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いまみち・杏子の極上おもてなし、ファン感激のバービー豪華絢爛の夜宴/ライブレポート

MusicVoice 8月25日(木)16時2分配信

 杏子といまみちともたかがそれぞれ自身のバンドを携え、8月10日、東京・下北沢GARDENで『いまみち杏子のお・も・て・な・し夏のヒ・ト・サ・ラ・イ【仮】』を開催した。ゲストに藤井隆、オカモトコウキ(OKAMOTO’S)、リンダを迎えるとともに、ライブ終盤にはBARBEE BOYSのエンリケ(Ba)とKOISO(Dr)がサプライズで登場。名曲「チャンス到来」と「タイムリミット」を披露するなど、この日が誕生日だった杏子を盛大に祝った。

【写真】変わらずの美しさでファンを魅了した杏子

■杏子&UNDER NORTH CLUB BAND

 地下を降りた秘密の隠れ家のような場内。レンガ調の壁に伝う空調機の冷気。それも構わず、観客の熱気が場内を温めていた。少し過ぎてからゆっくりと暗転する。ステージにスクリーンが降ろされると、この日の全出演者からの、杏子の誕生日を祝うメッセージ映像が流れる。一つひとつの個性溢れるメッセージに場内も和んでいた。

 映像が流れ終わると、混沌としたシンセサイザーと神秘的なピアノの音色が響き渡ってきた。このサウンドが、これから始まるライブへの期待感を高めていく。歓声が飛び交う中、杏子率いるUNDER NORTH CLUB BANDが「JOHNNY MOON DOGの行方に関する仮説」を披露する。ライブが幕を開けた。

 UNDER NORTH CLUB BANDは、サトウヨースケ(Gt)、CHICA(Vln)、クジヒロコ(Key)ハラダジュン(Ba)Grace(Dr)の5人組セッションバンド。挨拶代わりに届けられた最初の曲は、シンセサイザーとバイオリン、そしてギターとベース、ドラムのサウンドが絶妙に絡み合い、そこに存在感のある杏子の太くパワフルなロックボイスが乗り、バンドが奏でるアバンギャルドなサウンドが、会場を包み込んだ。

 「UNDER NORTH CLUB BANDです。ヨロシク!!」と杏子が短く挨拶し、「濡れた月」を披露。ピンクのライティングで妖艶さを演出。サイケデリックな香りのする独特な世界観を展開していく。バンドが出すサウンドの上を泳ぐように歌い上げていく杏子。そこに応えるかのようにバイオリンの伸びやかな音色が、歌と他の楽器の隙間を縫っていく。オーディエンスもその音の海に浸っているようだった。

 MCでは、UNDER NORTH CLUB BANDのバンド名について語った。「下がUNDERで北がNORTHで下北なんです。で、沢は?」と杏子がギターのサトウに尋ねると、「沢は省略ですね。飲みに行く時に下北沢に行こうではなくて、下北に行こうというじゃないですか?」と返し、杏子も「そうですな(笑)」と納得した様子。こうした、たわいもない会話もファンを喜ばせる。

 3曲目は、仮免を取りに行くまでを歌った「仮免マン」を披露。ノリの良い8ビートに自然と体が揺れる。水木一郎のものも作っているという業者に依頼して制作した赤いスカーフをメンバー個々が持参。それぞれ首に巻き、疾走するような音色に揺られて鮮やかに映えた。続けて、「ドラーイブ!!」と杏子が叫び、「ドライブ」に突入。杏子もタンバリンを手に持ち、パーカッシブに叩き、時には車のハンドルに見立て軽快にステージングしていく。

 ここで、近年、音楽活動も精力的に行っている藤井隆をステージに呼び込む。杏子が「いきなり来てくれたところで、いじめちゃう!?」とイタズラに微笑む。藤井は少し困惑の表情を見せたが、そのまま「イジメテミタイ」に突入。杏子と藤井のツインボーカルに会場は盛り上がった。ノリの良いサウンドに杏子も藤井もリズミカルに体を動かす。

 MCでは、1年半ほど前におこなわれたラジオの公開収録の話に。その時に聴いた藤井作詞作曲の楽曲「Kappo!」が気に入ったという杏子は「今日一緒にやりたいな」と「Kappo!」のミュージックビデオで使用しているものと似た手袋を持参し、それを藤井にもプレゼントすると、藤井は「480円ありがとうございます!!」と値段をばらし、観客から笑いが起こった。

