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東北大、ビスマス層状酸化物の超伝導化に成功

EE Times Japan 8月25日(木)10時38分配信

■ビスマス化合物以外でも、超伝導発現の可能性高まる

 東北大学大学院理学研究科の福村知昭教授と清良輔大学院生(東北大学大学院理学研究科、東京大学大学院理学系研究科)らの研究グループは2016年8月、これまで超伝導を示さないと考えられていたビスマス層状酸化物の超伝導化に成功したと発表した。酸素を過剰に導入してビスマスの単原子シートの間隔を拡げることで実現した。なお、今回の研究は福村氏らに加え、東京大学大学院理学系研究科化学専攻の長谷川哲也氏、東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所の川路均氏らと共同で行った。

【結晶構造のイメージ図】

 ビスマス化合物は熱電材料やトポロジカル絶縁体など、エネルギー変換/省エネルギー材料として注目されているものの、超伝導の特性を示すビスマス化合物はほとんどないという。ところが、高温超伝導を示す鉄系化合物と類似した結晶構造を持つビスマス層状化合物は多く、研究対象の1つとなっている。今回の研究で用いたビスマス層状化合物「Y2O2Bi」もこれまで、超伝導体ではないとみられてきた。

 東京工業大学の研究グループが2011年に報告したY2O2Biは、高温超伝導を示す鉄系化合物「BaFe2As2」と同じ結晶構造となっている。これらの材料が異なる点は、超伝導を担う場所が互い違いになっていることだ。BaFe2As2の場合、Fe2As2ブロック層が超伝導を担う。これに対してY2O2Biは、Bi単原子シートが超伝導を担っているという。

 他方、東大/東北大の研究チームは、2014年にY2O2Biのエピタキシャル薄膜成長に成功していた。この過程で、ゼロ抵抗ではないが極めて低い温度で抵抗がわずかに減少する現象を確認していた。

 研究グループは今回、これらの研究成果を踏まえて、Y2O2Biに過剰の酸素を導入した。そうしたところ、ゼロ抵抗と完全反磁性を示す超伝導を観測することに成功した。通常の化学組成では超伝導は発現しないという。東工大の研究グループが開発した極低温の比熱測定装置を用い、超伝導の相転移を実証した。

 超伝導体化したビスマス単原子シートを分析したところ、導入した酸素がビスマス単原子シートとYOブロック層の間のわずかな間隔に入り込み、c軸方向に結晶が伸びることが分かった。この機構によって超伝導を発現したとみている。c軸方向の結晶の伸び率はHfNClのような、へき開面に大きな有機分子を挿入して超伝導が発現する場合に比べると非常に小さいものの、その伸び率に対する超伝導転移温度の上昇率を比べると、Y2O2Biの方がとても大きいことが分かった。これらの挙動は、ビスマス単原子シートに発現する超伝導の性質に起因する可能性が高いとみている。

 今回行った「層状化合物の結晶構造の隙間に原子を挿入して結晶の単位長を精密に調節する」という、これまでの化学手法ではない新しい方法を用いると、「ビスマス化合物以外にも、新たな超伝導体が見つかる可能性がある」と研究グループは見ている。また、今回開発したY2O2Biは、新タイプのビスマス化合物超伝導体であることから、特異な超伝導状態を有するかどうかも引き続き研究していく予定である。

最終更新:8月25日(木)10時38分

EE Times Japan