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もうナウシカは生まれない?ジブリ、起死回生の一手は「総選挙開催」

ZUU online 8/25(木) 8:10配信

誰もが忘れられない1本を持っている。そう言っても過言ではないくらい、広く愛され続けるスタジオジブリ作品。数々の名作を生み出してきた同社だが、その台所事情は決して穏やかなものではない。常にギリギリの努力を迫られ続けているジブリが、新作映画の公開を記念して、総選挙なるものを開催している。

■1位になったら劇場公開、スタジオジブリの総選挙

「スタジオジブリ総選挙」は、第69回カンヌ国際映画祭で「ある視点」特別賞を受賞した新作である「レッドタートル ― ある島の物語」が、2016年9月17日に全国ロードショーを迎えるのを記念してのイベントだ。

8月13日から28日の間に、「風の谷のナウシカ」から「思い出のマーニー」までのジブリ21作品の中から、スクリーンで観たい作品を選んで投票する。投票は1票だけだが、最も多くの票を集めた一作品が、TOHOシネマズの六本木ヒルズ、名古屋ベイシティ、梅田、天神、および札幌シネマフロンティアの計5つの劇場で上映される。

8月13日から20日までの集計分から、すでに中間発表が行われている。公開順に「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」、「魔女の宅急便」、「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」が上位5作品に名を連ねた。「魔女の宅急便」を除いては、全て宮﨑駿氏が原作・脚本・監督を務めている。いずれも根強いファンを持つ作品だろう。

■宮﨑氏引退後のジブリを占う勝負作は日仏合作

長く愛されるスタジオジブリの製作部門が、突如解体するというニュースが流れ、多くのジブリファンを驚かせたのは2014年8月のこと。「思い出のマーニー」がジブリの最終作となってしまったと思っていたファンも多いはずだ。だが、そんなところに今回の「最新作」登場の発表があり、戸惑いを覚えた人も少なくないはずだ。

実のところ、今回公開される「レッドタートル」は日仏の合作ということで、これまでのジブリ作品とは大きく異なる。2000年に公開された、わずか8分間の「岸辺のふたり」というマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督作品が、珠玉の短編アニメとして、2001年米国アカデミー賞をはじめ数々の映画祭で激賛をもって迎えられた。

この作品に惚れ込んだスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、同じ監督による長編映画を観てみたい、という思ったのが出発点だったという。マイケル監督はじめての長編映画は監督の要望で、高畑監督以下スタジオジブリとの入念な打ち合わせを重ねながら制作された。アニメーション制作の実作業はフランスを中心に行われ、完成には8年もの歳月が費やされた。

■コストを賄うには、毎年1本100億超えのヒット作が必要

そもそも、数多くの名作を生み出してきたスタジオジブリが、映画製作部門の解体にいたった背景には、いくつかの要因がある。最たるものは会社を維持するためのコストが、膨らみすぎていたことだろう。

日本のアニメの制作費は、「エヴァンゲリオン 新劇場版:破」が約6億円、「映画AKIRA」が10億円など、概ね5億円から10億円程度のものが多い。対するジブリ作品は、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」が20億円、「ハウルの動く城」が24億円、「崖の上のポニョ」は34億円、制作期間が8年に及んだ高畑勲監督の「かぐや姫の物語」は51億5000万円と、きわめて高額の制作費がかけられている。

年間20億円にのぼるという人件費と合わせて考えると、年に1本程度の100億超え作品が必要になる。だが、実際に興行収入が100億を超えたアニメは、日本映画史上8作しかない。確かに「千と千尋の神隠し」は歴代トップとなる304億円の興行収入を上げ、「ハウルの動く城」が196億円、「もののけ姫」は興行収入の193億円に加えて配給収入113億円を挙げている。上記3作品に加えて「崖の上のポニョ」と「風立ちぬ」と、ジブリ作品が8作品のうちの5作品を占めているのだ。

けれども、150億円の「アナと雪の女王」、154億円の「トイストーリー3」など、けた違いの制作費をつぎ込んで、世界中に作品を送り出しているディズニーピクサーと戦いながら、100億超え作品を量産するのは、きわめて困難な試みだと言わざるを得ない。

宮崎駿氏最後の監督作品として話題になった「風立ちぬ」は、120億2000万円の興行収入を得たが、宮崎駿監督作品以外には100億円超の作品がなく、米林宏昌監督の「借り暮らしのアリエッティ」の92.5億円が最高だった。宮崎駿監督引退後の後継者と言える人材が育たなかった点も、ジブリの経営圧迫要因として見逃せない。

■制作拠点を海外に移すのはリスクヘッジ

高騰する人件費に苦しんでいるのは、もちろんスタジオジブリだけではない。国内の多くのアニメ制作会社は、人件費のリスクヘッジとして海外での制作を進めている。特にタイやインドなど、アジア地域での制作が盛んになっている。

そうした中で、プロデューサーとしての役割に徹し、制作を海外に任せる一方で、過去の作品の活用を図るというジブリ総選挙の試みが、「妥当な経営判断」と評価されるかどうかに注目だ。

日本アニメの中でも、ブランド力などでトップクラスのスタジオジブリ。子供の頃も、子どもと大人の間にいた頃も、もちろん大人になってからも、色褪せることなく記憶に残る、ジブリ作品がある人も多いだろう。総選挙の投票は2日後までだが、投票してみてはいかがだろうか。(ZUU online編集部)

最終更新:8/25(木) 8:10

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