 ファンキーなギターカッティングで始まるダンサブルなディスコティックなナンバーで、サビではピンクレディーの「ウォンテッド」のような振り付けを、オーディエンスと一緒におこない一体感を見せた。間奏では、杏子が藤井に「何かやってくれたまえ!」と王女の如く命令すると、どこからか新体操のリボンを持ち出し、クルクルとリボンを躍らせる藤井。そのあとステージ前方に設置されたパーカッションを杏子と藤井で叩き合い、パーカッションバトルへ展開。激しい叩き合いに会場も盛り上がった。

 続いての「UNDER NORTH CLUB BANDのテーマ」では杏子と藤井の歌の掛け合いで魅せていく。エンディングではオーディエンスも<Under North We are Freedom>とシンガロング。そして、メンバー紹介を経て、最後は再び<Under North We are Freedom>のシンガロング。それを煽った杏子は「意外とすぐ出来ちゃったね」と嬉しそうな笑顔を見せた。アウトロではサトウのドラムスティックでギターの弦を叩く奏法で、アタッキーなサウンドが会場にこだまする。藤井のジャンプで楽曲を締め、藤井が感謝の言葉を述べステージを後にした。

 そして、杏子&UNDER NORTH CLUB BANDラストの曲は、サトウが東日本大震災の時に作ったという「ノスタルジア」。歌詞をかみ締めながら歌い上げる杏子の姿は圧倒的な存在感を放った。曲の背景までもが見えてきそうな熱い歌と演奏に、オーディエンスも耳と目をステージに奪われているようだった。徐々に激しさを増していく壮大な楽曲展開を見せ、酔いしれたオーディエンスを後にメンバーはステージを去った。

■いまみちともたか率いるヒトサライ

 街の雑踏のようなSEが流れるなか登場したのは、いまみちともたか(Gt)が2014年に結成したバンド、ヒトサライ。メンバーに椎名純平(Vo・Key)、平山ヒラポン牧伸(Dr)、岡雄三(Ba)を擁する。彼らは、通算2枚目となるアルバム『嘘のようなマジな話』を7月27日にリリースしたばかり。

 ノリの良いご機嫌なロックナンバー「ドゥーユーワナダンス?」でヒトサライのライブはスタートした。伸びやかな椎名の歌声が下北沢GARDENに響き渡った。続いて、「イージー・アクセス」では手拍子を煽り、ドライブ感のあるグルーヴでヒトサライの持つ世界観に引き込んだ。

 椎名が「ヒトサライです。お前らをサライに来たぜ!」と語ると、平山のカウントから3曲目は「カリスマ」を披露。どこかノスタルジックな曲調で、心地よい平山と岡が生み出す8ビートによってオーディエンスも体を揺らす。そして、椎名のエレピといまみちのギターが対話をするかのように絡み合う。

 そしてここで、いまみちがMC。「2ndアルバムが出たばかりなので、今日はリリースパーティーにしようと思ったんだけど、去年の10月にここでライブをした時、自分の誕生日の前日で杏子が来て盛り上げてくれたので、今日はその時のお返しです」とこの日のライブを、誕生日である杏子に捧げるとコメント。

 更に、「素敵な後輩バンド、OKAMOTO'Sのオカモトコウキ」と呼びかけ、OKAMOTO'Sのギタリストのオカモトコウキ呼び入れた。いまみちが、お気に入りだという、昨年リリースされたOKAMOTO'Sのアルバム『OPERA』に収録されているコウキ作曲「ハーフムーン」を一緒に演奏。コウキのレイドバックした歌声とゆったりとしたリズムの中、時が穏やかに流れていくようだった。

 次は、コウキがヒトサライで気に入っているという楽曲「ゴキゲンナナメ」を一緒に演奏。岡の奏でるトリッキーなベースフレーズが印象的に響く。侘び寂びの効いた平山のドラムと、いまみちとコウキのギター、その上に椎名のソウルフルな歌が乗り絶妙なグルーヴで会場を満たしていった。いまみちに肩を叩かれコウキのギターソロへ突入。コウキの乾いたストラトキャスターのリードサウンドがバックサウンドの上を舞い踊った。エンディングではそのお返しとばかりに対照的な音色でソロを展開するいまみち。

 コウキがステージを去り、椎名が「昨日、BARBEE BOYSのライブ映像観ていたんですけど...」と話すと、いまみちが「いじめないで!」とおどけた。そのライブで「70年代生まれ手を挙げろ! 60年代生まれ手を挙げろ!」とやっていたのを見て椎名もそれをこの場で実行。「50年代生まれ手を挙げろ!」と叫べば、いまみちが「あっ! 俺か」とおどけ、当時のMCを再現した。ここでふと思ったのか、いまみちが「でも俺、59年生まれじゃん。もう60年会に入れてよ」と懇願も、椎名は「僕は70年会ですけど」とアピール。それを聞いたいまみちは「音楽に年齢も国境も関係ない」と話すとオーディエンスから大歓声があがった。

