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出光・昭和シェルの統合を阻んだ「創業者一族の反対」

ZUU online 8/25(木) 19:10配信

石油元売業の大型再編として注目される出光興産 <5019> と昭和シェル石油 <5002> の経営統合が暗礁に乗り上げている。元社長の出光昭介氏ら創業家が反対しているためだ。業界全体で設備統廃合等による合理化が避けられない中にあって、出光家が再編に反対する理由はどこにあるのだろうか。

■出光と昭和シェルの経営統合は迷走

2015年11月に出光と昭和シェルは、「業界が抱える様々な構造的課題の解決に先頭に立って取組み、より効率的かつ安定的なエネルギーの供給を通じて国民生活の向上に資することを目指し」経営統合することを公表した。

基本戦略の第一に「他社を効率性で凌駕する業界 No.1 の収益力を持つリーディングカンパニーを構築し、国内石油精製販売事業を安定的なキャッシュフローを生み出すビジネスにする」ことを掲げており、合理化を進め財務体質の強化を図り競争力を高める狙いが窺われる。

具体的な手順として、公正取引委員会の企業結合審査を経て2016年9月に出光が英蘭系オイルメジャーのロイヤルダッチシェル(RDS)から1株1350円で1億2526万1200株(発行済株式総数の33.3%)の昭和シェル株式を買い取り、2017年4月1日に経営統合する計画が示された。

そうした中で出光創業家は6月下旬の定時株主総会において経営統合に反対する旨を表明し、経営陣との対立が表面化した。

経営陣は8月15日に「持続的な成長戦略を通じた企業価値の最大化のために、当社が昭和シェル石油との経営統合を決断した背景・理由には十分な合理性がある」旨を改めて公表し、創業家との溝が埋まっていないことが明らかになった。

■経営統合を阻む創業家の影響力

8月3日、出光昭介氏は経営統合の阻止を狙い昭和シェル株式40万株を取得したと代理人(浜田卓二郎弁護士、神部健一弁護士)を通じ公表した。

上述のとおり出光はRDSから昭和シェル株式の33.3%を買い取る方針だ。これは金融商品取引法第27条の2第1項第2号により、買付直後の株式保有比率が発行済株式総数の1/3を超えない場合は公開買付(TOB)の実施義務が課されないことを踏まえたものと想定される。

この株式保有比率は名寄せされたグループ全体で算定される。個人とその被支配法人等が合わせて他の法人等の発行済株式総数の20%以上を保有する場合は、当該他の法人等の特別資本関係者に当たり名寄せ対象となる(金融商品取引法第27条の2第7項第1号、同施行令第9条第3項)。

代理人は、出光昭介氏、出光正和氏、出光正道氏および日章興産が合わせて出光の発行済株式総数の21.1%を所有する特別資本関係者に当たり、昭和シェル株式の買い付けに際し出光昭介氏らの保有株式数も加えTOBの実施義務を判断しなければならないと述べている。

代理人は出光昭介氏らによる昭和シェル株式の取得に関し今後は明らかにしない旨も表明している。株式保有比率が5%に達すれば金融庁へ大量保有報告書(金融商品取引法第27条の23第1項)を提出しなければならないが、それまで投資実態が開示されることはない。

出光としては、RDSから買い付ける株式数を減らしたりTOBを実施したりするなどの戦略変更が不可欠となる。

8月19日の昭和シェルの株価は878円だった。出光が計画どおり1株1350円で買い付ければ、591億円の含み損を抱える計算だ。代理人はこの点からも株式取得の妥当性に疑問を投げかけている。こうしたことも踏まえ創業家が現取締役の解任と新任取締役の選任を議題とする臨時株主総会の招集を求めるかもしれない。

■公開企業のM&Aに立ちはだかる創業家

出光創業家が昭和シェルとの経営統合に反対する本質的な理由は、社風が全く異なる外資系企業との統合により企業文化が変質することへの危惧だとみられる。

社員を家族の一員とみなし定年制を設けず人員整理もしない代わりに労働組合の設立を認めず残業代も支払わないといった独特の経営は、2006年の株式公開により少しずつ変質している。創業家はそれが完全に変わってしまうと考えているのではないか。

創業者の出光佐三が掲げた5つの主義方針(人間尊重、大家族主義、独立自治、黄金の奴隷たるなかれ、生産者より消費者へ)は何れも立派なものだが、本来その実現に向けた道筋は少数株主の創業家ではなく経営陣が考えるべきことだ。

公開企業は不特定多数の株主が所有するものである。特定少数の株主が強い影響力を発揮することは制度の趣旨に反する。創業家は財務体質の悪化により株式公開せざるを得なくなった段階で、所有と経営が一体化した非公開時代に醸成された企業文化が変質することを受け入れるべきだった。

公開企業ではないがサントリーホールディングスも2010年に創業家の判断でキリンホールディングス <2503> との経営統合を破談にした。当時、サントリーの佐治信忠社長(当時)は「オーナー会社の良さはパブリックカンパニーにはなかなか理解できない。サントリーの111年の歴史、創業家と会社のかかわりを見てくれれば、わかってもらえると思った。」と述べている。

創業者や一族が自らの信念を大切にすると同時に不特定多数の株主に支えられる公開企業のコーポレートガバナンスのあり方を理解しなければ、M&Aなどによる抜本的な企業改革は進まないだろう。(ZUU online 編集部)

最終更新:8/25(木) 19:10

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