないか。論文より授業の中身が重要なはずだ」

 ―逆に、ランキングの良い点は何ですか。
 「その大学が海外からも見えることになり国際化の後押しになっている。特に日本、中国、韓国、台湾といった東アジアで、教員や学生の流動性につながっている。近隣の文化や言語に詳しい若者が増えることにより東アジア圏が強くなることは、プラス効果といえるだろう」
(聞き手=山本佳世子)

※著書「世界大学ランキングと知の序列化」(京都大学学術出版会)
【略歴】
石川真由美(いしかわ・まゆみ)=大阪大学教授 88年(昭63)東京都立大院社会科学研究科修士課程修了。87年在マレーシア日本国大使館専門調査員。01年国連児童基金(ユニセフ)駐日事務所コンサルタント。03年大阪大学院人間科学研究科講師。11年国際企画推進本部教授。16年グローバルイニシアティブ・センター教授。博士(人間科学)。兵庫県出身、55歳。

最終更新:8/24(水) 8:34

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