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女性マネージャーは必殺仕事人でいいのか?

ITmedia ビジネスオンライン 8月25日(木)10時33分配信

※この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


●女性マネージャー育成に困っている企業

【昇進意欲と能力による分類】

 女性活躍推進、というなんとも収まりのわるい言葉が巷であふれるようになりました。今までいわば男社会での二級市民扱いだった女性をなんとかメインストリームに押し上げようという昨今の動き自体は実に喜ばしいことです。

 一方でビジネスの現場では混乱がおきています。女性マネージャーを育成せよとの大号令が懸かって真剣に取り組んではいるものの、どうもしっくりいっていない。仕事柄多くの経営者や人事担当者と会いますが、女性マネージャー育成関連の話題では、「女性が昇進を進めても希望しない」「社内でロールモデルを提示したら女性達から反発にあった」「女性を優先して昇進させたので社内の男性の志気が下がっている」「女性のことを悪く言えないなんともいえない雰囲気が社内にできてしまった」などの話を業態業種関係なく聞くようになりました。

 この種の事態はどうして発生してしまったのでしょうか。女性マネージャーの育て方の工夫を多くの男性上司がしておらず、勝手な思い込みで育成を行ってきたことで、この種の混乱が起きているのではないか。人間行動を研究の中心とした経営学者である筆者はそう考えています。もちろん、男性ばかりが悪いのではありません。女性側も効果的に育成される、もしくは自ら進化する努力をすることが必要で、両方の工夫と努力が相まってこそ、効果的なマネージャー育成が行われるのです。

●現状を知ってみる――必殺仕事人が多すぎる

 まず現状を知るために、こんな図を書いてみます。縦軸に昇進意欲、横軸に能力をとって分類してみます。これはある一時期の状態を分類したもので、今後いくらでもポジションの変更が可能です。

わが国の現状で圧倒的に多いのは、必殺仕事人グループに属する人達でしょう。彼女達がより一層能力を磨き、昇進意欲を向上させ、組織の達人へとシフトしてもらうというのが喫緊の企業の課題です。

 職場の花といわれる人種と彼女達がやっていた仕事の多くは、昨今では派遣労働者に取って代わられたので、このグループの相対的な数は少なくなっています。一方で、仕事ができないのに、昇進意欲が高いという又扱いに困るグループも発生しています。これはひょっとしたら、女性マネージャーの数値目標を念頭に実力や経験を伴わない昇進をさせたことの副産物として発生したのかもしれません。彼女達が変化するにはどのような経験や、教育が必要なのかについても考える必要があります。

●ロールモデルがいたからって昇進意欲があがるものではない

 必殺仕事人達に昇進意欲を持ってもらうためにはどうすればいいでしょうか。世間で最も盛んなのはロールモデルを企業が提示することです。昇進し、生き生きと働いている女性の先輩を身近に感じることで自分達も昇進を目指すとされています。ロールモデルの効用については多くの優れた研究があり、その有効性は否定しません。ただ、現状で女性達の声を拾ってみると、「ああにだけはなりたくないと思っている先輩をロールモデルとされてもねえ……」という声が非常に多いのです。会社側が男性目線で選んだロールモデルは、女性達にとっては参考にならないことが多い。これはとてももったいないことです。

●バックティー・シンドロームにかかる女性達

 今まで女性マネージャーは少数派でした。彼女達への調査では、少なくとも現状の男性マネージャーへの調査で見られなかった特徴がありました。「自分が失敗すると後に続く(女性の)後輩達に迷惑が掛かる」という抜き出し検査のサンプルのような感覚です。男性マネージャーへの調査で、この種の発言は聞いたことがありません。いくらでもそのポジションの代替となる人物がいるからです。そして、一定数の女性達が持つ「女性は男性の倍働かないとなかなか認められない」という感覚です。女性が自らを心理的に追い込んでいくこれらの要素をバックティー・シンドロームと名付けました。

 バックティー・シンドロームに罹患(りかん)すると、ただでさえ真面目で、傷をなめ合う仲間がなく、自分を追い込むタイプが多い女性マネージャーにとっては、メンタルヘルス上難しい事態に直面するのは間違いありません。女性マネージャーを育成する際に、このリスクを減らすことこそが上司や企業の役目です。

●ネットワークを広げることを助ける

 上司と企業が考えなくてはいけないことは、女性たちが男性も含めて交流の場を持ちネットワークを広げるように配慮することです。ここで無理に女性同士にこだわる必要はありません。誰と話すのかは最終的には自分が選択することだからです。大事なのは、個人の活動ではおよばない範囲の人と知り合える「場」を提供することで、特に大がかりに予算をかけて何かを作る必要はありません。自分の友人達を紹介する、外部の研修や交流会にだす、社内横断的なプロジェクトに参加させる、そんなことでかまいません。

なぜ、ネットワークが必要か。情報交換という機能の他に、自分の心情を吐露し、お互いにアドバイスをしあうという機能も持つからです。いつもと違うメンバーと交流することで、「煮詰まっている」状態から、新たな刺激を得ることで脱出できる可能性も生まれます。

 実はこのネットワーク構築こそ、企業が貢献できる最も大きな仕掛けです。

●思い込みは捨てる

次に男性上司は女性マネージャーの足を引っ張らないことが必要です。意識としては「女性を応援している」つもりでも、女性に対して「こうあるべきだ」というマインドセットが強いために、結果的には女性を心理的に追い込み、足を引っ張っている男性上司は実に多くいるのです。そして、よく部下を観察することです。心理的に部下が追い詰められていないか。女性の場合は、より丁寧に観察するように心がけるべきです。必要とあれば積極的に介入します。

 いずれにせよ、女性マネージャー育成は始まったばかりの過渡期です。試行錯誤をしながらその会社にあった育成方法を編み出すことなしに女性マネージャー育成はありません。

(高田朝子)

(ITmedia エグゼクティブ)

最終更新:8月25日(木)10時33分

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