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しつけのためなら、たたいてもいいのか?

ベネッセ 教育情報サイト 8/24(水) 17:00配信

【質問】

私の友人で3歳と6歳の子のママがいます。お互い子連れでよく一緒に出かけるのですが、彼女はときどき自分の子どもをたたきます。彼女が言うには、「3歳では、やってはいけない理由を言ってもわからないこともある。それでも、ダメなものはダメと教えなければならない。しつけのために痛くない程度でたたくならいいと思う。おしりとかなら痛くないから」とのことです。うーん、どうなんでしょう? (エコンテ さん)

親野先生からのアドバイス

エコンテさん、拝読いたしました。

私はたたくことには絶対に反対です。

たたいてしつけるとは、どういうことでしょうか?
それは、苦痛を与え恐怖心を植え付けることで子どもを支配することです。暴力の恐怖による支配、それ以外の何ものでもありません。
子どもにとって、たたかれることは苦痛そのものです。たとえ、それほど痛くないたたき方でも、たたかれたということ自体が、攻撃を受けたということ自体がショックであり苦痛なのです。

当然、たたかれることへの恐怖心が植え付けられます。子どもは、恐れを持って親の顔色を見るようになります。つまり、恐怖心と共に人間不信(他者不信)が植え付けられるのです。
同時に、子どもは、無意識の中で、親にこのように扱われる自分は大切な存在ではないと感じるようになります。もし自分が大切な存在なら、このように扱われるはずがないからです。こういう認識は抑えがたく出てきます。
これは自己否定そのものです。人間にとって、自分は大切な存在ではないと感じることはとてつもない痛みです。

このように、たたかれることで自己否定と他者不信が育ってしまうのです。

ところで、次のようなことを言う人もいます。

・しつけのためなら、たたいていい
・やってはいけない理由を口で言っても理解できない年齢では、しつけるためにたたいていい
・「これをしたらたたくよ」と約束して、納得したうえでたたくならいい
・痛くないように軽くたたくならいい
・おしりならたたいていい
・たたいたあとで抱きしめて、たっぷり甘えさせてフォローすれば大丈夫
・友達をたたく子には、たたかれたときの痛みを教えるためにたたくことも必要

これらは、すべて、大人の側の理屈であり間違っています。

やってはいけない理由を口で言っても理解できない年齢なら、当然のことながら、なぜたたかれたかもわかるはずがありません。それなら、どこにたたく意義があるのでしょう?

わけがわからない子に、たたいたり感情的に叱ったりしてはいけないのです。それは、ただ苦痛と恐怖を、そして自己否定と他者不信をもたらすだけです。
わけがわからないときは、単純にやめさせたり注意をそらしたりすればよいのです。わけがわかるようになってから、言葉で優しく丁寧に諭せばよいのです。
たたくという行為は、相手の尊厳を否定する行為です。痛くない程度とか、おしりならいいとか、そういう問題ではないのです。

たたいたあとで抱きしめて、たっぷり甘えさせても、恐怖と不信は消えません。子どもには、何が何だかわけがわからないでしょう。ただ、自分を守るために親の顔色をよく見るようになるのは確かです。
「友達をたたく子には、たたかれたときの痛みを教えるためにたたくことも必要」という考えもナンセンスです。それは、子どもがたたくのをやめさせるために、親がたたくということです。これほどの自己矛盾はありません。
それに、わざわざ親がたたかなくても、たたかれれば痛いことなど小さい子でも知っています。親はそういう理屈をつけても、実際はたたくことを子どもに教えているようなものです。

子どもがたたくのをやめさせるには、言葉で言えばいいのです。それしかないし、それ以外やってはいけないのです。たたくことでたたくのをやめさせることは絶対できません。
もちろん、親がいるところではたたかなくなります。でも、親がいないところではたたきます。
親がたたくのは、たたくことを教えるのと同じです。そういうつもりでなくても、実際はたたく見本になるだけです。「たたかれるとこんなに痛いんだからね。だからたたいちゃだめ!」と言いつつたたいても、実際は逆効果になるだけです。
たたく親は「痛みを教えるためにたたく」と言いますが、そのこと自体が「理由があればたたいていいんだよ」と教えているのと同じです。こういうことは、必ず子どもが感じ取ります。そして、まねをするようになります。

ここはとても大切なことなので、もう一度言います。
「しつけのためならたたいていい」というのは、「理由があればたたいていい」ということです。
親が理由をつけてたたくことは、それを子どもに教えることなのです。

親が、「ずるいことをしたらたたくという約束だったね。だからたたくよ」と言ってたたいたとします。それは、「理由があればたたいていい」と教えているのと同じなのです。
子どもは必ずその理屈を学びます。「自分も理由があればたたいていい」と考えるようになるのです(そして、人はみんな自分の理由は正当だと考えます)。
これでは、「どんな理由があってもたたいていはいけない」と教えることはできません。
それを教えるには、まず親がそうでなければなりません。

ニュースを見ればわかることですが、暴力を振るう人は必ず理由をつけます。「その理由は正当であり、自分の暴力は正当なものだ」と言います。個人でも国でも同じです。
でも、暴力はどんなに理屈をつけても暴力なのです。暴力を正当化することはできないのです。

どんな理由があっても暴力は振るわない、それがあるべき姿なのです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

ベネッセ 教育情報サイト

最終更新:8/24(水) 17:00

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