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進むシェアリング・エコノミー 物流業界で明暗分かれる理由

ZUU online 8/25(木) 18:10配信

所有することはリスク、そう考える個人が増え、若者の自動車離れなどが話題になっている。だが、所有がリスクになるのは、個人に限った話ではない。機材ありきである物流業界にも、シェアリング・エコノミーの波が来ている。

■航空業界にもシェアリング・エコノミーの波

最近関連ニュースが増えているのが、航空業界である。背景にあるのは、LCC(格安航空会社)の興隆だ。厳しいコスト競争に晒されているLCCにとって、高額の航空機を購入するのは難しい。購入ではなくリースとすることで、金融機関からの融資を有利にすることができる。健全経営を維持することは、いわば当然の帰結といえる。

現在2 万 5000機以上の航空機が、世界の空を飛んでいるが、そのうちリース機の比率は実に45%にも及んでいるという。日本においても、2016年8月に、伊藤忠商事が英航空大手のブリティッシュ・エアウェイズ(BA)から、十数機の中型旅客機をリース契約している。また2016年6月には、三菱航空機製の初の国産ジェット旅客機(リージョナルジェット)20機の受注が決まったが、その相手先もロックトンというスウェーデンの大手航空機リース会社だ。LCCによる機数拡大競争は、今後も一層活発化することが予想されており、それにともなって航空機のシェアリング・エコノミーが、増加することは間違いない。

■海運業界は負の遺産消化できず、シェアリング・エコノミーはまだ先か

一方で、海運業界においてはシェアリング・エコノミーの普及はまだ進んでいない。歩みを停めている大きな原因は3つある。まず世界的な景気減速による船舶運賃低下、そして中国経済の減速による輸送量の低下、それにともなう能力過剰である。世界最大級の船舶解体場といわれる、インド・アランの浜辺には、日々多くの船が運び込まれ、船体の切断作業が行われている。その惨状はまさに、船の墓場と呼ばれるほど痛ましい。

とくに日本では、シェアリング・エコノミーはなかなか進んでいない。理由としては、船舶へのファンドやファイナンスの条件が税制的に厳しく、またピッグプレーヤー不在、海運ビジネスに精通した金融人材不足、さらに海運業界の古い慣例などの壁があるからだ。結果として、世界的にみても相当遅れていると指摘されているのである。しかし、船舶は航空機以上の高額な設備であり、シェアリング・エコノミーが導入されれば、より柔軟なビジネスに道を開く可能性がある。

ただ減価償却さえままならない日本の海運業にとって、シェアリング・エコノミーによって次代への一歩を踏み出すのは、まだ時期尚早という意識が大勢のようだ。

■シェアリング・エコノミーを牽引するのは運輸業界

物流業界で最もシェアリング・エコノミーが進んでいるのは、やはり運輸業界だろう。個人向けサービとして、カーシェアリングや自分の車をタクシーとしてシェアするなど、世界的にも急速に普及している。

法人向けはまだこれからといった段階だが、日本でもネット印刷サービスのラクスルが、トラック運送業者の空き時間を使った、荷物配達サービス「ハコベル」をスタートしている。運送業者が保有するトラックの空き時間を利用して、配送を受託できるサービスで、利用者がパソコンやスマートフォンを使って希望条件を入力して依頼するシステムだ。余った資産と時間を需要と結びつけ、中小企業を支援するサービスとして話題を集めている。

ほかにも、建築・農業・ヘルスケア関連等の機械、設備、サービスをシェアする「Floow2」、建設機器に絞ったマーケットプレイス「Equipment Share」、スマホやPCで簡単に利用できるオンラインコインパーキングサービスの「akippa」などが登場している。

続々と企業向けのサービスが登場するのには、運送機器・サービスは購入単価が高いという背景があり、今後も様々なジャンルで増加すると予想される。個人で主流となった運送のシェアリング・エコノミーは、今まさにビジネス分野に拡大発展していく段階といえるだろう。

■個人向けサービスから見える、法人向けの死角

始まったばかりの法人向けシェアリング・エコノミーだが、利便性やコスト削減の観点から見て経営面でのメリットが多く、日本でも今後爆発的に広がると期待されている。だが、死角はないのだろうか。

予想は難しいが、すでに個人向けサービスで指摘され始めているデメリットが、法人向けでも同様にデメリットになる可能性がある。たとえば、すでにお馴染みとなりつつある民泊あっせん企業Airbnbだが、米国ではニューヨークの地価を高騰させた元凶として、非難を浴びている。理由は、Airbnb用に貸し出すためのビルが乱立したことで一般不動産の供給を圧縮し、価格を上げてしまったからだ。当然、客を奪われた既存のホテル業界からの非難の声も大きい。また配車サービスのUberは、これまでのタクシーサービスを圧迫し、運転手の雇用を奪うとして、タクシー業界から強い非難を集めている。

新しいサービスであるがゆえに、先走った業者が法整備の整わないうちに、収益性のみを追求することは考えられる。既存のサービスを圧迫し、競合する業界から雇用を奪うだけでなく、利用者無視となる可能性も否定できない。

利用者優先を考えるのであるなら、法を整備し、雇用のスムーズな移転を実現し、ソフトランディングを図ることが、これからの政治に求められるだろう。

日本政府も2016年をシェアリング・エコノミー元年と位置づけ、さまざまな環境整備を進めている。それに先立ち、2015年12月には民間の関連企業が集まり、業界団体「シェアリングエコノミー協会」を設立し、さまざまなルール作りにも取り組んでいる。

インターネットやSNSの広がりによって、可能となったシェアリング・エコノミー。これから紆余曲折はあるだろうが、利用者の支持が集まりつつある現在、ビジネス分野においもその進化・拡大はさらに加速していくと予想される。だが、本当に生活に役立つものなのか、最終的に利用者が不利を被らないか、見極める必要があるだろう。(ZUU online編集部)

最終更新:8/25(木) 18:10

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