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リオ銀メダリストが抗議 エチオピアの圧政はなぜ見過ごされてきたのか?

THE PAGE 8/25(木) 17:25配信

 リオ五輪最終日の8月21日、男子マラソンで銀メダルを獲得したエチオピアのフェイサ・リレサ選手が、ゴールインの際に頭上で腕を交差させました。これは母国エチオピアの政府による弾圧への抗議で、リレサ選手自身はこれで自分の生命も危険かもしれないと語っています。

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 多くのアフリカ諸国と同じく、エチオピアも多くの日本人にとってはなじみの薄い国です。しかし、それは多かれ少なかれ、ほとんどの国の人にとっても同じで、世界の目が集まるなかでのアピールは、エチオピアへの幅広い関心を呼び起こす機会になりました。

 リレサ選手がいうエチオピアでの圧政とは、どのようなものなのでしょうか。また、それはなぜ日本に限らず、国際的な関心を集めてこなかったのでしょうか。(国際政治学者・六辻彰二)

実質的な一党制「司法を経ない処刑」

 アフリカ北東部にあるエチオピアは、アフリカの精神的支柱とも呼ばれます。それは、13世紀に成立したソロモン王朝にルーツをもつエチオピア帝国が、ヨーロッパ列強にアフリカ全土が植民地支配された19世紀から20世紀半ばにかけても独立を保ったことによります。これもあって、アフリカ各国が加盟するAU(アフリカ連合)の本部は、エチオピアの首都アディスアベバに置かれています。

 皇帝が支配するエチオピア帝国は、1974年の革命で崩壊。その後、社会主義政権が成立しましたが、国内各地で生まれた4つのゲリラ組織の連合体「エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)」が、内戦の末に1991年にこれを倒しました。それ以来、エチオピアでは議院内閣制のもと、憲法に基づいて定期的に選挙が行われてきました。

 ただし、エチオピアでの選挙は民主的とはいえないものです。例えば、本来は中立的であるべき選挙管理委員会も政府支持者の集まりで、2015年選挙では野党系候補のほとんどが立候補できませんでした。また、警察など治安機関による野党への嫌がらせや妨害も珍しくなく、2015年選挙の場合は投票日に野党関係者500人以上が逮捕されました。さらに、選挙前後には野党関係者が相次いで殺害されたまま、犯人が逮捕されない事態が頻発。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはこれを「司法を経ない処刑」と呼びます。

 この状況のもとで、EPRDFが議席の大半を握り続けてきたことは不思議でありません。2015年選挙では547議席中500議席をEPRDFが獲得。エチオピアはいわば形式的な選挙に基づく実質的な一党制のもとにあるといえます。

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最終更新:8/25(木) 23:26

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