 続いての「新宿フェザータッチ」では、ギターのクリーントーンとクランチサウンドのコントラストが絶妙にシーンを彩り、アームを使用した表情豊かなギターソロがオーディエンスを魅了した。「グッモニ」ではメロウでゆったりとした空間に、オーディエンスも小気味よく左右に体を揺らし、楽曲の世界観を堪能していた。椎名の力強くもあり儚い一面を魅せる歌声が、更に楽曲をブラッシュアップしていく。

 そして、アッパーチューンの「ジャブトーク」では椎名のシンセサウンドがアグレッシブに彩りを加え、いまみちもギターソロで下手に移動し、オーディエンスをギターサウンドで煽っていく。平山のカウントから「キミとボンボン」へ。ビートを強調するハイハットの裏打ちに、ドライブした岡のベースといまみちのギターがさらなるグルーヴを生み出し、会場の温度は上昇していく。メンバー紹介を挟み、「すべて始まりがあるものは、やがて終わりが訪れる。でもそれは次の始まりを待つ何かだったりして...」とコメントを残し、ラストは「ウソマジ」を披露。落ち着いた雰囲気の中にもメッセージ性を感じさせる楽曲で、ヒトサライのライブを終了した。

■エンリケとKOISOがサプライズ登場

 再びステージに戻ってきた杏子といまみち、そして平山。そこに今回のゲストであるリンダを呼び込む。更に「ベースがいない...」とサプライズゲストとしてBARBEE BOYSのベーシストであるエンリケを呼びこむと、このサプライズにオーディエンスからは大歓声が巻き起こった。このメンバーで9月28日にリリースのいまみちプロデュースの杏子のニューシングル「イカサマ美男子feat.リンダ」を初披露。杏子とリンダ、タイプの違うボーカルスタイルで会場を沸かした。

 続けて、BARBEE BOYSの2ndアルバム『Freebee』に収録されている「マイティウーマン」を披露。杏子、いまみち、エンリケの3人がステージに並ぶ圧巻の光景に、オーディエンスも興奮を隠せずにいた。また杏子とリンダのコンビネーションも光った。

 ここで、ドラムの平山がそそくさと退場。杏子が「ドラムがいなくなっちゃった...」とつぶやくと、「ドラムを呼びます。KOISO!!」とBARBEE BOYSのドラマーのKOISOをステージに呼び込んだ。またもや客席から大歓声が巻き起こり、会場のボルテージは最高潮に。

 このメンバーで85年リリースのシングル「チャンス到来」を披露。いまみちのアルペジオが会場に響き渡った。いまみちとリンダのハーモニーも印象的だった。そして、杏子のウィスパーボイスが優しく耳に届き、このメンバーでしか出せないサウンドとグルーヴに酔いしれた。

 リンダがステージを去ると、『Freebee』に収録されている杏子のソロナンバー「タイムリミット」を披露。杏子は着ていたジャケットを脱ぎ、ショールを羽織ったかと思うと、時折それを振りかざしながら派手にステージングし、アッパーなロックナンバーで畳み掛けた。タイムリミットが訪れてほしくないと思った人も多いのではないだろうか。だがしかし無情にもタイムリミットは来てしまう。

 メンバーがステージを去った後、アンコールを求める手拍子が響き渡る。ステージに戻ってきたのは椎名を抜いたヒトサライのメンバーと、杏子とオカモトコウキ。このメンバーで「あなたにアディクション」を披露。杏子も腰に巻いたスカートをひるがえし、激しいステージングと歌声で会場は更にヒートアップ。途中から椎名も参戦しパワフルな歌声で後押し。そして、ラストは藤井とリンダを呼び戻し、米国のバンドSly and the Family Stoneのカバー「I Want To Take You Higher」を披露し約3時間という大ボリュームの“お・も・て・な・し”は大団円を迎えた。

 杏子の今も変わらないハスキーヴォイスと、スカートをヒラヒラとさせながら舞うその姿はいつも美しい――。まさに贅沢な夜であった。世代を超えて音楽という共通言語の中で、フリーダムに会話をしていくその様は、まさにいまみちが話した「音楽に年齢も国境も関係ない」という言葉通りのステージだった。それは、まるで時間をも超越した空間であった。(取材・村上順一、木村陽仁)

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最終更新:8月25日(木)16時2分

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