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“やり直し”に強いサウンド開発環境の構築。『バイオハザード7』のサウンドコンセプトとそのワークフローとは?【CEDEC 2016】

ファミ通.com 8月25日(木)22時17分配信

文・取材・撮影:編集部 オポネ菊池

●サウンドコンセプトを実現するためのエンジン開発
 2016年8月24日~26日の3日間、パシフィコ横浜で開催されている、日本最大級のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス“CEDEC 2016”。1日目に開催されたセッション“BIOHAZARD7 resident evil におけるゲームオーディオワークフローとシステム―コストをかけずにクオリティを高めるために改善したこと”をリポートする。

 今回登壇したのは、カプコンのサウンドディレクターである鉢迫 渉氏と、サウンドプログラマーの小島健二氏。まずは、『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下、『バイオ7』)におけるサウンドのコンセプトから解説が行われた。

 『バイオ7』のサウンドコンセプトは、“聞き取る恐怖”。ゲーム中、プレイヤーは生き残るためには耳を澄まさなければいけないが、聞くことで恐怖を感じる、そのジレンマをサウンドで表現する。このコンセプトを実現するためのピラー(柱)は、以下の3つだ。

3つのコアピラー
・イマーシブサウンド
イマーシブとは“没入型”などと訳され、生活音や環境音といった、自分がそこにいる感覚を増幅させる音のことだ。

・トラウマサウンド
恐怖の導入となる、違和感のある音のこと。イマーシブサウンド(日常)←→トラウマサウンド(非日常)という対比によって、お互いが際立つ関係になっている。

・ダイナミックサウンド
ゲームパラメータに連動した音で、状況に合わせてリアルタイムに変化させることで臨場感を与える。

 これらのコアピラーを実現させるために、『バイオ7』では自社開発の専用エンジン“RE ENGINE(アールイーエンジン)”を導入した。『バイオ7』の開発コンセプトとして、“システムありきのゲームにはしない”というものがあり、ゲームがおもしろくなければ、全部壊して最初から作り直す、ということが明言されていた。そのため、サウンド側も素早い更新やイテレーション(開発が反復されること)に対応するための新たなサウンドシステムを、ゼロから構築する必要があったという。

 また、今回のサウンドシステムの構築にあたっては、サウンドプログラマーの大量投入はなし、サウンド専属のアプリケーションプログラマーもなしという状況で、一層の効率化が求められた。そのため、人と機械が行う作業のすみ分けのほか、サウンド以外の各セクションともよく話し合い、シェアできる作業はないか、徹底的な見直しを図ったのだそうだ。

 新しいサウンドシステムによるワークフローのコンセプトは、“前行程が終わると、ざっくりいい感じに音が鳴る”ということ。前行程とは、サウンド制作のもととなる“絵やモーション”といったものだ。つまり、アニメーションや背景担当が作業を終えると、サウンドシステムが自動で“いい感じに”音を鳴らしてくれる。もちろん、そこから調整が必要になることもあるが、基本的な組み込みを自動化することで、自分たちの作業行程より上流で変更があっても、影響を受けづらくなる。どのセクションもアセットの作り込みは開発の終盤なので、まずはざっくり鳴るということが重要だという。また、従来まではプログラマーが作業を行っていたサウンドの鳴らし分け、音量の変更、フェードイン/フェードアウトといった処理はサウンドシステム側が吸収し、パラメータの変更で制御できるようになっているとのこと。

 サウンドアサインの自動化については、衣擦れや足音といった“事象”と呼べるものは自動化しやすく、作業を大幅に減らすことができたそうだ。これは、制作全体にも大きな影響を与えている。たとえば、足音をつける場合、従来はモーションの制作を待つ必要があったため、サウンドの作業にかかる時間を加味したうえで、前行程を前倒ししてもらっていた。しかし、自動化で大幅に時間を短縮することで、モーションの担当者はギリギリまで時間を使うことができる。

 自動化はサウンドのアサインだけではなく、遮蔽、リバーブ(残響)、環境音といった処理でも行われている。従来は、サウンドプログラマーが手作業で行っていたが、背景アーティストと協力して、メッシュをもとにアタリを設置。多少、背景アーティストの負担は増えるが、レベルデザインをギリギリまで変更することができるので、けっきょくはWin-Winの関係になっているという。

 字幕についても、これまでは音声を組み込んだ後、字幕を出すタイミングの調整に非常に時間がかかったが、波形にセリフの情報を持たせることで、プログラマーにデータを渡した時点で“いい感じ”に字幕が出てくれるそうだ。これは、プログラマーが行っていた作業をサウンド側がシェアした、という例だ。


 RE ENGINE開発の裏側は、とにかくセクションどうしの話し合いに尽きるだろう。どの作業をどのセクションが行うといいのか、そして自動化できる要素はないか。こうした作業の最適化によって、おのおの担当領域で磨き上げるための時間が増え、全体のクオリティーが上がる。今回のセッションは、サウンドだけではなく、大規模タイトルの開発そのものに関わる内容だった。

最終更新:8月25日(木)22時17分

ファミ通.com